21話
今回は短いです
「あああぁぁぁ」
サライラは悲鳴を上げる。油断しているつもりはなかった。しかし、結果はサライラの腕は断たれた。それでも辛うじて腕を切られるだけでサライラは本能的に距離を取ったためにそれだけ済んでいた。
「ちっ。ようやく有効打らしき一撃を入れたが仕込みを使わされたのが痛いな。本当に厄介だな」
ガイザックは自分の大盾の中に仕込んでいた剣と盾を構えたままサライラを見る。その瞳に油断はなかった。切られた瞬間は悲鳴を上げていたが腕から致命傷に近い量の血を流しながら眼から色の消えたサライラを見て怪訝な顔をする。
「……」
「やばいな。普通だったら痛みで動けないはずなんだが怒りで我を忘れかけてるのか?」
サライラの様子にガイザックは警戒する。サライラが片腕のまま槍を投げる。
「っち‼」
突然槍を投げられたことに構えた手で投げた槍を受ける。大盾程ではないがそれでも大体の攻撃であれば防ぐことが出来る魔法の盾。ぶつかる瞬間槍に触れるタイミングの時に手ごたえのないことに違和感を感じして槍の来るコースから外れるように頭を捻る。とっさの判断が功を奏したのか槍は盾を貫通する。結果、頬をかすめるだけで済んだがその結果に冷や汗をかく。
「かぁ」
それだけにとどまらずサライラは続くようにガイザックの盾の上からとび蹴りを入れる。盾の上から衝撃を捌けずに受け止める。
「ちっくしょうが‼」
サライラの膂力に対してガイザックはギリギリで受け止めてから叫んだ。同時にガイザックの技が発動する。
金剛反射。盾に触れた攻撃を一瞬でも受け止めるという準備が必要だが、相手にその衝撃を倍にして返すカウンター。最初のサライラの攻撃を跳ね返したのもこの技でありサライラが感じた違和感の正体である。
サライラを吹き飛ばすことに成功すると野生動物でも相手にしているような攻撃にガイザックはサライラを見る。サライラは飛ばされて転がりながら切られた自身の腕をつかむと切られた腕を切られた箇所に押し付けた。
「おいおい。俺は何を相手にしてんだ?」
警戒しながら見ているとサライラの切られた手先から魔法陣が現れる。魔法陣がサライラの体と腕を通り過ぎると繋がったのかサライラは固定していた手を離した。腕は落ちることはなくサライラが指を動かしていた。問題なく動いていることを確認するとサライラは投げたはずの槍がサライラの手の中に召喚される。
サライラは正気に戻ったのか仕切り直しとばかりに槍を構える。そんな様子にガイザックが呟くとサライラは言った。
「先程はお見苦しいところを見せました。第2ラウンドですわ」
「これはきつすぎるだろう」
さっきのことが無かったかのように元通りになった腕。何よりもその後に平然と仕切り直してから戦いを続けようとするサライラの精神性に言葉が漏れる。
「じゃあ、死になさい」
サライラは槍に魔力を纏わせ槍の刃が赤く光りはじめる。
「させるかよ」
ガイザックは盾を投げた。投擲された盾にサライラは驚いて槍を叩きつける。盾は真っ二つになる。綺麗に切断された盾は同時に爆発する。
「けほっ。けほっ。……どういうことですの?」
爆発自体は大したことはなくサライラは怪我をすることはなかったが煙が晴れるとそこには投げ捨てられたガイザックはいなくなっていた。
「むぅ。逃げられましたわ」
痕跡を追おうにも装置を残してそれ以外の痕跡は一切ない。サライラが弾き飛ばした大盾もなくどうやって逃げたのかも分からない。唐突に消えたガイザックにサライラは頭をかしげる。
「あ。扉を壊さないと」
未だに魔物が現れ続けているのを思い出して扉を破壊する。扉は縦に切られると空気に溶けるように消えるが、魔物は一緒に消えるわけではないのか魔物は残っている。
「不完全燃焼ですが、今はこれを全部処理してお父様の所へ向かわないと」
サライラは魔物へ向かって駆け出した。
次回は洋介たちです。




