おまけ・魔王を名乗る理由
閑話的な物。もしくは後日譚的な物になる予定。
本編とは切り離して書いています。
この話の時系列は巨人戦の後です。キャラ設定を生かし切れていないのが悔しい。
「……」
「……」
「……」
大葉大学近郊にある全国チェーンのファミレスで馬皇たちは洋介と向かい合って沈黙していた。
巨人・ユミルを倒してから2時間後。洋介を忘れていたことを思い出した馬皇と真央は洋介の元へと戻ると完全にふて腐れた洋介が吊るされてた。洋介を解放して飯をおごる事を条件に馬皇は何とか許してもらいファミレスへと直行。並べられた料理が出るとフェンリルがどうやったのかは知らないが表に出てくると洋介の身体が女になるという事態に陥るが割愛する。お腹がすいていたのか無言ですべてを食べ終えて一息つくとフェンリルは満足したのか洋介に体を明け渡す。すると洋介の身体は元の性別に戻り今の状態は出来上がっていた。
「それで気になっていたのだけれどさっきのは何? それと洋介の中にいる狼が一体なんなのか聞きたいわ」
空調の利いた店内でお冷に一口口を付けた後、真央が最初に話を切り出した。
「すまねぇ。さっきのについては俺も分からねぇんだ。気が付いたらフェンリルが表に出て女になって。そんでまた気が付いたら元に戻ってたから。それと名前がフェンリルっていうくらいしか。確かリルって呼んでくれと言ってたな。しかも、食う時だけ起きて満足したらすぐに寝ちまった」
『zzz♪ ……ぅまぃ』
すっかり夢の中に旅立ってしまっているリルの寝言に洋介は何とも言えない感覚に陥る。頭の中で何度か呼びかけているが全く起きる気配はない。
「幸せそうに眠りやがって」
「なんだ? まだ飯食ってる寝言を言ってるな。洋介の中にいる奴はかなりマイペースな奴なんだな」
「そうだな。って‼ なんで分かるんだよ?!」
馬皇がリルの寝言に反応する。洋介は馬皇の反応に対して何を言ってるんだ? という様子で答えた。
「そんなもん分かるだろ? 普通?」
馬皇が洋介の方を見た後、真央を見ると真央も馬皇と同じことを言った。
「そうね。これくらい普通よ。普通。後、恐らくだけどさっきの姿がリルさんだっけ? そのリルさんの姿なんでしょうね」
「納得いかねぇ」
洋介は馬皇たちの反応にふて腐れると真央が補足するように言った。
「ユミルの中で目が覚めたんでしょうね。それまではそんな声すら聞こえなかったんだし。トリガーは……そうね。命の危機かしら?」
「なんでそんなに分かるんだよ? 超能力者か何かか?」
「「元魔王だ」」
ここぞとばかりに馬皇と真央は魔王であったことを自慢するように言った。お互いに自慢げな表情を見せると洋介はふと疑問に思った事を訪ねた。
「なぁ? 何で魔王であったことにこだわるんだ? そんでもって仲良くケンカしてんだ?」
洋介の問いに対して馬皇と真央が固まった。動かない2人に洋介はまずいことを言ったか? 考えてフォローするような言葉を言おうとするが馬皇が先に釘を刺した。
「洋介。言わなくていいぞ。そう言えばお前が魔王にこだわる理由を聞いたことないな。それと仲良くないからな」
馬皇が真央を見ると真央も同じく馬皇を見る。そして、納得がいったのか真央は話はじめた。
「そうね。いい機会だから私が魔王にこだわる理由を教えてあげるわ。心して聞きなさい」
真央が区切りのいい所で言葉を区切ると興味深そうな視線で見る馬皇と洋介。しばらく固唾を飲んで黙っていると真央は口を開いた。
「魔王にこだわる理由は……」
「「理由は……」」
「ずばり、私が生まれついてから魔王だったからよ」
「はい?」
洋介は訳の分からないことを言う真央に対して素っ頓狂な声を上げる。生まれついての魔王とは? 洋介は必死に考えるが答えは出ない。
「そうか」
「馬皇。分かるのか?」
したり顔の馬皇に洋介はたずねた。
「簡単なことだ。あいつはそうあるべくして生まれた。つまり、それ以外の選択肢はなかったという事だろう」
「それは……何と言うか……」
真央の考えに対して洋介は答えるのをためらった。心の中では言ってしまいたい。そんな生き方は窮屈じゃないのかと。しかし、そんな洋介の様子に真央は何でもない風に答えた。
「そんな生き方で嫌になったとかはないわね。生まれてから魔法のために生きて魔法と共に死ぬ。それに関しては私の望むところだし先代の魔王の魔法を超えられるなんて素敵だと思わない?」
真央は躊躇いなく言った。真央の眼を見ると否とは言わせない力強さを感じた。しばらく沈黙していると話を続ける。
「それで? あんたはどうしてこだわってるの?」
真央がたずねると今度は馬皇が言った。
「俺か? 俺は簡単だ。そう名乗れば強い奴と思う存分戦えるからな」
馬皇があっけらかんな顔をして答える真央は心底呆れた顔で表情通りの言葉を口にした。
「呆れた。要はバトルジャンキーじゃない」
「ああ。実質その為だけになったからな。そう名乗って行くうちに国が出来て戦争して魔族たちの王という形になったのが俺だしな」
馬皇が真央の言葉をあっさりと肯定すると真央は呆れたまま口を閉じる。
「それでどうなったんだ?」
洋介は馬皇にたずねた。物語のような馬皇の話に魅かれたのもある。
「その後は嫁さん貰って神とやらを名乗る偽物と戦って、最後は勇者に敗北した……それでこの話は終わりだ」
「えぇ。もっと詳しく」
馬皇の答えに洋介は不満をぶつける。せっかく面白そうな話を途中で切られると気になって仕方がなくなるのは当然であろう。
「まぁ、そんな訳で俺は魔王にこだわってるな」
馬皇がそう言うと1人うなずく。真央は開いた口がふさがらないのか呆れた表情のまま言った。
「ほとんど理由になってないじゃない」
「あ? お前に言われたかねぇよ」
「は?」
「あん? やんのか?」
売り言葉に買い言葉。馬皇と真央の間の空気が一触即発となる。
「だが、俺たちが戦う理由は分かるぜ」
「奇遇ね。私もよ」
戦いを止める気はないのか馬皇も真央も口を歪めると同時に言った。
「「お前が気に入らない‼ それで充分だろ(よ)‼」」
「仲が良いのは分かるが店の中でケンカは控えろよ。お前ら」
洋介が店の店員を見ながらそう言うと渋々と言った形で洋介の方を向く。
「誰が‼」
「恋仲だ‼」
「そこまで言ってねぇよ‼」
声のトーンを落として洋介に息の合ったプレーを見せる馬皇と真央。洋介を含めたクラスの総評では恋仲説が大多数であるが言ってもいないことに対する被害に洋介は否定する。机越しと横から迫ってくる真央と馬皇の表情と言葉に洋介は怯む。
『……じゅる。このアイス甘いのじゃぁ』
そんな中で未だ夢の中のリルに洋介は羨ましいと思いながら馬皇たちの相手を続ける洋介であった。
書き終えて思ったのは理由としては薄すぎるような気がするのですが、魔王にこだわる理由としてはこんなところです。そして、ものの見事にリルがほとんど喋ってないという。ちなみに洋介とリルの関係は一つの身体を2人で共有している状態です。
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