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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第六章 修学旅行は地下世界都市‼
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29話

「やっぱりお前だったか。イシュ」

「ええ。そうよ」


 倒れたままの馬皇は顔だけを器用に上げて親しげにイシュララを呼ぶ。イシュララも嬉しそうに答えた。


「え?」


 にわかに信じがたい会話の内容にユメリアは話に着いて行けず馬皇の方を向いてもう一度同じ言葉を言った。聞いていた馬皇は起き上がった。


「なんで疑うようにこっちを見て言った。一応言っておくがこいつが言っている事は間違ってねぇからな」


 馬皇がユメリアの疑問に答える。その答えにユメリアは申し訳なさそうに言った。


「それはどういう事なんだ?」


 ユメリアの脳内は未だ混乱しているのか思っていることがすぐに口に出しながら馬皇とイシュララを見る。その様子に馬皇は面倒くさそうに頭を掻いた。


「あ~。俺は1回死んでんだ。だから正確には俺の前世の妻だ」

「前世? それに一回死んだ?」


 馬皇の言葉を繰り返してユメリアは頭をかしげる。未だに混乱しているユメリアを放っておいて馬皇はイシュララの方を見る。


「ああ。それよりもイシュ。なんでここにお前がいるんだ?」

「それはあなたが転生した世界が私たちのいた世界と同じ世界ですもの」

「うん?」


 馬皇はイシュララの言葉が理解できずに眉間にしわを寄せる。その姿にイシュララはため息をつくとゆっくりと説明を始めた。


「小難しい話はあなたにしても意味ないから簡潔に言えば私たちの世界、正確には文明なんだけどこの文明が出来る遥か昔に滅んでから出来たの。私たちがライトバルトと言っていた世界は今の地球。だから、私たちがこの場所に居ても不思議ではないのよ」

「 」


 馬皇は言葉が出なかった。異世界だと思っていたら同じ世界だったという事に。それ以上に馬皇とイシュララは言葉もなくお互いに近付く。


「会いたかったわ」

「ああ。俺もだ」


 息の触れ合うくらいに近付いた馬皇とイシュララは抱き合った。かつてを共にした2人は長い抱擁を終えるとイシュララの方から離れた。


「でも、これでお別れね」

「突然何を言っているんだ? イシュ?」


 唐突に別れを言い出したイシュララに馬皇がたずねる。イシュララは答える。


「私はね。もう死んでいるの。今ここにいるのは魂だけ。あなたに会えることを知っていたからあなたの力と共にあったのだけれどそれも今日でお終い。私が消えると同時にあなたに私が取り込んだ力が帰るわ」


 イシュララがしゃべり始めるとイシュララの体は薄く光になり消え始める。その様子に馬皇は声を荒げる。


「なっ‼ おいっ‼ どういうことだよ‼ まだいられないのか‼ サライラにまだ合ってないだろ‼ 俺の力でいたんなら俺が力を注げばいいのか‼」

「ごめんなさい。それは駄目よ。私の頑張りが無駄になっちゃう。あなたの死んだ日。あなたの力がこの世界に悪影響を及ぼし始めた。苦肉の策で私が半分ほど取り込んだけど大きすぎる力は私には荷が重すぎた。その時に偶発的にだけど未来であなたに会う未来が見えたの。ただ、その時には残った力が近くにいた弱い神を取り込んだ。そこからはあなたのいない中での大きな戦いになったわ。異空間に閉じ込めて、サライラを除いた私たちの子供たちと地上にいる者たちでこの世界に縛りつけたの。そして、私の体を柱にして封印したの。それがこの世界の始まり。いつかあなたがあれを始末してくれることを信じてね」


 そこまで言い終えるとイシュララは喋るのを止める。話が終わると馬皇は心を落ち着けて言った。


「言いたいことは分かった。あれは俺の一部なんだな」

「ええ」


 イシュララは短くうなずく。


「悪いな。後始末までさせて」

「そうね。確かに長い時間の中は暇で暇でしょうがなかったわ」

「そっちか。後悔はしてないんだな」

「当たり前よ」

「そうか」


 馬皇はそう言ってイシュララを強く抱きしめた。イシュララは驚くがすぐに気持ちよさそうに目をつむる。


「ふふ。これだけでもここまで待ったかいがあったわ。私はここまでだけど後の事は全てセバスに任せているから聞きなさい。おそらく下の子達に伝えた神殺しについても教えてくれるわ。それとダリウス」

「なんだ?」


 前世の馬皇の名前を呼ばれ馬皇はたずねる。


「サライラをよろしくね」

「おう。任せろ」


 馬皇は力強く答える。その答えに満足したのか


「ええ。それじゃあそろそろ行くわ。それと本当に最後に……」

「なんだ?」

「自由に生きなさい。私の事なんか気にせずに」

「忘れるかよ。それも自由だろ」


 馬皇の返しにイシュララは困ったようなうれしいような微妙な顔をする。


「もう。悪い人ね」


 イシュララは口をとがらせながらも馬皇の額を小突く。その仕草に馬皇は穏やかな声で答える。


「俺がそう言う男だっていうのは知ってるだろ?」

「ふふふ。それもそうね。あっ‼ 忘れてたわ‼」


 そう言ってイシュララは笑った。そして、思いついたように声のトーンを上げると馬皇の肩を掴む。そして、勢いよくジャンプすると唇と唇が重なる。


「おまじないよ」


イシュララはそれだけ言うと元の姿を保てなくなったのか光の粒に変わった。


「……じゃあな」


 光が空に昇るのを見ながら馬皇は静かに呟いた。

クリスマスなんてなかった。いいね?

ユメリアが空気になってしまった感が否めませんが概ね設定通り。忘れ去られるほど古い過去であればそれはもはや異世界であると言えるのではなかろうか(暴論)。


いつも読んで下さりありがとうございます。

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