14話
「帰ったぞ」
『お帰りなさい』
洋介が扉を開けるとそこには乾いた音が鳴り響く。室内には歓迎用の料理が机の上に所狭しと置かれている。その歓迎ムードに馬皇達はおろか話し合いの後、連絡を入れた洋介たちも呆然とする。
「それで元の世界に戻る手がかりを見つけてきたのよね?」
召喚されたクラスの委員長が代表して笑顔でたずねると洋介は答える。
「おう。もちろん見つけて来た。その証拠に馬皇に真田さん、山田さん。鉄先生と鉄先生の友人を連れて来たぜ」
その答えに周りから喜びの声を上げる。
「良かったぁ。やっと帰れるんだ」
「そうだな。この生活もいいけどやっぱ元の世界の方がいいな」
「わかる」
「そうか? 俺はこっちの方が楽しいと思うが」
「ばっか。こっちの世界の娯楽の少なさは知ってるだろ」
「だな。悪くはねえけどやっぱ少ねぇしな」
各々が思い思いに言葉に出す。1人1人の声は小さいが20人近くの声が集まればかなり大きい。
「ええい‼ 静かに‼ 帰れるのが分かってる嬉しいのは分かるけどその前に方法を見つけてきた洋介君たちをねぎらうのが先でしょ‼」
話を聞けない状況になって委員長がクラスメイト達にきれる。その一喝で騒がしかったクラスが静まる。それで静かになる辺り委員長の立場の高さがうかがえる。
「相変わらずだな」
洋介は委員長の相変わらず発揮されるリーダー気質に感心すると洋介に対して委員長は微笑む。
「嬉しいのは私も同じよ。でも、クラスメイトが無事だったことも喜ぶべきよ。だから、そのためのパーティーでもあるの」
「おう。ありがとな」
委員長の言葉に洋介は照れたのか顔を逸らす。そんないい雰囲気に小太郎を含む彼女のいない男たちが我慢できなくなったのか「ケッ」唾を地面に吐きかけるような仕草をする。それに対して他の者たちは苦笑する。
「それとようこそ。鉄先生と山田さんといるってことは真田さんと負毛君が探してくれたってことよね?」
委員長は洋介にお礼を言った後に馬皇と真央の元へと足を運ぶ。
「ああ」
「ええ」
「それなら帰る方法もあるのよね」
「もちろんよ。帰れるわ」
真央が委員長の言葉に断言する。
「方法は?」
「少し時間はもらうけど修学旅行の時の転移ゲート覚えてる?」
「ええ。まさかアニメとかの空想の産物的なものを修学旅行で使われるとは思ってなくてすごく驚いたわ」
「あれと同じように装置を繋げてから送るわ。その時に起こる世界間の時間のズレによる事故が少し怖いから調整をちょっとしてからになるけどね」
真央のもう少しだけここにいなければならないという発言に少しだけ周りの空気が緊張する。
「そう。それならもう少しだけこの世界にいる事になるのね」
「ええ。って言っても遅くて1,2週間程度よ。詳しいことは省くけど地脈とある特殊な関係で転移の場所は泉の塔……って言っても場所が分からないだろうから方法は少し考えさせて。さすがにこの人数で歩きっていうのも少し怖いし、少し調べたいこともあるの」
「分かったわ。みんなもいいわね?」
真央の説明に少し考え込むと後ろのメンバーたちにたずねる。委員長の言葉に後ろのメンバー全員が一斉にうなずいた。
「そうしてもらえると助かるわ。ここから元の世界に戻ろうと思うと条件がそろうのに後200年近くかかるもの。そこまで待てる?」
「確かにそんなに待てないわね。国の方もたずねた時に微妙に話を逸らしたり、言い淀んだりしてたから何か隠しているなと思ってたけど多分それね。確実に出来る事じゃないから言おうにも言えなかったんでしょうね」
「私もそう思うわ」
委員長が納得するとその推測に真央もとりあえずうなずく。
「まぁ、そんなことより帰還&歓迎会の準備は出来ているから今は楽しみましょう。飲み物を渡してちょうだい」
「そうさせてもらうわ」
「おう。邪魔するぜ」
「ええ。楽しんでちょうだい」
委員長がそう言うと察しの良いクラスの男子の内の何人かが馬皇たちの分を含めた飲み物の入ったグラスを渡す。
「全員。飲み物は持ったわね。それじゃあ、洋介たちの帰還と元の世界への帰還方法の発見、真田さんたちの歓迎のために乾杯」
『かんぱ~い』
委員長の合図と共に飲み物を高くかかげると一斉に乾杯した。
短いですが更新しました。
文章が進まなくて絶不調中。最後まで決まってるのに中身が書けない状態。キャラが多くなると話の難易度が高くなる。けど、こういう話だとキャラ増やさないといけないし。中々バランスが難しい。パーティーの話は詳しくする予定はないので次回は短くまとめて一夜明けてのスタート予定です。




