1話
連投。ここから本編の始まりです
修学旅行を終えてしばらくたったころ。冬も本格的になりクリスマス前のテストの最終日。最後のテスト終了のチャイムがなった。
「おわったぁぁぁ‼」
「まだテストの回収が終わってないぞ。静かにしろ」
「すんません」
テンションが上がった男子生徒の1人が奇声を上げるとテストの監督であり担任の安森が叱る。我に返ったのか恥ずかしそうに席に座りなおした。それを見てクラスの生徒たちの笑い声が聞こえる。
「それじゃあ、後ろの席の者から裏向きでテストを回収してくれ」
安森はそれらを無視しての指示を出す。それに従って最後尾の席の生徒たちはテストを回収していく。集めたテストは鉄の手に渡ると枚数を確認する。
「よし。問題ないな。日直。号令」
「きりーつ。気を付け。礼。ありがとうございました」
『ありがとうございました』
号令を終えると休み時間。教室ごとに差異はあるが廊下に出て一息する者。終わったテスの答え合わせをするもの。近い内にくる冬休みの予定を話す者など学校が騒がしくなる。
「ふぅ。終わった。終わった」
テストが無事に終わり負毛 馬皇はイスに座ったまま安堵していた。
「何安心してため息ついてんのよ? まだ、結果が帰って来てないでしょ」
真田 真央が馬皇の横から呆れた様子で話しかけてきた。真央の言葉に馬皇は嫌そうな顔をする。
「そりゃ。お前。やっとテストから解放されたのにテストの話なんかされたら嫌な顔ぐらいするわ」
馬皇がそう言うと真央は何でもない様子で答えた。
「そう? 今回も楽だったでしょ?」
「なんだよ? 嫌味か?」
「そんな訳ないでしょ。一応あんたの答案の結果から言うと全部平均よりやや下。赤点回避よ」
「おう。そうか」
監視の魔法を使って見た馬皇の答案を思い出して結果を採点。もちろん見た答案は馬皇のだけである。今回の予定は馬皇がいないと話にならない。その為だけに今回だけは真央もカンニング紛いの事をしたのである。ちなみにサライラと由愛に関して真央は心配していない。なぜなら馬皇程酷くないからであると追記しておく。
真央がその結果を伝えると馬皇は笑みを浮かべる。冬休みの補修が無いことを素直に喜んでいるようだった。
「当たり前でしょ。私がせっかく教えたのに。それなのに結局ギリギリって……。冬休みの予定潰れたらどうするつもりだったのよ?」
何でもなさそうに答える馬皇に真央は呆れた様子でたずねる。
「その時はその時だろ。それに正直、勉強はいくつになっても苦手だ。必要なことであるのは分かっててもな」
「は? 何言ってんのよ? 今回の冬休みはあの時の反省を踏まえて鍛え直すって言ってたじゃない。それで手伝ってくれっていったのはあんたでしょ? 言い出しっぺのあんたがいないんじゃ意味ないでしょうが」
反省の様子が見えない馬皇を見て真央は睨みつける。
それは修学旅行が終わっての事だった。修学旅行では不意打ちを受け心臓を抉り取られた馬皇。いくら相手が鬼神であったしても足止めが満足いくものでなかった真央。そして、何よりも最後に出てきた皆月と灰色の竜。あれらと戦うには今のままではいけないと馬皇が言い出したのである。学校のある日は放課後に模擬戦やら今後のためのアイテム作りなどをして鍛えていたがあくまでも現状を維持する程度である。そこからのパワーアップを図るために纏めて日数を取れる冬休みを使って鍛えようというのが今回の冬休みの予定である。
「そ、それよりも由愛とサライラはどうしたんだ? さっきから見当たらないんだが?」
あからさまに話題を変えようと馬皇はさっきから見回してもいない2人の事を聞く。そんな馬皇に真央はジトっとした目で見つめる。
「あの2人はテストが終わってから外の空気を吸って来るって言って出てるわよ」
「お。そうか。なら俺も……」
馬皇は由愛たちのいる場所へと一旦避難しようと動き始める。が、真央の手が馬皇の肩を掴んで放さない。
「駄目よ。私のライバルがそんなんじゃ許されないわ。鍛錬と一緒に勉強もしっかりやりましょうね」
にっこりと笑顔を浮かべて宣言する真央。馬皇はその宣言に諦めたのか肩を落とした。
「それにしても言い換えれば修行するって言っても何か予定はあるんでしょうね? 私はとりあえずやること決めてるけどあんたはどうなの?」
「俺か? 俺はひたすら基礎鍛錬と実戦の予定だ」
「そんなんで大丈夫なの? ってか、あんたと戦いになるような生物が他にたくさんいるの?」
戦闘力だけで言えば馬皇はかなり高い。そして、その相手になる存在などほとんどいない。それ故にそんなこと言っている馬皇に真央は疑問しかない。
「それについては問題ない。あの時の親分とか鉄先生にお願いしてる」
「ああ。あの人と鉄先生か。納得だわ」
鉄と親部の2人にお願いしているという馬皇の言葉に真央はうなずいた。戦闘経験の豊富な鉄。あの時は少ししか見ていないがそれと同程度な動きを見せていた親部。その2人に相手してもらうのであれば確かにいい経験なるのだろうと納得する。
「それと最終日には俺とお前で一戦しないか?」
「それはいいわね」
馬皇が提案すると真央が即答する。一番最初の事件以来勝負はするが2人の戦いは基本的に安全なものばかりである。本人たちは本気であるのだがはたから見れば遊んでいるようにしか見えないものばかりであった。
「だろ?」
「決定ね。私の強さを思い知らせてやるわ」
「こっちこそ」
2人は目線で火花を散らす。目標が出来た事によって馬皇たちのやる気が上がる。
そして、事は起こった。
「‼」
「‼」
始まったの突然だった。馬皇たちは突然の出来事に呆然とする。
「えっ‼ 何‼」
「何だこれ‼ 体が動かねぇ‼」
「うそっ‼ 何が起こってるの‼」
「まさか‼ これは‼」
教室の床には魔法陣が描かれていた。魔法陣は大きく回転し始める。魔法陣によって教室内の生徒たちは動きを封じられている。魔法陣が点滅を始める。次第に点滅の速度が速くなり、最後にひときわ大きな光が教室を埋め尽くした。
「なぁ?」
「何よ?」
白い光の爆発が終わると馬皇は真央にたずねる。
「クラスの奴らがいないんだが?」
「そうね。いないわね」
教室には馬皇と真央しかいない。2人を除いたがらんとした無人の教室。荒れた形跡はなく突然の出来事に何とも言えなくなる。
「ただいま戻りましたわ」
「戻りました。あれ? なんで馬皇さんと真央さんだけなんですか?」
馬皇たちが呆然としていると由愛とサライラが戻ってきた。その後で先程の光に気が付いた生徒に連れられた教師が入ってくる。鉄だった。
「おい‼ 何があった‼」
「あ。鉄先生」
「鉄先生」
「真田に馬皇、それにイズバルドに山田? 何があった? いや、とりあえずこっち来い」
突然の教室から漏れた強烈な光に野次馬のごとく他のクラスの生徒たちが集まってきたのを見て鉄が他の教師に落ち着かせるようにお願いすると残されたメンバーは鉄の後ろをついて行った。
今日はここまで




