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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第七章 異世界召喚騒動
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19話

「あはははは」

「っち。きりがない。クラウ」

『はいさ』


 戦いの中でサライラがテンションを上げて笑い始めると馬皇は未だに減らない魔物に顔をしかめる。

馬皇の言葉と共にクラウに魔力を流す。一薙ぎするとクラウは刀身に炎を纏って間合いが伸び切られた先から魔物は塵も残さず燃え尽きる。


 一方でサライラは魔物の群れの中をかき分け高速で移動しすれ違いざまに槍であるリンネを器用に使って首を落としていく。


「サライラ‼ あまり深追いするなよ‼」

「分かっていますわ‼」


 笑顔のまま槍を縦横無尽に振り回すサライラが先に進んでいくのを見て馬皇は注意を促す。サライラも分かっているのか一定の距離を走り回っているが深くまでは切り込んではいない。


 しかし、そうなってくると未だにこれでもかと湧き出し続ける魔物たちに対して決定打を与えられていない状態で拮抗している。馬皇とサライラだけであればまだ戦えるが後ろにいる洋介たちや街の人間はそうはいかない。


 魔物を駆除する手は休めずに打開策を考えていると巨大な狼の姿になっている洋介が馬皇たちの近くにやって来た事に気が付く。その背中には幸太郎と小太郎が乗っているが戦闘のせいか激しく動いているために落とされないように集中しているので喋ることが出来ない。


『今いいか?』

「どうした? 洋介」

『リル。俺の中にいるフェンリルの言葉なんだが奥に魔物を作り出してる奴がいるって言ってる。いつもの面子で元凶に会いに行くから一緒に来てくれ』

「分かった」


 馬皇は即決で洋介の言葉にうなずくとお互いの背後から襲ってきた魔物をそれぞれ排除していく。


『助かる。乗ってくれ』

「そうさせてもらう。サライラ‼」

「お任せください‼ 行きますわよ‼ 断ちなさい‼ リンネ‼」


 馬皇は新しく2つの短剣を腰に固定できるホルスターらしき物を召喚して腰に装備する。それにソラスをしまい洋介に飛び乗った。戦闘の最中でクラウの炎を刃状にして飛ばして洋介の死角から襲い掛かってくる魔物を焼き払いながら馬皇はサライラの名前を叫ぶ。


 サライラも馬皇が何をして欲しいのか理解したのかリンネに呼びかけ槍を含む体全体をリンネのオーラで包む。そして、駆けた。刃先どころかそのオーラを纏ったまま走り去った後には生き物は残っていなかった。それは抵抗も跡形もなくなる。中途半端にサライラの走った経路には半身がきれいになくなった魔物の残骸や一部の魔物の持っていた武器や防具ですら一定のラインには存在しない。


「すぐにここもまた、魔物で埋まる。早く行こう」

『あ、ああ』


 サライラの空けた道に洋介は一瞬戸惑うが馬皇の指摘で我に返るとサライラを追って走り出す。


「幸太郎と小太郎は大丈夫か?」


 馬皇はクラウも一緒にしまってからさっきからずっと乗っている幸太郎と小太郎に話しかける。話をする余裕がないのかとぎれとぎれに幸太郎から言葉が返ってくる。


「よ、よ‼ く‼ こん、な中‼ で‼ はな、せ、るな‼」

「そんなもん慣れだ。小太郎は離せそうか?」


 走りでは到底出ない速度の中で小太郎はさすがに喋れないのか頭を横に振る。それを察して馬皇は言った。


「なら、無理に喋らなくていいから聞いてくれ」

『なんだ?』


 馬皇の言葉にこの場にいるメンバーが耳を傾ける。


「このまま進んでいくとどうにも変な力が溜まっている場所が何か所かある。そこが恐らくこの魔物たちの発生源なんだろう。分かるか?」

『ああ。ここまで来るとなんか魔物群れとは別に変な感じがする場所があるってリルが言ってる。それで? どうするんだ?』

「大きい力の場所は3か所。合図は俺が出す。俺とサライラがそれぞれ行くから最後の1か所は頼む」

『任せとけ』


 馬皇がそう言うと洋介は陽気に答えて小太郎と幸太郎はうなずく。

「よし。なら今向いている方向の左側を頼む。サライラ‼ 聞こえるか‼」


 馬皇は未だ先頭でリンネを展開しながら走り続けるサライラに声をかける。ものすごい速度で駆け抜ける中で風の音にも物ともせずにサライラが答えた。


「はい‼ お父様の声でしたら千里の先だろうが龍の咆哮の中だろうが聞き取りますわ‼」

「お、おう。なら俺が言いたいことも分かってるな‼」

「はい‼ 私は右へ行きますわ‼」

「マジで聞こえてたのか……。って今は違うな。ああ‼ 任せっぱなしでスマンがそれで頼む‼ それと別れる時に一度俺が前に出て一掃するから退避な‼」

「分かりましたわ‼」

『幸太郎と小太郎が喋れないのぐらいにはバランスわるいのは理解しているがそんな中でも平然に喋る馬皇も大概だけど、魔物を駆逐しまくっているのに息1つ乱さずに受け答えできるのも大概だよな』

「ん。褒めても何も出ないぞ」

『褒めてねえよ。呆れてるんだよ』


 馬皇の言葉に洋介は疲れた様に言う。馬皇も軽口と分かっているからか冗談を言うと洋介からのツッコミが入る。


「っと‼ そろそろかな。クラウ。ソラス。久々にあれやるぞ」

『はい。いつでもOKです。旦那様』

『了解です。マスター』


 洋介の背中にまたがっていた馬皇はおもむろに立ち上がる。激しく上下左右に動く背中の上でバランスを崩すことなくクラウとソラスを手に取る。


「行くぜ。クラウ・ソラス」


 馬皇は2つの短剣の本来の名を呼んだ。クラウ・ソラス。その名前を呼ぶと同時に2つの短剣は馬皇の前で光は剣の形を取る。形は不安定なのか一定の形はなく光は揺らめく。そんな姿とは対照的にそれは圧倒的な存在感を放つ。


「サライラ‼」


 馬皇の掛け声に反応してサライラは大きく飛び退く。それに入れ替わる形で馬皇が前に出ると光の剣を振う。そして、強い閃光で仲間である洋介たちも覆われて何も見えなくなり洋介も背中に乗せている2人を振り落さないように止まる。


『うおっ‼ 何も見えねぇ‼』


 光が収まると先頭で馬皇が大きく息を吐く。そして、見渡す限り一面には魔物の姿は亡くなっていた。


「ふう。さすがに安定しないな」

『力の伝達率は10%と説明します。マスター』

『久々だとそんなものですよ。むしろ長く開いた状態でも私たちの本来の力の一端を使えるのがすごすぎますよ』

「だが、これだと連発は出来ねぇな」

『そこは私たちとより絆を深めるという事でぐふふふ』

『そうですね。お姉さまのいう絆とは別ですが、もっと私たちを使ってください』

『そんな‼ 姉妹そろって旦那様とあんなことやこんなことを……』

『お姉さまは少し黙って下さい』


 馬皇はソラスとクラウのやりとりに微妙な顔をしていると動きを止めた洋介たちの上から声が漏れる。


「……マジかよ」

「すさまじいな」


 辺りの光景に短くそんな言葉しか出なかった。いきなり強烈な光が走って消えたら魔物たちが居なくなっていたのである。


 馬皇はクラウとソラスを手に持って進み始める。それを見てサライラが洋介たちを急かす。


「ほら‼ お父様が道を開けてくださったのですから早く行きますわよ‼」


 サライラがそう言うと思い出したかのように洋介たちは左の方へ方向転換すると徐々に速度を上げてかけ始めた。最後にそれを見届けたサライラが洋介たちとは反対側の違和感の元へと走り出した。

次回は視点が3つに別れる予定です。最初はサライラ予定。

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