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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第一章 魔王たちは出会う
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馬皇、目覚める

自分はどういう話にしたいのだろう。どんどん思ってたのと違う方向へ進んでいく。

「っ‼俺はいつまで眠っていた?」


 馬皇は気が付くとすぐに起き上がる。少しだけひきつるような痛みが走るが、特に問題なく起き上がることが出来た。胸元を見ると上半身は裸で包帯が巻かれていた。馬皇は誰かがケガを治療してくれた事に感謝すると辺りを見回してみる。未だに周囲は真っ暗。やがて目が慣れて周りを見えてくると四方をカーテンに囲まれた見覚えのある風景であった。


「保健室か……」


 馬皇は1人そう呟く。その呟きに関して男の声が答える。


「そうだ。保健室だ」

「うおっ‼」


 息おなり聞こえた声に驚いて馬皇は変な声を上げる。しばらくするとその声の主が視界を遮っていたカーテンを開ける。


「気が付いたか。無事でよかったな。少し待ってろ……」


 生徒指導の先生である鉄であった。馬皇が目を覚ましたのを確認すると冷蔵庫から飲み物を持って馬皇の倒れていたベッドの近くの椅子に座る。飲み物は冷えたお茶でベッドの横にある机の上に置いた。


「鉄先生……」


 馬皇がつぶやく。喋れるまでにある程度回復した姿を見て、鉄 人並は安堵の息を吐いて馬皇の頭をなでた。


「無事でよかった。知り合いが電話で撃たれて倒れていると聞いた時は冷や汗かいたぞ」


 本当に心配したという感じで気遣う鉄。馬皇は胸を叩き自慢げに言った。


「俺、生まれつき頑丈なんで」

「そうか。だが、頑丈であることを過信するな。下手すれば死んでいた所なんだぞ」

「うっ。気を付けます」


 鉄の指摘に馬皇も反論出来ずに素直にうなずく。鉄はこれからが本題だと言わんばかりに真剣な表情で口を開いた。


「ああ。そうしてくれ。それと、だ。目を覚ましたばっかりの所悪いんだがいったい何があった? 私が見つけた時には既にお前が血まみれで倒れていたところだった。銃で撃たれた痕跡と争ったような跡。今回はすぐに見つけることが出来た事とお前が無駄に頑丈だったことが幸いして無事だったが下手しなくても事件だぞ」


 鉄が聞くと真央が連れ去られたことを思い出し馬皇は声を荒げる。


「せ、先生‼ 今日は何日‼ 真央は‼ 真央を知りませんかっ‼」

「今日は○月×日だ。お前を見つけてから日付は変わっていないがもう夜遅くだ。そうか。真田といたのか。残念ながら今回見つけたのはお前1人だ」


 馬皇の質問に1つ1つ淡々と鉄は答えていく。そのことに馬皇は体が震える。自分がいたのに。いや、自分が頼んだばっかりにとネガティブな思考に埋め尽くされていく。


「くそっ‼」


 馬皇は悔しさと自身の未熟に声を荒げた。そして、そのまま立ち上がると外へと向かおうとする。鉄はそんな馬皇に対して大きな声で言った。


「待ちなさいっ‼ 馬皇‼」

「待っていられるか‼ 真央を連れて行った奴らをぶん殴らないと気が済まない‼」

「真田さんを連れて行った場所は分かるのか? 連れ去られた生徒の捜索、救出は私たち大人の仕事だ。それに相手は少なくとも拳銃は持っている。つまり武装しているという事だ。生徒を死地へ送ることなどしたくないぞ」


 鉄の説得に馬皇は冷静になる。そして、自身の頭をフル回転させる。どうすれば助けられるか。そのために何をすればいいかを。そうして冷静になった馬皇に鉄は語りかけた。


「落ち着いたな。それで、何があったのか教えてくれるか? それが分かればこちらも動きやすい」

「すいません。あの時は―」


 馬皇は素直に謝って、今回の事のあらましを説明した。


 自分の友人が行方不明になったこと。馬皇が真央に頼んで一緒に捜索を手伝ってもらっていたこと。商店街でリモートコントロールのロボットの稼働実験を見た事。その実験は偽造で実験のサンプルとして適当に何人かをバレずに誘拐していた事。その後、商店街を離れたら相手がそのことに気付いて真央が撃たれかけた事。そして、真央をかばって自分は気を失っていて今に至ることまで話した。


 馬皇の手は自身のふがいなさと相手に対する怒りやらでシーツを握りしめて震えていた。その話を聞いた鉄は馬皇に言った。口調はあくまで平坦だった。


「そうか。親御さんに連絡しておくから回復するまで休んでなさい」

「先生」


 馬皇は覚悟をした目で鉄に語りかける。鉄は馬皇が何が言いたいのか分かった。今すぐにでも真央の捜索をさせてくれと目が物語っている。


「駄目だ」


 鉄は否定した。馬皇はそれで言葉を続ける。


「あいつがさらわれたのは俺が原因だ。だから、けじめをつけさせてくれ」


 しつこく鉄に頼み込む、馬皇。しかし、もう一度鉄は言う。


「駄目だ。もう夜も遅いし今回お前の傷から銃弾取って俺が治療した。俺もそれなりに戦えると自負しているが、拳銃持ってる相手にけが人を守りながら動くことなどできん。それに、だ。どこに生徒を危険な場所に連れて行く教師がいる。お前が人並み外れてタフだろうが、お前はまだ学生であり俺にとってはカワイイ生徒たちの1人だ」


 鉄は馬皇を威圧して黙らせる。しかし、そんな威圧すら抵抗してもう一度言った。


「先……生。それでも……お願いします。このまま何もしないのは男として……いや、俺自身が一番許せないんだ」


 鉄は馬皇を見る。そしてさらに威圧を上げる。その重圧に馬皇は折れそうになる。しかし、それでも馬皇は折れない。そのまま放っておけばそのすぐ後に1人でも探しに行くとでも言うような目だった。


「そうか。そこまでの覚悟があるのなら何も言わん。だが、指示には従ってもらうぞ」

「ありがとうございます」


 馬皇は鉄に感謝した。2人は保健室を出て鉄は駐車場にある車に乗り込む。エンジンをかけると助手席側の窓を開けて馬皇に言った。


「乗りなさい」


 鉄の合図と共に馬皇も乗りこむ。そして車は目的地へと向かって走り出した。


「さっきの話から誘拐した奴らのいる場所は先程仲間から連絡があった。結果は黒だ。今回のことで警察は動くだろうな。しかし、そうなると連れ去られた奴らを連れて逃げられる可能性がある。それにだ。そのまま指をくわえて見ているだけというのも俺の性に合わん」


 言った通り本当に予想をつけているのかよどみなく鉄は運転する。ふと気になった馬皇は鉄に聞いた。


「先生って何者なんすか?」

「はっはっは。ただの生徒指導の顧問だ。それ以上でも以下でもない」

「そうすか……」


 鉄はカラカラと笑って馬皇の質問に答える。詳しいことは教えてくれないようだった。がっくりとした馬皇に対して鉄は言った。


「まあ、このままお前を1人にする方が危ないと思っていたからな。どうせ、1人にしたらお前だけでも探しに行くんだろ。だからお前を連れていくことにした」

「うっ‼ 」


 図星を突かれたからか馬皇は何も言い返せなかった。


「お前が決めたことだ。それにな俺もお前協力したいと思った。だからできる限りは手助けをしてやる。思う通りにやればいい。それにだ。うちの生徒たちをさらった奴らだ。そのツケは払ってもらわないとな。ついでに馬皇これは忠告だ。危なくなったら絶対に逃げろ。そして生きるんだ。俺のことは構わなくていい。逃げることは恥ずかしいことじゃない。生きて帰る事こそ次につながるんだからな」

「はいっ‼」


 鉄の言葉に力強く頷くとそれ以上は何も言わなくなった。こうして、馬皇を乗せた車は闇の中に消えていった。

次回は、真央視点

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