1話
更新しました。今回は説明会です。前の章では語られなかった魔物たちの対策と魔術師と異能者のお話を少し。一応ですがこの世界での魔術と魔法の違いを定義していませんが人間が使うものと人間以外が使うものの呼び名で魔法を人間が使えるように落とし込んだものを魔術とします。
大馬中学校庭。部活動の朝練よりも前の朝早く。運動場の隅の一角にこれからの行事である修学旅行のために学生や教師が集まっていた。その中には馬皇たちが混ざっておりこれから向かう所への説明の再確認をしていた。
「いいか。復習のためにもう一回言うぞ。今回の修学旅行は地底にある世界アガルタの一部。陰陽都市アマノハラだ」
互助会への宣戦布告の一件と光の柱の事件の一件で世界中に魔物や変異種たちの件によって世界は大きな混乱に巻き込まれた。創作にしか存在していなかった存在が現れるようになったという時点で多くの問題を抱えるのは当然であるが人々は完全ではないがそれに順応していた。それらの多くはこれまで姿を現さなかった組織たちが表に出た事や魔物という分かりやすい脅威とその対処によるところが大きい。
まず、姿を現さなかった組織たちと言うのは世界の一般でいう所の魔術師。すなわちは魔法使いたちである。互助会が超能力を含む異能者が集まった集団であるなら魔術師と言う集団は魔法と魔術という科学の中で廃れていった、もしくは秘匿して隠されていた技術を研究、研鑽を目的とした組織である。世界中に多種多様に存在しており今までは表には出ていなかったが裏の世界の上層と国の上層の一部では知られており彼らの魔術という技術は重宝されていた。それが魔物と言う分かりやすい脅威に対抗する術としてあらゆる国家が国ごとにその存在を公表して世界中に知れ渡った。
次に互助会の異能者たちである。宣戦布告の映像は最初の所はCGやらフィクションやら言われていたが魔物たちの出現に積極的に対処している姿や光の柱事件の後に生まれた子供たちが炎やら氷やらを作り出した者が多く表れた。それがきっかけとなり変異種と共に認知されたのである。
最後にこれが重要であるが魔物への対処である。世界中に出てきた魔物のと言う存在。動物が変異したり何もない空間から突然出てきたり、果てには人間が魔物になったというケースも存在している。そんな魔物ではあるが一部を除いて生まれたばかりの魔物は理性は飛んでおり凶暴なのである。野生の動物より好戦的でと余程の戦力差を感じない限り襲い掛かってくる。そして、何よりも特徴的なのは魔法を使うのである。
人を気にしないで駆除するのであればミサイルや銃などの現行の兵器でハチの巣にすれば確かに殺すことはできる。しかし、一定以上の魔物になるとそれすら耐え切る、魔法で迎撃する、もしくはそういった兵器が全く効いていない、驚異の繁殖力で一向に減らない、人の住む場所に近すぎたりと様々な問題で駆逐しきるには至っていない。
それらの説明から何が言いたいのかと言うとそれらの魔物を近づけないために互助会の科学者たちと魔術師たちが手を組んで魔物避けの道具を作り出したのである。魔物の嫌がる魔力の波長や音、魔物の近づかない強者の気配をうまく使い魔物を近づけないのがこの道具の原理である。また、それを利用して作り出した魔物をおびき寄せる道具で異能者たちが作り出したダンジョンに誘い込めたのも大きい。後は現地の異能者と魔術師、その他諸々がダンジョンの中であったり、魔物の現れた現場であったりで活躍して現状は大きな問題になっていないのである。
話を戻すが陰陽都市アマノハラもこの国における魔術師たちと似ている存在である陰陽師の賑わう都市である。地下世界アガルタとは地下の空間を魔術によって拡張した世界の総称である。地球空洞説を元に地下に存在する世界を規程し1つの世界とする大魔術。それによって生まれた世界は元々1つの世界から都市が出来たのか魔術同士が干渉しあいそれらが繋がり1つの世界になったのか分からないが地続きである。
「地下都市なんて楽しみですね。真央さん。馬皇さん」
そうこうしている内に教師の説明が終わる。バスの到着が予定より遅れているためにしばらく自由時間となり馬皇と真央の所へ駆け寄る由愛。
「そうだな。陰陽師か。どんな戦い方をするのか楽しみだ」
戦う方面の考えに困った顔をする由愛。それに対して真央は呆れた表情で言った。
「戦う事しか考えてないの? あんたは」
「んなことねぇよ。後は名物に美味い飯があるかとかだな」
「……確かにそれは大事ね。馬皇のくせに考えてるじゃない。私としてはその世界の魔術が気になるわね」
中腰が嫌で旅行鞄をイス代わりに座って顎に手を当てる真央と足がしびれたのか立って屈伸している馬皇。そしていつの間にか馬皇の背中に負ぶさっているサライラ。いつものメンバーに由愛はふと気になる事をたずねた。
「そう言えば……今回の修学旅行って急遽変更になったんですよね。どうして、そんな場所を旅行できるんですか?」
「由愛。旅行のしおり見てないの? 国の要望でそう言った近くの魔術都市とか互助会の基地とかを学生たちに見せることで今後のこの世界で生き抜くために知ってほしいからって書かれてるわ」
「そうなんですか? 準備のページを日程しか見てませんでした」
由愛は旅行のしおりを読んでみると確かに書かれており気づかなかったことにしょんぼりとする。他には沖縄だったがあの事件のせいで空と海はいろいろと危険地帯になっていて陸路も安全じゃないから中止も検討されていたと書いてあった。
「後は、人材確保が目的だろうな」
「でしょうね」
「え?」
馬皇がそう言うと真央は同意と言う風にうなずいた。馬皇と真央の言葉に由愛は頭をかしげる。
「異能者や魔術師以外にも変異種の人たちはその種族に応じた特性が強く出てる場合があるんだ。俺らのクラスには洋介だけだけど身体能力が前の時より上がっていただろ?」
「……確かにそうですね」
雨の体育の時間で隣に男子がいる中で洋介が驚異的なジャンプでバレーのネット大きく越したときのことを思い出す。明らかに人間の限界を超えたジャンプに見ていた一同は由愛も含めて驚いたのは想像に難くない。
「そういう人材の中にも才能がある奴ややる気のある奴ってのは、一定数はいるからそこら辺の宣伝と国が支援するっていうアピールも兼ねてるんだって鉄先生が言ってたぞ」
「それは聞きたくなかったです」
由愛は鉄の裏事情まで説明する馬皇を恨めしく見つめる。そんな2人のやり取りを眺めていた真央が言った。
「まぁ、そこら辺の難しい話は抜きにして珍しいものはたくさんあるだろうから今回は楽しみましょうよ」
「だな」
「はい」
こうして、今回の修学旅行の楽しみを話し合いながらバスの到着を待つのであった。
いつも読んで下さりありがとうございます。
感想、批評、指摘、ブックマークなどで反応して下さるとありがたいです。
これからもよろしくお願いします。




