3話
遅くなりましたが更新です
修学旅行。2泊3日で陰陽都市アマノハラの予定はこうである。クラスごとに4つの場所をローテーションで周る。国の成り立ちを知ることのできる『資料館』、この国特有の魔術である陰陽術の研究機関『陰陽院』、この国の主が今も実際に住んでいる『アマノハラ城』、この世界の学校『アマノハラ学院』の体験授業である。どの順番でも問題ないような日程であり、1日はその中の1つを見て2日目に2つ、3日目に残りの1つを見て最後に全員でお土産屋の集まる通りで少しの時間を過ごすという予定である。
場所はアマノハラの国土資料館。転移装置から現地のバスで20分程度の場所にある。地上の道路と大差ない道路と若干古風な街並みからかけ離れた如何にも博物館という様相をしている。
「……以上がここの注意事項だ。ここからは班ごとに各自行動だが羽目を外しすぎないように。解散」
担任の安森先生の言葉で一斉に馬皇たちのクラスは班ごとに纏まって動き出した。入口前で整列してたクラスの生徒たちが班ごとの集まりでごった返す中で馬皇は班員でありいつものメンバーである真央、由愛、サライラ、と合流した。
「待たせたな」
「遅い。ほらさっさと行くわよ」
「無茶言うなよ」
「ふん」
「私は気にしませんよ。ほら、真央さんも」
「お父様ぁ~」
真央は資料館が楽しみなのか馬皇を急かし、由愛はそれをなだめている。サライラは相も変わらず馬皇の背中に引っ付き資料館の中に入る。その途中で入場のチケットを見せて入場する。
「すごいわ‼ 始まりは平安時代なのね。つまり、その頃から魔術、いいえここでは陰陽術というのね。陰陽術は存在していた、と。それでこの魔方陣はその時の物を再現してるのね」
資料館の魔術の始まりについての説明文と共に目の前には魔法陣が描かれた紙が置かれていた。
「あれはレプリカか?」
「そうね。魔力を注ぎながらあの魔法陣を書かないと意味がないけどね」
馬皇が魔方陣を見て魔力のこもっていない品に当たりをつけると真央が同意した。2人の言葉に由愛は目を凝らして魔法陣をよく見るが頭をかしげる。
「ふぇ? そうなんですか」
「ええ。あれは火種を起こすだけの簡単な魔術なんだけどとても面倒な術式ね。実際に起動したら危ないからの処置なんでしょうね。実物を見たことないから何とも言えないけど私が知っているのは魔力を込めて描かないと魔法陣は発動しないものよ。そこら辺の詳しいことは明日に行く陰陽術研究の機関で見れると思うわ」
「へぇぇぇ」
「詳しいな」
「説明文にも簡単には書いてあるわよ。そこから私の経験から答えているだけよ」
真央が展示に書かれている説明文を読みながら自分の解釈を加えつつ説明すると由愛は納得したのかうなずく。そうやって由愛に説明をしながら歩いていると馬皇には見知った声がした。
「羨ましいな‼ この野郎‼」
「ハーレムなのか? 爆発しろ」
「お前ら落ち着け」
チンピラのように絡むのは悪友であり最近狼耳と尻尾の生えた洋介と嫉妬を隠しもしない小太郎である。
「は? どこがハーレムに見えるんだよ?」
「あ? それのどこがハーレムじゃないと? そんな可愛い女の子たちがお前の周りにいるのにか‼」
小太郎は馬皇の周りの女の子を見る。由愛は何か慌てた様子で、サライラは馬皇の背中に張り付いたままであるがどこか嬉しそうにして、真央に関しては心外だというような表情で馬皇と小太郎を交互に見る。
「あん? ハーレムなんざ6人以上が当たり前だろ。確かにこいつらは一般よりは女らしく奇麗でかわいらしいがそこに俺が思うような感情はねぇよ。特にこいつとか」
馬皇は真央に視線を送ると迷惑そうに睨み返される。その様子に恋愛のような甘い雰囲気は一欠けらもない。
「「見せつけやがってちくしょう‼ 覚えてろよ‼」」
しかし、馬皇と真央の様子に小太郎と洋介はそうは思わなかったようだった。小太郎と洋介は捨て台詞だけ残してそのまま走り去っていってしまう。
「何がやりたいんだあいつらは?」
「俺が知るかよ。それよりもあいつら放っておいていいのか?」
「……そうだな。放っておくと何しでかすかわからんから俺も行くわ」
「おう。気をつけてな」
「ああ」
残された幸太郎が呟くと馬皇がどうでもよさげに答える。そして、洋介たちの後を追って去っていった。
「にぎやかね」
「だろ?」
「ほめてないわよ。それよりもいいの? 由愛のぼせてるわよ」
真央は全くといった風にため息をつくと由愛のほうを指さす。そこには未だに混乱している由愛の姿があった。
「き、奇麗って。可愛らしいって……」
由愛は顔を真っ赤にしてうわごとのようにハーレムを呟くといきなり我に帰ったように馬皇のほうを向いた。
「馬皇さん‼」
「お、おう。なんだ?」
「わ、私のこと可愛いんでしゅか?」
テンパって言葉を噛む由愛が馬皇に顔を近づける。由愛の鬼気迫る様子に馬皇は体をのけぞらせるが由愛はさらに顔を近づける。しばらくして根負けしたのか馬皇は由愛の目を見て言った。
「あ、ああ。可愛いぞ」
馬皇はそれだけ言うとすぐに由愛の視線から逃げるように由愛から目を逸らす。その言葉に由愛は満足したのか照れたのか。顔を放して顔の熱を冷ますように頬に両手を当てた。
「え、えへへぇ。可愛いって。馬皇さんが私に可愛いだって……」
「由愛ばかりずるいですわ。私も‼ 私も‼」
「ああ。サライラも可愛いぞ」
「……私の扱いが雑ですわ」
由愛は自分の世界へ旅立ったの見て背中に引っ付いていたサライラがいつの間にか馬皇の目の前に顔を出す。サライラもねだるがあっさりとした馬皇の扱いに不満そうな顔をする。しかし、その雑な扱いも嫌ではないのか、そもそも背中に引っ付いているの拒否されいてないことに満足しているのかサライラは馬皇の背中に戻っていく。
「あ。倒れたわ」
トリップしていた由愛が感情を振り切ったのか先ほどの大胆な行動を思い出したのかそのまま倒れた。その様子に真央は呆れたように言った。その様子に馬皇が慌てる。
「うぉい‼ 由愛‼」
いきなり倒れた由愛に馬皇は肩を揺らして声をかけるが幸せそうな顔のままである。
「はぁ。ここも賑やかね。でも、退屈しないわ。ほら‼ 馬皇‼ とりあえず由愛を休憩室に連れて行くわよ」
真央は馬皇と由愛の様子にため息をつくと小さく笑った。そして、馬皇に指示を出すとその場を歩き出した。
いつも読んで下さりありがとうございます。
感想、批評、指摘、ブックマークなどで反応して下さるとありがたいです。
これからもよろしくお願いします。




