7話
「んくっ。んくっ。んくっ。ぷはっ。はっはっは‼ 助かったぞ‼ 青年よ」
馬皇は水を欲していた由愛似の少女が目の前で一気に飲み水を煽ると人心地着いたのか軽く息を吐いて礼を言った。
「気にすんな。どうせ拾い物だしな。後、俺は14だ」
馬皇は手元の女が残していった荷物を見る。小さなカバンであり中には500mlペットボトルに入った飲み水と丸薬らしきものがわずかばかり入っていた。何故それを持っていたのかはさて置いてあまりの都合よさに馬皇は微妙な顔をする。
「何‼ そうなのか‼ それは悪いことをしたな。我も来月で15になる。それにしては中々のガタイだな。お主は」
「お、おう。気にすんな。困ったときはお互い様だ」
軽快な笑い声と共に年齢を聞いて驚く。その後、馬皇の全身を見てから背中を叩く。叩かれた馬皇は由愛に似ているのにやけにハイテンションな様子の少女に困惑する。
「はっはっはっは‼ 気持ちのいい答えだ。気に入った。我はユメリア。ユメリア・アマノハラである。我の配下ならんか? 我の国を知っておるのだろう?」
「……名前まで似てるのかよ。断る」
由愛そっくりの少女は名前を名乗る。名前にも似ている要素が混ざっていて馬皇もさすがに驚く。資料館の時点で名前は知っているはずであるが、大して興味がなかったことや真央たちの興奮具合、写真のそっくり具合のインパクトに気が付けば名前を見忘れていたというだけである。
「そうか。そうか。それならば仕方があるまい。気が変わったら、我に言うがよい」
「あっさりしてんのな」
「そうであろうよ。あんまりしつこいのはお主も好きではなかろう? 我も嫌いだ。過去に見合いでしつこいのが何人も居たのでな。全部沈めて来たが、そのせいで今でもじゃじゃ馬扱いよ」
先程まで快活な笑い声をあげているが、目は笑ってなく不快そうな顔をするユメリア。その様子が由愛に似ているせいで馬皇の調子が狂う。
「ええい‼ そんな顔すんな‼ めんどくさい」
「我も思ってはいたが、それは少し失礼ではないかの‼ まぁ、良いわ。それで? お主はなぜここに?」
馬皇の言葉に少し傷ついたのかユメリアは反論すると少し調子が戻ったのか、こんな森の奥で大した水も食料も持たずに徘徊している馬皇にたずねた。
「そうだな。俺の知り合いに変装した忍者みたいなのに誘われて来たら襲われてな。返り討ちにしたら逃げられて今に至る。これはあの忍者が落としていった物だ」
そう言って忍者が残していった服と荷物の入った鞄をユメリアに見せる。そして、荷物の鞄を開けると水と食料が入っていた。
「ふむ。お主の手に持っているポーチは我の国の忍に常備させているものだな。丸薬は食料の代わりだな。それにしてもなぜ襲われたのだ?」
「それはわかんねぇ。ただ……」
「ただ?」
馬皇の言葉に続くユメリア。馬皇はユメリアを見るとこれが恐らく襲われた理由であると当たりを付けていった。
「お前に似ている少女が俺の知り合いにいる」
「我にそっくりか。それはさぞ美少女なのだろうな」
「お前がそれを言うのかよ。それでお前は何でここに?」
簡単に説明するとユメリアは馬皇のいうユメリアに似ている少女に思いをはせる。ユメリアの感想に馬皇は呆れた様子を見せると今度はこんな所で倒れていた理由をユメリアに問いかける。ユメリアはあっさりと馬皇の疑問に答える。
「むぅ。我は逃げてきたのだ」
「逃げてきた?」
ユメリアの言葉に馬皇は嫌な予感がする。そして、それは的中することになる。
「そうだ。謀反じゃ。外の国ではくーでたーと言う。首謀は忍の里の領主。綾高の家の者だ。あの者は野心が強くてな。別の物を餌にして利用しておったのだが、まさか堂々と城に奇襲するとは。それによって家臣のほとんどを殺され我の両親は捕まった。残った家臣は途中で我を逃がすために囮になった。だが、追手に追いつかれてな。我は運よく川に流されて逃げれたのだがいかんせんどこかわからなくなってさまよっていたらお主に会った訳だ」
「俺が言うのもなんだが、そこまで話してもいいのかよ?」
包み隠しなくあっさりと喋るユメリアに馬皇は疑問の声を上げる。本来であればここまで詳しく喋らなくてもいいはずである。
「我似の少女がおるのだろう? もし、本当にそこまで似ているのであれば、奴の事だ。我の代わりに人質として利用。父上が封印の間を開けば即座に殺すであろうな。それに奴らは隠密だ。例えどんなに相手が強かろうが人を1人攫うことなど動作もない」
ユメリアの言葉に馬皇は言葉もなく立ち上がる。そして、馬皇の溢れだす殺気にユメリアは体を震わせると慌てて馬皇を取り合抑えて落ち着かせにかかる。
「お、落ち着くのだ‼ すぐに奴が行動することはない‼」
「放せ‼ 由愛が危ないかもしれねぇって時にジッとしてられるか‼」
馬皇の声に恐怖で何も言えなくなりそうになるがユメリアは必死に恐怖を押さえつけて喋る。
「奴は用心深い。ただ、国を乗っ取っただけなら恐らくお前が来る前から大騒ぎで我の国に観光客が来るはずがない」
普通に考えてみれば観光客も国の人間も何も知らないはずがない案件である。人の口に戸は建てられない。そう言う事であれば、何かしらの騒ぎが起こってもおかしくはないのである。
「なら、何が目的だ?」
「それは分かっておる。国の秘術だ」
ユメリアは神妙な顔をして言った。
いつも読んで下さりありがとうございます。第6章プロローグを少し書き直しました。何故騒ぎになっていないのかは次回説明する予定です。ちなみにユメリアの一人称は我と書いてわたしと読みます。
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拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします。




