12話
更新です。……バトルまで行かなかった。でも楽しくかけているはず、と信じたい
「……燃えてる」
「燃えてるわね。準備に時間をかけている内にことは起こってしまったのね」
「えぇ。そうなりますわね」
「そんな……」
城は燃えていた。クリスの案内の元、一旦、隠れ家にてクリスの着替えと装備を整えてから城に到着した時には既に城には火の手が上がっていた。その様子に真央たちは呆然とする。城の周りは堀で囲まれ池になっている。そのため延焼の危険はないものの大惨事になっているのは明らかである。
「領主様‼」
「そうだ‼ 由愛‼」
クリスは飛び出した。外に出てきた人間はまだ見ていない。そのことから領主を幽閉していた天守閣へと城の塀や屋根を跳躍しながら一目散に目指す。一方で理解の超えた事態に呆然としていたが、真央とサライラと真央はすぐにあの中に由愛がいるかもしえれないという可能性を思い出して慌てて城に向かう。上の方を探しに行ったクリスとは逆に逃げ遅れの可能性を考えて入口の方から入っていく。入口の方はまだ完全に燃え移っていないのか煙が辺りを包み込む。
「サライラ‼ 行くわよ‼」
真央の言葉にサライラはうなずく。真央はうなずいたサライラと自分を魔力で包み込み外の煙や熱をシャットアウトする。
「うっ」
「中で何が起こったの」
外の害を遮断するが中の状態とそんな中でも鼻につく臭いにサライラと真央は顔を顰める。辺りは煙で見え辛くなっているが廊下は血で染まっていた。死体はどれも原形を保っておらずそれなりに時間が経っているのか城の熱にやられたのか酷い臭いが充満していた。そして、何よりも酷いのはどの死体の顔も苦悶や恐怖の表情を浮かべていてまるで何か見てはいけないものを見た様子なのが目につく。
「由愛‼ どこにいるの‼」
燃え上がる城の中でサライラが声を上げるが何も聞こえない。サライラの由愛を探す声に真央も今はそれどころじゃないことを思い出して同じように視界の悪い中で必死に由愛の反応を探す。
そこからしばらく探すが手がかりすらない。火の手がさらに強まり城の柱が崩れる音があまり時間がないことを示しながら探し続けていると急に大きな音と揺れが襲った。
「何っ‼」
「向こうから何かが上がりましたわ‼」
「ちょっと待ちなさい‼」
揺れが収まると城が燃えると炎とは別に上がった光が煙の先から上がっていくのを見てサライラが先行する。慌てた様に真央がサライラの後を追う。
そして、城の中心部らしき場所へと到着するとそこには下へと向かう崩れかけの階段と天井に空いた大穴だった。大穴の斜め下には大きな熱量で焼き払って貫いたような後が残っている。
「中に何かがいるのは分かるけど複数の魔力が混ざり合ってて誰がいるのかが分からないわね」
「進むの?」
サライラの問いに真央は少しだけ考えるとまた大きな揺れが起こる。しばらく動けなくなるが穴の開いた場所から少しずれた場所から光が飛び出す。そして、真央は震源の位置を理解すると階段を見る。
「そうね。どうやら、この原因はこの下みたいだし、もしかしたら由愛もそこにいるかもしれない。行くわよ。サライラ」
「はい」
そう言って今にも崩れ落ちそうな階段に突入しようとすると下から何かが上ってくる音が聞こえてきた。
「うおおおぉぉぉ‼」
「おおぅぁぁぁ‼ 速い速い速いぃぃぃ‼」
「ひぃぃぃ‼ 下から何か来ます‼ 来てますよ‼」
足跡と共に必死な男の声とこんな状況の中で楽しそうな女の声、何かが迫って生きていることを伝えて怯えた声を上げる声が聞こえる。後ろから光が追ってきているのか男が女二人を肩に担いで走っている影がかすかに見えた。
「マジか‼ って‼ 上に誰かいる‼ おい‼ そこをのけぇ‼」
男の声を聞いて真央たちは入ろうとするのを止めて慌てて入口を避けると何かが階段を走り抜ける。そして、タッチの差で遅れて光が質量を持って通り抜けた。そして、勢いよく走ってきた人間は急には止まれずに担いでいた2人を逆方向に向かって勢いを殺すように真央たちに向かって放り投げる。そのまま1人は燃えている城の壁に激突する。放り投げられた2人を見て真央とサライラは宙に浮いていた人物の一人が由愛であることに驚くが慌ててキャッチする。
「真央さん‼ 来てくれたんですね‼ けほっ‼ って‼ お城が燃えてる‼」
真央が由愛をキャッチすると動きずらそうな着物風の衣装を着た由愛が嬉しそうに答えた。そして、辺りを見回し城が燃えている事に驚く。
「いやー。助かった。キャッチしてくれた君。ありがとね」
サライラがキャッチした方の少女を下すと少女は軽い感じで礼を言う。
「それであなたは誰ですの? 由愛にそっくりですし」
「今日、資料館で見たでしょ。それに興奮してたでしょ。多分この人がこの国のお姫様よ」
「ああ‼ 由愛のそっくりさんの」
「確かにそっくりだけど我にはユメリアと言う名前がある。名前で呼んでくれるとうれしいな」
そう言うとサライラは屈託のない笑みを浮かべて手を差し出した。
「そうですか。それなら私の名前はサライラと言うわ。よろしくね」
「ああ。よろしく」
何かを感じ取ったのかお互いに名乗り合う2人。その様子に真央は呆れた表情を見せた。
「自己紹介するのは後にして頂戴。それよりも脱出するわよ」
「それに壁に激突したあいつは、あなた達を助けるために放り投げてこの城の壁にすごい勢いで激突したわ。あの勢いなら、もう……」
「何死んだ様な言い方してんだ。失礼な奴だな」
「なんだ。生きてたの?」
「おう。そんな簡単にくたばってたまるか」
真央は壁に激突した馬皇が怪我1つなく戻ってきたのを見て軽口を叩きあう。呆れと同時に安堵の感情が混じっているのは気安さ故なのか純粋に怪我1つなく落ち合えたからなのか。
「何してたのよ」
「おう。それは一旦、ここを出てからでもいいか? ここまで燃えてるのはちっと予想外でな」
馬皇が辺りを見回すと城の天井に穴が増えただけでなく火の手が酷くなり、あまりもたついていると由愛やユメリアが出られるか微妙になりそうな状態である事に気がつきそう答える。真央は馬皇の提案にうなずいてから言った。
「分かったわ。後で教えなさいよ」
「分かってる。それとサライラとユメリア。仲良くなるのは構わないが脱出するぞ」
馬皇がわき道に逸れて緊張感が若干失いかけているサライラ達に脱出することを伝える。そして、真央が先頭に立った。
「私が出口まで案内するわ。着いてきなさい」
「「はい」」
「分かりましたわ」
悲惨な状態の城とは裏腹に明るい返事で馬皇達は燃え盛る城内を跡にするのであった。
次回は馬皇視点。少しだけ時間が戻ります。




