12話
「あのぅ? そろそろ足の感覚が無くなってきたんで解放して欲しいのですが? 」
「いやよ。コアがあなたの膝を気に入ってるんだもの」
戦いがうやむやになってから2時間。小太郎の言葉を真央が一蹴した。小太郎の首には反省中の看板を掛けられ、その膝にはコアが気持ちよさそうに眠っている。その傍らで和気あいあいと馬皇達が他のクラスのメンバーを見つける方法とまた同じように召喚されないようにするための方法をあーでもないこうでもないと話あっている。
「そうだそうだ。告白したのを覗き見していた奴に慈悲はない」
「なっ‼ 俺らが覗き見してたのを知ってるのか?」
「当たり前だろ? それに俺は知ってるぞ。アーシャのファンとか言う奴らときっちり話をつけて調べて行ったらお前が裏で妨害に一枚噛んでたのを知ってるんだからな。チンピラとか消しかけやがって」
「っち‼ 足が付いたか。でもな、あれをすることによってお前らの仲も深まっただろ?」
「彼女を怖がらせただけでかなり無駄だったがな。それで? 本音は?」
「普通2人きりでどっかに行ってたら後を付けたくなるだろ。それも可愛い女の子うまく捕まえやがって。嫉妬する男に気持ちを知れ」
「人の恋路を邪魔する奴はその膝の上に女の代わりに石でも乗っけてろ」
「うぐぐ」
真央の一蹴に同調する形で幸太郎が混ざる。小太郎はネタなのか本気なのか分からないような絶望した顔で声を上げる。
「まぁまぁ。そろそろ解放してあげたら? ある程度は話がまとまったしそろそろ解放しないとこいつが動けないわ。それに幸太郎。……」
未だに小太郎を睨みつける2人に対して苦笑しながらも亜紀が助け船を出す。そして、幸太郎を呼んで耳元であることを話す。それを聞いた幸太郎はため息を1つ。
「はぁ。まぁ、なんだかんだ言ってこいつの危機感知能力は本物だからな。もういいだろう。解放してやってくれ」
幸太郎がそう言うと真央は2人が何を話したのか分かってるのかニヤニヤしながらうなずいた。
「分かったわ。解放するわね」
「あの? 真央さん? どうしてそんなに笑顔なんでしょうか?」
「気のせいよ。それとも解放されたくないの?」
「NO。断じてNOです。マム」
真央の言葉に即答する小太郎。そのノリが理解できないのか真央は頭をかしげる。
「たまにあんたが何言いたいのか分からないわ」
「あ。気にしなくていいぞ。大概ノリで答える奴だから」
「ひでぇ」
幸太郎が小太郎の雑な解説をすると非難がましく小太郎は見る。茶番だと分かると真央は話に乗る気はないのか話を続ける。
「じゃあ解放するわ」
真央が魔法陣を破壊する。その少し後で小太郎は動けるようになりまずは上半身を伸ばすように伸びをする。
「くう。やっと解放された」
小太郎が揺れたのを眠っていたコアは飛び降りる。小太郎は立ち上がろうとするが足の感覚がなくなっていたために動きが鈍くよろけて立ち上がれない。どうにか立ち上がると生まれたての小鹿のように震えていた。その傍らで幸太郎が手を小太郎の足に近づける。
「なぁ? なんでにじり寄る様に近づいてくるんだ?」
小太郎は震える足でにじり寄ってくる幸太郎から離れようとする。
「あん。そんなの決まってるだろ」
「いや。邪魔したり除いたのは悪かったから、な」
「おい。そのうさんくさい笑み止めろ‼ 」
「おっと。手がすべったー」
「ぎゃあああぁぁぁ‼」
幸太郎の掛け声と共に小太郎の足に手が勢いよく当たる。しびれた足に刺激が加わり小太郎が悲鳴を上げてそのまま転がり込む。
「これで許してやんよ。もうするんじゃねえぞ」
「お、前は、鬼か?」
「ただの恋人のいる人間だよ」
「畜生。このリア充め‼」
血涙でも流しそうなほど怨嗟の籠った低い声で反対側に寝転ぶ。その正面にはコアが立っていた。
「きゃん」
「そうか。俺を慰めてくれるのか?」
軽く吠えた後、小太郎がたずねるとコアはそのまま小太郎を飛び越えて由愛に飛びつく。
「どうかしたの?コアちゃん?」
「きゃんきゃん」
「撫でて欲しいの?」
「きゅぅん」
由愛はコアを抱きかかえるとコアは由愛を見る。見つめられて軽く吠えると由愛はコアを撫でる。そして、気持ちよさそうに声を出す。
「くうううぅぅぅ。犬ですらあんなに出来るのにぃぃぃ」
「犬に嫉妬してどうすんのよ……」
解放を提案して幸太郎の恨みも解決させた亜紀は小太郎を見て呆れる。というよりも少し引く。
「角松。行くぞ」
鉄がそう言っていきなり小太郎を俵のように肩に抱えた。いきなり抱えられた小太郎は慌てて鉄にたずねる。
「あ、あの? 話は?」
「もう終わった。後は途中だった準備が終われば出発できる」
「あ。そっすか。ところでなんで俺は抱きかかえられてるんでしょう?」
「俺が足のしびれから早く回復させる方法を知っているから手早く処置しておこうと思ってな」
「自然回復するんで放っておいてほしいなぁ。なんて……」
小太郎はそれとなく足に刺激が来ないように鉄に交渉する。それに気付かずに鉄は頭をかしげる。
「速めに回復するに越した事はないだろう? なぁに。きついのは最初だけだ」
「いやだぁぁぁ‼ っ‼」
「こら‼ 暴れるな」
小太郎は抵抗し始めるが鉄はびくともしない。そんな中で小太郎の足が鉄にぶつかり悶絶する。
「だから言わんこっちゃない。連れて行くぞ。親部。シート持ってるか?」
「おう。そう言うと思って、あっちの方に敷いてるぜ」
鉄が親部にたずねると準備が良いのか親部はシートを敷いている場所に指を指す。その先の戦闘する場所から少し離れた場所にはブルーシートが敷いてあった。
「助かる」
そう言って鉄は小太郎をブルーシートのある場所まで連れて行く。そこに優しく降ろす。
「それじゃあ。もむぞ」
「のぉぉぉぉぉぉ‼」
鉄がふくらはぎをもみ始めて小太郎は絶叫した。
今回は恐らく蛇足だなと思いながらも投稿。ノリと勢いだけで書いたら見事に話が進まない……。
次は時間が飛んで異世界の都市に潜入します




