捕まった先で
終わる気がしない……。
さっさと終わらせて日常バトル物を書きたい。
多分、後2話でこの話を終了する予定。
「うっ‼」
真央は、気が付くとまぶしい光に照らされて目を覚ました。そこは何かの実験室のようだった。真央は何かの台の上に拘束されていることに気づき引きはがそうとするがびくともしなかった。
「くくく。ようやくお目覚めかい。どうだい。今の気分は」
真央を気絶させた男が嬉しそうに笑いながら現れた。
「最悪ね……」
まさに言った通り真央は最悪な気分だった。記憶では何度も死や大怪我は見慣れたはずなのに、実際に馬皇が撃たれたところを目の当たりにすると反応できなかった。それよりも、感情的なりすぎてあの男に考えもせず策もなしに突っ込んでいった自分に腹が立つ。あれでは相手の思うつぼではないかと真央は歯噛みする。
そんな苛立ちも含めた言葉に胡散臭そうな笑みを浮かべて男は言った。
「そうかい。そうかい。私は愉快な気分ですよ。異能者の真田真央さん」
真央は、男が勘違いしていることに気付いた。どうやら、あの魔法を超能力かなにかだと思っているようだ。思考を読み取ろうとすると警告音が鳴り同時に顔の横を何かが通り過ぎた。
「それで、私をどうする気なのかしら?」
冷静な表情で、何もなかったかのように喋る真央。それが面白くないのか男はイライラし始めている。ポケットに引っかかっているのか悪戦苦闘する男。嬉しそうな顔をして白いカプセルの入った袋を取り出した。
「なぁに、ちょっとした実験で薬を飲んでもらうのだけですよ」
他の研究員を呼び出していたのか、もう1人白衣を着た女に男は薬を渡してすぐに出ていく。部下なのだろうなのだろう。
「いやよ」
真央は拒否するが何も反応を返さない。
女は、拘束された真央の口を無理矢理あける。その開けた口に先程の薬を流し込んだ。飲ませた後、ムズを口に含ませて飲み込むまで口をふさいだ。
「ん。うぐっ」
そのまま揺らされ薬を飲ませたら男は楽しそうに戻ってきてペラペラと喋り始めた。手にはバインダーを持っていて自分のことを書き込んでいることだけは真央にも理解できた。
「いやいや、いいことを教えてあげましょう。この薬は若返りの薬です。1粒で5歳若返ります。今回2粒なんで4歳くらいになるでしょうね。この実験が成功したら世界から注文が殺到しますよ。効果は直ぐに出ますので。後はゆっくりと幼くなったあなたは経過を見て私どもの組織の経営する孤児院かあなたの能力の発現過程でも調べさせてもらいますよ」
「最低ね……あなた。っ‼」
真央は、苦し紛れに抵抗しようと声を張り上げるが体に強烈な痛みが走った。それに耐えるように歯を食いしばり身悶える。それと同時に少しずつ体が小さくなっているのか服に隙間が出来てくる。
「そう褒められても困りますね。この後ゆっくり変化していきます。ついでにですが副作用でかなり痛みを伴うのですよ。生き残るのも半々の確率でしたし。そして、喜んでください。何かしらの能力を持っていると生き残る確率があがるみたいですよ。まあ、その痛みの過程で記憶が飛ぶので私は記憶の処理とかしなくて良くて楽なんですよね」
男は両手を広げて楽しそうに話している。真央の方はそんな余裕はないのか苦しげな表情で痛みに耐えている。
「……」
「おや? もうしゃべる気力もありませんか? ですがよく耐えられますよね。前の男なんか大人なのに耐えるどころか発狂して死んだのに。そんなあなたににいいこと教えてあげますよ。あの時の警告音ですがね。何かしらの力場を察知して能力を持った人間を探しているのですよ。とある組織が提供してくれたんですよ。そのサンプルたちを捕まえて万人に使える若返りの薬の礎になってもらっているんです。え? ここじゃなくてもいい? いえいえ。ここはやけに超能力を持った人間が密集しているんですよ。だから恰好の実験場なんです」
一旦、言葉を止めて真央の様子を見る。痛みのためにもう聞いていなかった。
「ふむ。調子に乗って話しすぎましたか。駄目ですねえ。つい、無駄なことを喋りすぎてしま……」
『侵入者。侵入者。タダチニ、マニュアルニシタガッテコウドウシテクダサイ』
大音量でサイレンが鳴る。侵入者らしい。つい先ほど来た研究員の女性も慌てている。楽しく話していたことを中断されたのか男の声が若干低い。男は通信機の電源を付けて状況を聞く。
「まったく。無粋なお客人ですね。侵入者の数は?」
男が聞くと通信機から声が聞こえた。
『そ、それが、場所は実験施設正門。人数は2人です‼ うわぁぁぁ‼』
爆音とともに通史イサキの声が聞こえなくなる。男はこの施設にたった2人で侵入してくるバカに苛立ちを覚えた。
「なめやがって‼ 被害は‼」
声を荒げる男。さっきまでの飄々とした感じとは大違いである。通信機が壊されたのか通信がつながらない。
『こちら。管制室。あなた方の悪事を察知して今ここから映像で見ている。無駄な抵抗をせずにおとなしく投降しろ』
低い厳格そうな声が放送で流れた。監視室を奪われたことで下手をするとここが筒抜けであるだろう。証拠を残すのもまずい。そういった考えからこの施設を破棄することを決定した。通信機の電波全体に男は声を流した。
「ちっ‼ 施設は破棄する。マニュアルに従って最低限を持って撤収しておいてください。そして、戦闘部隊は敵の足止めに向かってください。私は侵入者の情報を引き出してから撤収しますので残ります」
『ハッ‼』
通信機越しからそれぞれの言葉で男に返事をした。研究員たちはそれぞれ行動を開始するのだった。




