エピローグ 放課後
第1章はとりあえず完結です。
第2章に入ります。
これからも、興味があれば楽しんでいってくれるとうれしいです。
放課後。
2人は屋上に足を運んでいた。昨日の帰りで詳しい話が聞きたいと鉄が言っていたからだ。無言で2人は屋上のドアを開けるとそこには、鉄が立って待っていた。
「よし。ちゃんと来たな」
2人が入ってきたことに気が付いたのか鉄は手招きをする。2人は手招きに従って鉄先生のもとへ行った。
「ああ。言われた通りきたぞ」
「鉄先生。話ってなんですか? それよりも先生は昨日何してたんですか」
2人は詰め寄るとそれぞれがそれぞれの反応を示す。
「あ~。言いたいことは分かる。だが、落ち着け。順序良く話してやるから」
これじゃあ、話したくても話せないだろという様に両手を2人に向ける。2人は静かになり鉄は話を続ける。
「まずは、俺の所属だ。異能力者相互扶助会という組織に所属している。よく互助会と言っている。一応公にはなっていない組織ではあるが国とは繋がっている」
「どういう組織なんですか?」
「異能力に目覚めた人間の保護と能力に対する制御の教育が主だな。他にもいろいろと細かい部分は存在するが、簡潔に言ってしまえば異能者同士で助け合おうっていう組織だな」
「へぇ~」
馬皇はのんきにうなづいた。あまりの危機感のなさに真央は呆れた。
「なんで、あんたはそんなのんきなのよ‼ だから、馬皇なのよ」
真央は思わずそう突っ込んでいた。馬皇に対する呼び方が変わっていたのは気安い仲になったからのかそうでないのか。そんなことに気付かず馬皇は話を続けた。
「今、俺の名前に馬鹿って振っただろ」
「あら? それは分かるの。少しは考えなさいよ。それで? 先生は私たちを勧誘しに来たというわけ?」
「ああ。しかし拒否したければ拒否してもらっても構わない。その場合は密かに監視が入るだけだ」
はっきりと入らなければ監視が付くといったことに真央は驚いた。
「あら? はっきり言うのね」
「今回捕まった奴らの情報から真田は精神感応系の能力を有している可能性があるのは分かっているからな。とは言ってもその手の能力はいろいろと対抗策は存在しているんだがな。それにあの爆発はお前らがやったんだろ? 校長先生からだいたいの話は聞いている」
真央は鉄の説明に納得する。校長も確かにあの場にいたのだそれだったら話が通っていても理解できる。
「どおりで。どうでもいい情報しか分からないと思った。やっぱり情報って広がると厄介よね。広がる前に潰そうかしら?」
「そのことについては同感だ」
馬皇と真央は物騒なことを言うと鉄は威圧する。
「そういうのは勘弁してくれ。さすがの俺も本気にならざる得ない」
「「っ‼」」
底の見えない威圧感に馬皇たちは息を呑むがそれも一瞬だけですぐにその威圧感は消える。
「本当に鉄先生って底が見えないわね」
「俺としては一度手合わせしてほしいくらいだがな」
消えた威圧感に馬皇たちはそれぞれの反応を見せると真央が先導して話を切り出す。
「うっさいわよ。馬皇。それで鉄先生。組織に入るメリットとデメリットは?」
「メリットについては簡単だ。能力者がたくさんいるから制御や能力の強化や弱体化をしやすくするためのノウハウがある。デメリットは能力者に関する事件、事故の解決に協力を求めることがあるくらいだな」
なんだか、危険そうな響きのデメリットに真央は警戒心をあらわにする。
「……ちなみに頻度は?」
「多くても年に5回も起これば多い方だろう。非公式ではあるが公務員と同じ扱いをされる。ちなみに、参加したものにはかなりの額の報酬も用意されているし保証もある」
「なら、昨日は確か校長先生もいたけど、なんで先生たちは教師をしているの?」
ならなんで教師もしているのか真央は疑問に思いぶつけてみる。
「そんなもの子供たちがなりたいものになるための手伝いがしたいからだ。それ以外に理由がいるか?」
目をキラキラさせて即答する鉄に本心からしたいからしてるんだなということが感じられた。質問することが無くなったのか真央は、短く返すことしかできなかった。
「そう……」
真央の話を考慮して馬皇は手を上げて言った。
「俺もいいですか」
「なんだ、馬皇」
「その組織はホントに大丈夫なんですよね」
馬皇の質問に鉄は少し考えてから答えた。
「……それは、一概には言えん。あくまで、相互扶助会だ。組織内も一枚岩ではないし良いやつがいれば悪い奴らもいるぞ。だが、報酬などは明確だし依頼自体も厳格に精査した上でこちらに頼んでくる。仮に教え子たちを平気で死地に向かわせるなんてことは絶対にしないしさせない。まず先に我々が出るし助けにもいく。もし、扶助会と敵対しても扶助会所属の教員たちはお前たちの敵にはならないと信じてくれ。お前らが悪いことをしているとかなら別だけどな」
「そうっすか。ならお願いします」
その説明にあっさりと勧誘に乗る馬皇。
「馬皇‼」
その説明にやっぱり信用できないと思った真央は馬皇に考え直させようとする。しかし、馬皇はきっぱりと言った。
「今の所、所属に関しては何も問題ないだろ。それに、確かに組織ってのはいろいろとややこしいって思うよ。でもな、俺は信じてみてもいいかなって思うんだ。勘だけど」
勘頼みだった。あまりの清々しい勘頼みに真央はため息をついた。
「はぁ……。分かったわよ。ずっと監視とかされるのはなんかいやだし。もし、私らで何かよからぬことを企んでるようだったら、即つぶしに行くわよ。その組織」
「ああ。それでもかまわない。他に何かあるか」
2人はそろって首を横に振った。
「そうか。それなら、お前たちが何かをするということはない。何かあれば、俺から話を持ちかけることがあると思うから、その時はできるだけ協力してくれ」
「「分かりました」」
2人の声が揃う。揃ったことがお互いに嫌だったのか2人はにらみ合った。2人の答えを聞くと鉄はそのまま校舎の中へ入って行った。
「やっと、2人になったな」
「ええ。そうね」
「今日は勝負の日じゃないが面白い話を持って来たぜ」
「奇遇ね。私もよ」
本当の話し合いはこれからのようだった。2人は唐突に拳を突きだすとどちらが空とは言わないがじゃんけんを始め出した。
「「最初はグー」」
「「じゃんけんポン‼」」
お互いにグー。
「「あいこでしょ‼」」
「っし‼ まず俺からだな。あの時の作用なのか副作用化は分からないが竜化の一部だけ使えるようになった。って言っても竜人モードの姿の一部だけどな。多分、一度前世の姿に戻ったからか?」
そう言って、右手だけを竜の姿に戻す。手首から先が鱗で覆われて爪は鋭くなる。
「ええ。多分そうね。私も力が少し戻ったもの」
「まじか?」
「まじよ。って言っても使える力はあなたと同じように一部だけだけどね。それにあんたみたいに見た目は変わらないわよ。次は私からでいいわよね」
馬皇は最初に話したからと先を譲った。
「ああ。かまわないぜ」
「私のお母さんあんたを倒した勇者だって」
「それ、本当か?」
唐突に言った真央の言葉に馬皇は聞き返した。
「お母さんには悪いけど、使ってみたわ。…………小五ロリ」
最後の方が小声になって聞き取れなかった馬皇は耳に手を当てもう一度聞き返
す。
「え? なんだって?」
恥ずかしいからか、顔を真っ赤にして大声で叫ぶ。
「小五ロリよ。小五ロリ」
「いきなり、小学五年生の女の子を連呼してどうした?」
頭大丈夫か? と思わず心配してしまう。
「違うわよ‼ 魔法の名前よ‼ 物や人の記憶や心を見るための‼」
「あの時言ってた魔法そんな名前だったのか」
この悪意しか感じられない魔法の名前に馬皇はうねる。真央は変な誤解を解くためにこの名前の由来を自分の解釈で紐解く。
「今にして思えば悟りを分解しただけなんだろうけど作った奴が異世界人でロリコンでね。作った動機が小さい女の子の心を読んでスゴイって言われたかったらしいの」
「うわぁ……」
なんというか予想通りと言うべきなのかそれ以上と言うべきなのか真央の説明に馬皇はドン引く。この魔法の制作者は変態だったという事だけはっきりとわかってしまう説明である。
「まあ、結果は女の子たちにより避けられたわ。まあ当然よね。考えてることが分かるなんて普通に考えたら気持ち悪いわ。子供の時にして「ざまあみろっ‼」って思わず言ってやったわ。あいつ喜んでみたいだったけど。まぁ、そいつが私の教育係になるんだけど転生するまで意味は分からずに使っていたのよ。多分、それを見て楽しんでたのよ、あの変態。正直心見たくなかったから使わなかったけど。やけにニヤニヤしてたから間違いないわ。今思い出しただけでも腹が立つわ」
真央は過去の事を思い出してよっぽど腹に据えかねているのか声が若干低い。馬皇はヒステリーに近い状態の真央にどう聞けばいいのか分からなくなる。
「そ、そうか。それで、真実なのか?」
「ええ。間違いないわ。ブレスの時の映像が軽く見えたもの。ってか、あんな威力のものぶっ放すな。それとどうして最初の時は魔法を使ったのよ? あんた、魔法なくったって理不尽の塊みたいな存在だったじゃない」
出会った当初で魔法を放とうとしていた馬皇のことを思い出して真央は疑問に思っていたことと文句をぶつけてみた。馬皇は頭をかいて弁解してみる。
「だから、あれは手加減したって言ったろ。最初の時はアレだ。思い出したときに敵の勇者が使ってた魔法がかっこよかったから真似てみただけだ」
「お母さぁん‼」
真央はその話を聞いてなんというか……恥ずかしくなり母に向かって叫ぶ。馬皇はというとそんな羞恥にのた打ち回りそうな真央に構わず話を続ける。
「俺も言うけど、家の父さんがお前を倒した勇者だって」
「は?」
どこかで聞いたような話だった。真央はさっきのことがどうでも良くはなっていないがそれ以上に気になる話が出てきてすぐに聞き返す。
「母さんが言ってたんだけどな。母さんはリーングランデ出身だって。勇者パーティーの魔法使いだってよ。父さんが帰ってくるときに押しかけたってさ」
まさかの母が異世界転移者だった。そして元勇者が揃いも揃って戻ってきている。その事が事実だとすると元の世界に戻る手段があるのあるのかもしれない。そんな期待感を持って真央は馬皇に確認する。
「本当に言ってたの?」
「ああ。お前の前世では召喚とか得意だっただろ」
前世では確かに魔法を極めた。特に召喚魔法は大得意で召喚した魔物は大好きだった。
「ええ。よく使っていたわ」
「そのことを言ってた。勇者というか父さんは1人でワイバーンの軍勢を相手に無茶苦茶やったとも言っていた」
あれは、おかしかった。そのことを思い出すとそれは、子供にも受け継がれているらしいことだけは分かる。あの身体能力は前世とか関係なく遺伝的なのだろうと勝手に真央は予想した。
「あれは、意味わからなかったわ。チートよ。もしくはバグな存在。1人で1万のワイバーンを1人でしかも短い時間で全滅させるとかホントに人間だったのかも怪しかったわ」
そしてお互いは勇者に似ていた理由を理解した。子供だったのだ似ているのは当たり前だろう。
「そうか……。そりゃあ勘違いするわけだわ、俺ら。親が勇者でその時倒された違う魔王が勇者の子供とか。どんな皮肉だよ」
「そうね。でも、勝負は止めたげない。勝つのは私よ」
真央はニヤリとして勝ちは譲らないと宣言する。その言葉に触発されて馬皇もやる気になる。
「いいや。勝つのはこの俺だ」
馬皇も同じように言う。
「「ふんっ」」
お互いはそっぽを向いた。
「「……プッ。ははははは」」
お互いしばらく沈黙した後どちらが先だったのか。同じタイミングでおかしくて笑い出す。お互いに最初は勘違いしていた訳だがそれももう解けた。実力は分かっているし一度は協力している。別に争う必要性はない。
だが、馬皇たちは争うのをやめる気はなかった。理由なんて必要ない。理屈ではない。こいつに負けたと言わせたい。それだけのために続けるのだ。
馬皇は手を差し出す。
「これからもよろしくな。だからと言って手は抜かないが」
「こっちこそ。手は抜かないけどね」
「っは‼ 言われなくても分かってるよ」
「こっちもよ‼」
真央はそう言って荒く馬皇の手を握った。互いを認めながらも素直になれない2人は固く握ったまま今日も相手に勝つための勝負の内容を考え始める。そして、その様子を見た者はこう答えるだろう。戦いはまだまだ始まったばっかりだ、と。
どこかのタイミングでいろいろと書き直しますが、その時はご容赦ください。




