エピローグ
巨人・ユミルとの決戦から次の日学校の屋上で洋介と由愛は話し合っていた。
「畜生。昨日は酷い目にあった」
「昨日は途中で帰っちゃいましたけど何があったんですか?」
「あいつらから聞いたんじゃないのか?」
洋介は視線を横に逸らすといつものようににらみ合っている馬皇と真央を見る。手にはカードを持っており、番号を言いながら裏返しのカードを置いていく。
「それダウトな」
「むっきぃぃぃ。なんでこんなピンポイントに当てていくのよ‼」
「あ? そんなの勘だ。勘」
馬皇が自慢気に言うと渋々と言った感じで嫌そうに真央は下に積まれたカードを手元に咥えていく。洋介たちは馬皇の背中にはサライラがニコニコと馬皇に抱き着いているのは気にしないでおく。スリスリと頭を背中に擦り付けたり馬皇の匂いを嗅いでいたりしているのを見なかったことにしている。
「今日は私日直だったので。来たらすでにあの2人は始めていたみたいで話しかけ辛くて」
「ああ。なるほど。それで遅れてきた俺に」
ダウトに熱中している様子の2人を見て洋介は納得する。由愛が話しかければ恐らく返事をしてくれるだろうが自分からは昨日の話をしてはくれないだろうことは簡単に予想がついた。洋介は由愛の理由に納得していると今度は馬皇の叫び声と真央の笑い声が聞こえる。
「それで? どんな酷い目にあったんですか?」
「あいつらが言ってないんなら簡単に言うとあの巨人と戦ったってのは分かるよな」
「はい。それで馬皇さんと真央さんが止めを刺したんですよね?」
「……本当に聞いてないのか?」
「そうですけどどうかしました?」
「……いや。何でもない」
洋介は今回の件での最後に馬皇たちが止めを刺した事を由愛が言い当てて思わず聞き返そうとするが頭をかしげている由愛を見て言うのを止めた。
そして、また馬皇たちの方を見ると今度は真央がダウトを連発していた。
「ダウト‼」
「汚ねぇ‼ 手元にその数字ないの知ってて行ってるだろ‼」
「あら? 気が付いてたの? そんなもん自分の手札見れば一目瞭然だろうが‼」
「ふふふん。私の戦略勝ちよ」
「ぐぬぬぬぬ‼」
「なんて不毛な」
ダウトを二人でやっている時点でかなり不毛であるが。そんな様子を見ていると昨日の時点で名前を付けた神狼ことフェンリルのリルが洋介を無視して話していることに気が付く。
『その後じゃな。主が余計なことを言うからあやつらに捕まってしまったのじゃ』
「おい。余計なこと言うなよ。ダチに忘れられたのは本当に悲しくなるから」
「そんなことがあったんですか?」
『そうじゃ。しかも主の事を完全に忘れてたみたいでの。涙目の主は可愛かったが笑えるじゃろ? 由愛とやら』
「そうですか? 私は少し可哀そうだと思いましたよ。リルさん」
『そうか。まぁ、我にすてーきとすうぃーつが食べられて、これからもこの世界のぐるめとやらが食べられることに感謝しかないのじゃがな。それでな主と馬皇殿と真央殿とファミレスとやらに行くのじゃがそこでな……』
「ああ。まさかあんなことになるとは。馬皇の事、言えねぇ……って‼ リル‼ 余計なこと言うな‼ って、なんで普通に会話してんの‼」
由愛がリルと普通に会話していることに気が付いて洋介は思わずツッコミを入れる。
「ああ。由愛に関しては私があなたの中にいる獣と話が出来るようにして置いたわよ。感謝しなさい。それにしても可愛らしい子ね。リルちゃん。4よ」
「まさかお前があんなことになるとはな。仲間だな。5だ」
「馬皇、それは言うな。それと真田さん。さっき馬皇が伏せたカードはさ……」
「おまっ‼ それはダメだろ‼」
馬皇は慌てて洋介の口をふさぐがもう遅かった。
「ダウトよ」
「 」
真央はニヤリと笑う。それに馬皇は言葉を失う。裏返すと確かにスペードの3であった。
「私が4枚揃えているのが8だけだと思った? 別に言われなくてもここで言ってたわよ」
「っく。渡せ」
馬皇が重ねたカードを手元に咥えるとダウトを続行する。
『感謝するぞ。異世界の魔王殿』
そんな様子の2人にリルが言った。
「なんてはた迷惑な。って? 魔王?」
真央のいらない心遣いで由愛に余計なことを吹き込んでいくリルに洋介は肩を落とすがリルの言葉に洋介は反応する。
「あれ? 言ってなかったか? ま、どうでもいいか」
「言ってないし、どうでも良くはないな。リル説明」
『あの2人は異世界に存在していた魔王の転生体じゃ』
リルがそう言うと洋介は確認するようにゲームで良くある設定を訪ねる。
「あの神様とか勇者とか人間とかに立ちふさがるあれか?」
『大体あっておる』
「それって、そのままにしておいていいのか?」
『魔王とは言ってもすべてが敵ではないのじゃよ』
「そうなのか?」
「リルちゃんの言う通りよ。私はある世界で魔法を極めたら人間が襲い掛かってきただけよ。1」
「俺は単に一番強い奴が王をすることになってたからな。魔族を纏めてても魔物は自然発生するから人間と一緒に戦ってたな。最後は勇者が魔族嫌いで有名な王国の宰相にそそのかされてたけどな。2だ」
「なら、なんでお前らはここに集まって戦うんだよ?」
単純に気になった事を訪ねると馬皇と真央の手が止まる。魔王としてという建前を言おうと思ったがお互いに同じことを言うのは癪だと2人は同じことを考える。そして、しばらく考えると同時にお互いを指さして言った。
「「そこにこいつがいるから」」
全く同じことを言うと馬皇と真央はにらみ合う。そう言う部分だけ全く同じことを考える2人に洋介はまた余計なことを言った。
「やっぱ、同族嫌悪的なあれなだけで息ぴったりだな」
「……真央」
「……分かってるわ。馬皇」
2人はカードを置いくと洋介はさすがに不味いと思ったのか屋上の扉を開けて走り去る。
「どっちがあいつを捕まえるかに変更だ」
「そうね。あの減らない口を後悔させましょう」
「由愛。スタートを頼む」
馬皇が由愛にスタートを頼むと由愛は若干引きながらも言った。
「……えっとお手柔らかにお願いしますね」
「由愛は優しいのね。でも、それはあいつ次第よ」
「そうだな。捕まえてから考えるぞ」
真央がそう言うと2人は屋上の扉の前で一気に駆け出す準備を終える。由愛は内心で2人の息の合った行動を見て洋介に対して両手を合わせる。
「分かりました。スタートです」
気の抜けるようなスタートを言うと馬皇と真央が奥所の扉から飛び出す。
「今日も平和ですね」
由愛はそう言いながらいつもと変わらない空を見上げるのであった。
あまり、キャラを生かし切れていませんがこの章は一応完結です。次回は幕間か後日譚をする予定です。時系列については前書きに書きますが結構バラバラな予定。それが終わったら新しい章の始まりです。
キャラクターの表現や描写の書き方がもっとうまくなれればいいなぁ。という願望の元これからも書いていく予定なのでどうかよろしくお願いします。
以下定型文。
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