27話
光の中は真っ白で何も見えない状態が続く。
「うう。暑い」
ユメリアは思っていた以上の熱気で出来た汗をぬぐう。真央の魔法は環境に適応するために作られてたもので完全に暑さや寒さをシャットダウンする物ではないため一定までの暑さを感じるのである。
「はっはっは。減らず口が叩けるんなら大丈夫だな。普通だったら塵も残らず焼け死ぬな。この温度は。それにしても中はこうなっているのか」
「いや、どうなってるのか全く分からんのだが」
「結界か? 真ん中の方になにかあるな。それと光自体が熱を持ってるな。実際の太陽を変わらん」
「怖すぎるだろ。さらっとそんなこと言われるこっちは複雑なんだが? それと黒い何かが見えるぞ」
馬皇の発言にユメリアが答える。目が慣れて来たのかユメリアも白い光以外の何かを見つける。
「そうか? 今いる所よりも暗いが同じ白だぞ? 中は見えないがな」
「ここまで強い白だと他の色があってもまだ黒にしか見えん。現に馬皇も黒い靄にしか見えんな」
それは球体だった。中は見えないがその大きさはアマノハラの城がすっぽり覆われても余裕がありそうである。
「入るぞ」
「行くのか?」
「そのために来たんだからな。何が有るか分からんからしっかり捕まってろよ」
「分かった」
馬皇の言葉に返事をするとユメリアは馬皇の背中にしがみ付き目をつむる。馬皇はそれを確かめると真っ直ぐに突っ込む。馬皇たちは抵抗もなく結界らしきものの中に入る。
「これは……。そろそろ目を開けてもいいぞ」
「これは……」
馬皇の言葉と共にユメリアは目を開ける。最初は何も見えなかったが視界が徐々に戻る。そこには先程の白い光の暴力とは裏腹の世界であった。目の前には大きな建物。西洋風の城が目の前にあった。城を取り囲むように城壁がある。その周りは森になっている。それが調和して1つの景色として映る。そして、境界であるかのようにその周りは白い光の壁で覆われていた。
「なぜこんな所に城が?」
「さぁな。それよりもあそこに降りられる。降りるぞ」
馬皇は城の近くに降りる。ユメリアが降りると馬皇は元の姿に戻る。
「ん~」
少し離れた所でユメリアは大きく伸びをする。服の腕の裾がめくれて白い腕が見える。緩いアマノハラの服で曖昧になっていた胸元が強調される。そして、体をほぐすように軽く屈伸をする。
「何してんだ?」
馬皇は視線をややそらしながらユメリアの行動をたずねる。
「何って? ここまでずっと飛んでたんだから体をほぐしてるんだが?」
「そうか。どれくらいかかりそうだ?」
「ふっ、ほっ、と。すぐに終わる」
しばらく体をほぐすと馬皇の元へ駆け寄ってくる。
「すまん。待たせたな」
「そこまで待ってねぇよ。それにしても城か」
「城だな」
馬皇たちは城の方を見る。城壁に覆われているために下の方は全く見えないがそれでも城の上の方が余裕で見える。それが城の大きさを強調する。
「門の近くに降りたが何も反応がないな」
「そうだな。それはそれで妖しいな」
「それとここでは何が出るか分からんから離れるなよ」
「おお。これは‼ 絶滅したはずの霊樹‼ それにこのキノコの形は面白いな。ハート形だ‼ しかし、ピンクで毒々しいな」
「話聞けよ」
馬皇の話を聞かずに勝手に行動を始めていたユメリアの首根っこを摑まえる。
「甘い」
「逃がすか」
「きゃふん」
そう言ってユメリアはいつの間にか馬皇の手を離れて別の場所に行こうとするが馬皇はそれを読んで腕をつかみ軽く拳骨を入れる。
「むぅ。少しぐらいいいではないか」
ユメリアは涙目で馬皇を恨みがましく見た。その様子に馬皇は呆れた顔でユメリアに答える。
「今はそれどころじゃないだろうが」
「分かっている。それで? 少しは気がまぎれたか?」
ユメリアが馬皇にたずねる。
「何のことだ?」
「とぼけるのか。まぁいい。それよりも行くんだろう? 案内してくれ」
「あ、ああ」
切り替えの早いユメリアに着いて行けず馬皇は困惑する。そして、城門の前まで歩く。
「ところでどうやって入るんだ?」
城門の前まで到着すると閉まっている城門を見てユメリアはたずねる。その見た目は果てしなく頑丈そうで見た目通りにおもいのだろう。
「あん? そんなの普通に開けれるだろ」
そう言って城門を苦も無く持ち上げる。その様子にユメリアが呆れたように言った。
「えぇ。張りぼてなのか?」
「違いますよ」
「それなりに重いぞ」
「我でも持ち上げられるか?」
「無理だな」
「そこの方が特殊なだけです。この門だけで推定2トンはあります。人力で、ましてやおひとりで持ち上げられる方がおかしいです」
「だよなぁ……。って‼ 誰だ‼」
「おっと私は敵ではありません」
城の内側から声が聞こえる。敵意はないのかあっさりとした声が聞こえる。自然に会話に混ざっている人物にユメリアがツッコミを入れる。そして、城門が自動で上がっていく。それは初老を迎えた男性だった。
「私の名前はセバス・マルコス・アルエ・イェルナス32世。私のことはどうかセバスとお呼びください。ようこそお越しくださいました。奥様がお呼びです」
「どうする?」
ユメリアは馬皇にたずねると即答する。
「着いて行っていいと思うぞ」
「そうか」
「そうして下さるとありがたいです。ではこちらへ」
そう言って馬皇たちはセバスの後をついて城の中へ入っって行った。
印象に残る文章を書く難しさと共に成長してないように思える今日この頃。どうすれば読んでもらえる文章ができるのだろうかと考えながら更新です。
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