6話
今回は短いですが簡単な説明回です
「ようこそ。お待ちしておりました。鉄さん方はもういらっしゃってます」
あこぎ荘102号室前。マンションの呼び出しを使ってケイスケに入口を開けてもらいケイスケの部屋のチャイムを鳴らす。鳴らすとケイスケが出迎えた。
「来たな」
「おう。坊主に嬢ちゃん。久しぶりだな」
ケイスケの部屋に入るとあの時のような真央のグッズはなく真央と由愛は隠れてほっと息をつく。馬皇たちが入ってくるのを確認すると先に部屋に来ていた鉄と親部が軽く手を上げて挨拶する。
「おう。今日はよろしくたのむ。親方」
「任せとけ‼」
馬皇がかしこまった感じで頭を下げると親部は胸を叩いて大きな音を鳴らす。恰好は今から土木作業にでも行くようなつなぎに安全と書かれているヘルメットである。手にはスコップ腰には腰にさげる鞄があった。
「本来の目的は異世界に行った生徒たちの捜索なんだが?」
胸を叩く親部に対して鉄は本来の目的を忘れていそうな様子をたしなめるように言った。
「分かってる。そう固いこと言うなって‼ 教える事も鍛錬なんだぞ。それに異世界なんてロマン溢れるじゃねぇか」
「はぁ。後半が本音だろう。馬皇。やるからには今回は本気で行く」
親部の楽観的に言うと鉄の背中を勢いよく叩く。その姿に鉄はため息をつくと気持ちを切り替えて馬皇に言った。
「それでお願いします」
「話は済みましたか?」
「ああ。これから行く場所に着いてもう一度確認のために説明してくれ」
馬皇たちの会話が終わったのを見越してケイスケがたずねると鉄が答える。
「分かりました。これから行く世界リーングランデは真央様の前世の世界。要は異世界です。向こうの世界の生態系はこちらの世界とは大きく変わりはありません。違いを上げるならばこちらよりも科学技術と言った物は進んでいませんがこの世界で言う所の魔術。魔法の技術がこちらよりも進んでいる世界です」
ケイスケが説明を始めると鉄は新しく質問する。とりあえずお話などに出てくる異世界とだけ鉄と親部は簡単に説明を受けていたが初めて聞く話に由愛がたずねた。
「あの。魔法があるという事なんですがそれは一般的な話なんですか?」
「そうです。魔道具と言う形で一般的に武器から日用品まで扱っている技術です。後は普通に戦闘でも使います。それは真央様が使っているのを見たことがあればわかるでしょう。さすがに真央様レベルの魔法は滅多に見ることはないですが」
「ふふん。見直した?」
「ああ。すごいのは分かったからケイスケ。説明を続けてくれ」
「そうだな。俺たちの拠点になる場所と探す主要な場所、それと鍛錬の場所については?」
「むぅ」
馬皇と鉄にそっけなく話を流される真央。それに唸り声を上げてふて腐れるがケイスケはその様子を脳内で激写。からの保存のコンボを決めてから説明を続ける。
「それでは説明を続けます。拠点にはあの事件で見えた塔、真央様の泉の塔を使います。見た目に反して寝室や書庫、ダンジョン、果ては温泉と多種多様な部屋あります。もちろん。その中には戦闘用と魔法を使うための実験室を兼ねた部屋があるので鍛錬に関してはそこを使ってください」
「ふむ。あの時見えた所か。そこから他の場所へ行く場合は?」
「移動の場合は転移魔法を使います。それについては案内しますので後でという事で。それとこちらと向こうでは時間の流れが違います」
「それはどれくらいだ?」
ケイスケの説明に対して今度は親部が質問する。
「すみません。どうにも世界の時間の流れについては一定ではないのです。ある程度は私と真央様で調べてはいますがまだ規則性を見つけるには至っていません。恐らくですが、10年とか100年とか時間が経ってるという事はないはずです。それにその召喚の残滓に対して今回は楔を撃ちましたので多少は時間のずれはあるでしょうがそこまで時間は立っていないと思われます。しかし、召喚された国に何人かいない可能性はあります」
一通り説明を終えると鉄は考え込む。
「そうなると探すのが大変になるな」
「そうですね。ですが、探すのは時間が掛かりますが必ず見つけ出すことは私と真央様が保証しましょう」
「そうか。よろしく頼む」
「お任せください。それではゲートを開きます」
うやうやしく礼をするとあらかじめ魔力を入れておいた魔石を砕き魔法陣を起動する。すると、目の前にはいかにもな感じの先の見えない黒い渦が発生する。
「これで泉の塔の内部。玉座の間に到着します」
「それなら私が先に行くわね」
「待て。そういうのは安全を確かめるために先に大人が行くもんだ。俺が行く」
そう言って親部は真央が先に行こうとするのを止める。親部の反応に対して真央は不満そうな顔をする。
「安全性については私が試したし問題ないわよ」
「それでもだ。お前たちの事は信用している。が、お前たちが大丈夫だったしてもそこの嬢ちゃんだけは普通の子だろ。万が一の事があった時の保険だ」
「ならいいけど……」
親部は由愛を見てそう言うと真央も異論はないのか短くそう言うと親部は慎重に手を入れる。何もないことを確認すると顔を突っ込みそのまま全身を入れる。しばらくして親部が顔だけ出す。
「問題ないみたいだ。いいぞ」
「それなら行きましょうか」
馬皇たちはリーングランデへと足を踏み入れた。




