34話
更新しました。一応グロ注意
「お前が鬼神か? 見た時より小さくなってねぇか?」
「確かに。我が見た時には少なくとも馬皇よりも大きかったぞ」
馬皇はサライラの所へユメリアを降ろすと鬼神を見る。鬼神は横から割り込んできた馬皇達を見て何かを感じ取ったのか叫び声を上げる。
「――――‼ ヨコセェェェ‼」
「喋れるのかよ‼」
ここで初めて鬼神が言葉をしゃべると馬皇に襲い掛かかる。考えもなく突っ込んでくる相手に馬皇の拳が鬼神の顔にめり込む。
「――――‼」
勢いに合わせてカウンターされた鬼神はのけ反る様に吹き飛ばされ瓦礫を貫通する。それでも勢いは衰えず結界の端へと鬼神はぶつかる。
「あ~。抑えたつもりだったがやっぱ加減効かねぇか」
吹き飛ばされた鬼神を見て馬皇はそう呟く。馬皇はいつもの要領で殴ったつもりだった。馬皇の感覚では吹き飛ばす所はまでは見えていたが瓦礫に強く叩きつけるぐらいだった。しかし、結果は見ての通り瓦礫を貫通して真央の作り出した結界に叩きつけられるというのものだった。
「馬皇様‼ もっと加減を‼ 結界が壊れます‼」
「悪い‼ 少しミスった‼」
「気を付けてください‼」
ケイスケが真央を抱えたまま馬皇に指摘する。サライラが壊さないように真央が介入したのに後から来た馬皇が加減を間違えて結界を壊すなど本末転倒である
「我は準備してもいいのか?」
降ろされたユメリアが馬皇にたずねる。それに対して馬皇は直ぐに返事をした。
「ああ‼ 頼む‼」
「分かった‼」
ユメリアにも指示を出す。神殺しの槍の中に内包された魔力を起動するためにはアマノハラ王族の魔力を使わなければならない。それを起動するための魔力を練るためにユメリアは精神を集中させる。
「くっ‼ 馬皇の声……とケイスケ」
「真央様‼」
ケイスケの声に気絶していた真央が目を覚ます。
「……あいつが帰ってきたのね。行けるわ」
ケイスケの手から離れて真央は立ちあがる。目覚めたばかりせいか若干ふらついている。それをケイスケが支える。
「もう少しだけでも安静にしてください」
「あいつにばっかり良い恰好はさせないわ」
「そうですか。なら私がサポートします」
「ありがとう」
ケイスケはそう言うと回復魔法を発動する。怪我が治ると真央は飛んで馬皇の元へと舞い降りる。
「ちょっと気を失ってたわ」
「行けるのか?」
真央がそう言うと馬皇が短くたずねる。
「ふん。愚問ね」
「そうかよ」
馬皇がニヤリと笑う。それにつられるように真央も笑う。
「真央様‼ 後ろです‼」
2人がやり取りをしていると不意を突いた形で地中から真央の背後に飛び出す。それに対して馬皇がすでに対応していた。
「あめェよ」
鬼神の飛び出した先でいつの間にか待ち構えていた馬皇は竜人化して口を開く。魔力を収束させ完全な竜化した時と変わらないレベルのブレスを放つ。閃光と共に鬼神が呑み込まれる。
「全く。あれだけ壊すなって言ってるでしょうが」
このまま結界に当たれば間違えなく貫通する威力の馬皇のブレスを鬼神ごと小さな丸く黒い空間に放り込む。その中で空間と空間を繋げてブレスを循環させる。
「――――‼」
鬼神は勢いが衰えることなく馬皇のブレスが循環する小さな世界から出ることが出来ずもがく。
「どんだけの威力込めてんのよ」
1分弱が経過しても威力が全く衰えを見せない様子の馬皇のブレスに真央は呆れを含んだ声で言った。
「止めを刺すのはユメリアの仕事だが万全を期したいだろ」
「それもそうね」
体を馬皇のブレスが崩壊させ続ける。そして、すぐに鬼神は再生させることを繰り返す。
「ユメリア。行けるか?」
「すまん。待たせた」
起動できるまでの魔力を練ったユメリアが目を見開くと槍から黄金色の魔力が漏れる。それは辺り一帯を黄金色で覆う。
「すごい力ね。見てるだけでも圧倒されちゃうわね」
真央がそう感想を述べる。
「これは……そうか。俺を殺した……」
馬皇はその光景に冷や汗を流す。この槍の力で染まった黄金色を見て思い出していた。前世で勇者が使っていた武器であったことを。幾度となく戦闘や共闘を繰り返した相手が使っていた武器。暴走する神を殺し最後は馬皇自身にも止めを刺した聖剣。馬皇が前世では何度も見た代物だ。間違えるはずがなかった。
そして、馬皇に止めを刺したときにはその剣は半ばから折れたのも覚えている。そこからあの剣を鋳なおしてあの槍を作り出したのだと馬皇は予想を付ける。
「足りないんだろ。持って行けよ」
馬皇は短く口に出して魔力を放出する。ユメリアだけでは起動するのに魔力が足りないのか黄金色の魔力は馬皇からも魔力を喰らう。
起動するまで馬皇とユメリアから持っていくと黄金色の魔力はユメリアの持つ槍に収束される。黄金色の槍は光の槍となる。
「――――――‼ ――――‼」
槍の起動が完了すると鬼神がなりふり構わず暴れ出す。あれが自身を殺すことが出来ると直感しているのか未だ崩壊と再生を続けている中でもあれから逃げるように動こうとするが逃げ出すことが出来ない。このままでは逃げられないと感じて今の空間を壊そうと巨大化を始める。
「真央‼」
「分かってるわ‼ ユメリアやりなさい‼」
「くらえ‼」
馬皇が合図をする。真央は鬼神のいる空間の背中に必中するように槍が通るだけの大きさの穴をつなげる。出来た瞬間、穴に向けてユメリアが槍を全力で投げつけた。
「―――‼ ―――――――‼」
終わりは呆気なかった。鬼神の背中に槍が刺さると光が鬼神を飲み込む。光が収まると槍諸共鬼神は消え去っていた。
「やった?」
ユメリアが最初につぶやく。そして、跡形もなく消えた鬼神が復活せず真央が空間を作るのを止める。そのまま1分弱。何の気配もないことを確認すると真央が言った。
「やったわ‼」
「ユメリア‼ よくやった‼」
「やりましたわ」
「ユメリア様‼ おめでとうございます‼」
「ほ、本当にやったのか?」
まだ実感がわかないのかユメリアはたずねた。
「ああ。うまくいったんだ」
「は、はは。今更ながらに手が震えてきた」
馬皇がユメリアにそう答えるとユメリアは手を震わせながらその場にへたり込む。
「なにはともあれこれで一件ら、く……ちゃ、く」
「え?」
「へ?」
それは突然だった。鬼神を倒して油断している瞬間に起こった。馬皇が胸元を見てみるとそこには鬼神とは違う鉛色の腕が生えていた。
最後の最後で急展開
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