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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第六章 修学旅行は地下世界都市‼
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9話

遅くなりましたが更新しました。別視点です

「はぁぁぁ。いいお湯だった」

「そうですねぇ。満足です」


 馬皇が外に出る少しだけ前。温泉から上がった真央はサライラと由愛と一緒に部屋に戻る最中であった。地下都市ではあるが闘技大会の時の旅館にも負けない外の夜景の見える露天風呂にサウナ。そして、数十人単位で入っても余裕のある大きな風呂という充実した風呂場に真央たちは時間を過ぎるの忘れてしまっていた。真央たちが最後だったために先生と鉢合わせしまって気まずくなったものの概ね満足そうな表情である。


「それにしても地下なのに夜があるなんて不思議ですわ」


 歩きながら外を見ると地上と変わらない月に照らされいているような明るさの景色にサライラが口を開いた。


「この世界もオカルトを魔術にしつつ外と変わらないように太陽の明るさを時間で帰る様にしてるんだって。資料館でこの世界の成り立ちに書いてあったわ」

「どうして外と合わせているんですか?」


 真央の解説に今度は由愛がたずねる。


「説明では未練と書かれていたわ。本当かどうかは知らないけど」


 資料には地上を追われた者たちが地上に負けない世界を作り出す所からこの世界が生まれた。と書かれていたことを真央は思い出す。


「そんなことどうでもいいですわ。それよりもあれお父様では?」

「え? 馬皇さん? あれ? なんで? あそこに真央さん? ここにも真央さん? あれ? あれれ?」


 真央は思考にふけっていると馬皇の名前を言って立ち止まるサライラと由愛。混乱気味に立ち止まった由愛の背中に真央はぶつかった。


「わぶっ」

「すいません。大丈夫ですか? 真央さん?」

「え、ええ。……私?」


 由愛にぶつかると思考から戻ってきたのか由愛に気にしていないことを伝える。そして、ロビーの先には馬皇と真央が一緒になって外に出て行こうとする姿を目の当たりにする。呆気に取られている間に馬皇たちは外に出てサライラが真央の匂いを嗅ぐ。


「すんすんすん」


 いきなり真央の臭いをかぎ始めたサライラを慌てて引き剥がした。


「ちょっ‼ 何してんの‼」

「うーん。この真央はいつもの真央の匂いですわね。ということはお父様と一緒に出て行った真央は一体?」


 サライラはマイペースに答えると先程馬皇たちがいたスペースを見た。そこには既に馬皇と真央? の姿はなく、どうしようもなかった。


「私に化けてるってのが、気に入らないけどあいつが戻ってきたら分かる事ね。まぁ、あいつの事だし偽物に気付かないのは気に入らないけど死ぬことはないでしょ。それよりもきな臭いわね」

「そうですわね。何に巻きこまれているのか知りませんが、お父様が万が一にもやられることはないでしょうね。ただ、こういう時は大体が大事になりますわ」

「よねぇ」


 真央がそう言うとサライラが肯定する。その話に会話を挟んでいない由愛でさえも同意なのか真央とサライラの言葉に頭を縦に振っている。途中で飲み物を買って、たわいのない会話しながらも真央たちは部屋に戻り由愛が扉を開けようとすると突然真央がそれを静止した。


「待って」

「どうしたんですか?」


 警戒しているような鋭い声に驚き由愛は扉を開けるのを止めて真央の方に振り向く。振り向くと真央と同じように警戒を隠しもしないサライラが扉の先を睨みつける。


「誰かいるわ」

「敵ですわ」

「え? どうするんですか?」


 真央たちが中には聞こえない程度の小さい声で由愛に答える。真央たちの言葉を信じて由愛も警戒するとサライラが手招きして後ろに来させる。真央とサライラはお互いにうなずき合うとサライラが扉を開けた。そこには行儀悪く机に座っている。つい先ほど外に出て行ったはずの馬皇が左手を上げて真央たちを出迎えた。


「おう。邪魔してるぜ」

「馬皇さん?」


 いつもの馬皇の姿と口調に由愛は警戒心が解ける。由愛が馬皇の元に近付こうとするとサライラが由愛を静止させる。


「サライラさんどうして?」


 サライラは答える事なく由愛を止めると真央と馬皇の話は続く。


「レディの部屋に無断で侵入なんて穏やかじゃないわね」

「そう警戒すんなよ、真央。俺だって緊急事態じゃなかったらこんなことしねぇよ」

「そう。ならその緊急事態ってなによ?」

「この国の姫様が行方不明になった。今日、資料館で知り合った奴が明日の式典の代役を頼んでくれって頼まれたんだよ。姫様に似ている由愛にその式典の代役をな」

「それで由愛が必要、と? さっき出て行ったのはその話を持ちかけられたから? 私たちのいない間に?」

「ああ」

「そう」


 ここからの行動は速かった。馬皇の言葉に対して真央は冷気で足元を凍らせようとする。馬皇の方もその様子に気が付きすぐさま飛び退く。真央たちを除いた部屋の半分冷気で凍ると大きく跳びのいた馬皇が口を開く。


「いきなり攻撃するなんてひどい奴だ」

「ええ。一応あなたの流儀に則って合わせてあげてたけど気持ち悪かったからつい手が出てたわ偽物さん」

「そうかい。気が付いてたのかい」


 馬皇の声が変わる。低くそれでいて胡散臭さが増す声に真央は苛立ちを隠さずにぶつける。


「白々しい。それにわざとらしいわね、あなた。資料館では由愛が心配であいつに黙って使い魔放ってたけどその時にはあいつの知り合いがいたのは知っているけど知らない人間が頼んでいるのは見ていないわ。それに変装するなら最後までやり抜きなさいよ。腹が立つわ」

「おっと。それは気づかなかったわぁ。次は気を付けねぇとな」

「そうね。あんたの間抜けさを後悔なさい」


 真央と馬皇の演技臭いやり取りが行われる中で真央は氷の槍を無造作に飛ばす。


「おおう。怖い怖い。楽な仕事だと思ってたのにめちゃくちゃ面倒くさい相手に当たって超絶ツイテねぇ」

「うるさい。ここでくたばれ」


 真央の攻撃に対して馬皇の姿をした男は札を取り出す。慌てた様子はなく流れるような手つきで自身の手を噛み指先の血を札に付けた。


「さすがにここに戦闘痕残されると面倒だな。口寄せ・炎刀カグラ」


 札は燃えて男の手元に刀が出現する。刀で迫りくる真央の攻撃を全て切ると氷の槍は全て蒸発し水蒸気で男が見えなくなる。


「余裕ぶって‼ サライラ手伝いなさい‼」

「分かってますわ‼」


 真央の声に合わせてサライラが男の影を捕える。相棒であるリンネを虚空から取り出し男の体に刃先の側面を叩きつける。


「偽物‼」


 叩きつけるが影の感触は固く軽かった。そして、飛び出してきたのはただの丸太だった。


「しまった‼」


 真央があることに気が付き声を上げる。真央が慌てて水蒸気を散らそうとすると窓から水蒸気が出て行ってともぬけの殻となった部屋に真央とサライラが立っているだけだった。


「やられたわ。あいつ言ってたじゃない。由愛が必要って。サライラ。ごめん。まんまと由愛を連れ去られたわ」

「それよりも由愛を探さないと。まだ遠くに行っていないはず」

「駄目よ」

「何でですの‼ 由愛が心配ではないの‼」


 サライラが声を荒げるが真央はサライラを落ち着かせるために状況を説明する。


「心配よ。由愛が戦えるわけじゃない。今も心配で心の中が怒りで燃えたぎってるわ。でも、相手は恐らくこの辺には詳しいはず。そうなるとやみくもに探しても意味ないわ。それに気付かない? ここまで騒いでるのに誰も反応していないわ」


 真央の言い分にサライラは今更ながらに現在の状況を認識した。戦闘をしていれば本来であれば何かしらの反応があるはずなのに誰も気が付いていないような静かな様子が今の状況の不気味さを増長させている。


「それならどうするの‼」

「まずは、この旅館の人間がどうなっているかの確認。それに由愛を連れ去った奴が向かう場所なら見当がついてるわ。城よ」

「なぜ?」


 真央が断定して言うとサライラが頭をかしげる。


「今回の敵は私たちを出し抜いたと思っているでしょうね。ええ。そうね。まんまと出し抜かれたわ。でも、あいつらの話を聞いてると狙っていたのは由愛でしょ。この国の中心になにかしらの術式が眠っているのはこの国ついた時から気が付いてるわ。厳重に封印されているし、恐らくそれがこの国の領主が関係しているのは分かるわね。多分、由愛を人質にして領主に最終的にあいつらはそこの封印を解かせるために動くはずよ。だから、使えそうなものを準備してから行くわよ」


 真央の説明に納得がいったのかサライラは大きく深呼吸した。


「すー。はー。すみませんわ。真央。それと了解しましたわ」

「分かってくれたのね。準備ができ次第、すぐに動くわよ」

「ええ」


 真央たちは由愛を取り戻すために動き出した。

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