閑話・いつの日かの出来事
予約投稿です。
時間的には修学旅行を終えてしばらくたったある日の出来事です。
アマノハラの光源の中。緑が豊かで太陽の中とは思えない環境。そこでサライラと由愛、ユメリアは馬皇たちが降り立った場所に立っていた。穏やかな風がサライラ達の肌を撫でる。
「もう‼ お父様も来ればよかったのに‼」
「ですよね」
「だな」
馬皇が来なかったことにプリプリと怒るサライラを見て由愛たちは苦笑する。
「真央も真央です‼ 1人で楽しそうに行ってしまいますし‼」
真央は由愛たちに環境適応の魔法だけかけて1人でどこかへ行ってしまった。
「でも、本当にここまで来てよかったんでしょうか?」
由愛は不安そうな顔をするとユメリアが答える。
「構わん。我も含めてここまで来る手段がないからな。それにここの事は我たちと馬皇しか知らん」
鬼神との戦いの際にこの場所の事をユメリアは公には伏せていた。あの時は慌てたり困惑したりしていたがイシュララが消える瞬間。その最後の様子の時に浮かべた馬皇とイシュララを見た時には墓の中に持って行くことを決めて今もなお、このことは書物にも記載していない。
「そうなんですか? それだったらなおさら入りずらいんですけど……」
「もう‼ 入ってるんですから問題ありませんわ‼ 行きますわよ!」
サライラは由愛の様子にじれったくなったのか由愛とユメリアの手を掴んで引っ張り出す。
「分かりました‼ サライラさん‼ 自分で歩けますから‼ 引っ張られて腕が痛いです‼」
「それは失礼。でも、しばらく一緒に手をつないで行ってもらってもいいですか?」
サライラは引っ張るのを止めるが手をつなぐのは止めたくないのか由愛に上目づかいでたずねる。
「それなら喜んで」
由愛は穏やかな笑みを浮かべて肯定する。
「それは構わんがこういうのは初めてだと少し恥ずかしくなるな」
ユメリアは気恥ずかしそうにうなずく。
しばらく城の壁沿いを歩いて城の反対側。到着すると城の反対側に向かってそこからまっすぐに歩く。しばらく歩くと山になっており目の前には丁寧に階段があった。
「この先ですわ」
サライラがそう言うとサライラ達は階段を上がり始める。無言でしばらく歩き続け上りきると城を一望できる開けた空間に出る。目の前には墓であると分かる石碑が置いてあった。
「うわぁ」
「あの時は離れた所に山があるくらいの感覚だったがここから見る景色もすごいな」
由愛とユメリアは上りきった直後の見下ろした景色に圧倒される。城の反対側が見えていると言っても作りはしっかりしたものでそれはそれで味がある物に見える。それ以外にもよく見ると川が流れておりそれが生命の営みが出来る程度には整っている。そして、それ以外の残りはほぼ緑で覆い尽くされている。
「確かにそれもすごいですが近くを見てください。ユメリアさん。あの石碑の周り。白いお花畑ですよ」
石碑の正面以外には白い花が咲き誇っている。
「ここがお母様のお墓……」
目の前に石碑にはサライラ達の文明の言語で要約すると『偉大なる竜の女王イシュララここに眠る』と書かれている。墓の周りは花に囲まれていてもそこまできつい臭いはなくほのかに甘い匂いである。
「む? これはあの時のお父様の匂い?」
家を出るとき、馬皇に抱き着いた時に感じた匂いと同じ匂いにサライラが小さくつぶやく。
「馬皇さんがどうかしたんですか?」
サライラのお父様のつぶやきが聞こえたのか由愛がたずねた。
「いいえ。何でもありませんわ。それよりもお母様。お久しぶりです。無事お父様に会えました。それとこの子たちが私の友達です……」
頭を左右に振ってから手を組み合わせてお祈りをする。サライラの心の声が漏れているのか最初の方の少しだけ言葉に出してその後は心の中で今までの事を報告する。その後ろで同じように由愛とユメリアもお祈りする。
30秒程黙祷すると報告を終えたのかサライラは立ち上がる。
「さぁ‼ お参りも終わりましたし次行きますわよ‼」
サライラが立ち上がる音に反応して由愛たちも黙祷を終えるとサライラ由愛たちの手を握る。
「えっ‼ もういいんですか?」
サライラのお参りの短さに由愛は思わずたずねる。サライラはもう満足なのか満面の笑みでこういった。
「今日の所はここまでですわ。またここには来ますしお母様にも楽しみは残しておかないと。それよりもお母様に今後もいい報告が出来るように今から思い出を作りに行きますわよ。今日は私のおごりですわ」
そう言って由愛たちを引っ張っていくサライラ。その様子を引っ張られながら穏やかに笑みを浮かべる由愛とユメリア。わいのわいのと言いながらイシュララの墓を後にするのだった。
短いですが書きたかったので書きました。次回からは新章です




