17話
遅くなりましたが更新です。
更新が遅くなっても温かい目で読んでくださればありがたいです。
「……そうね。これで行きましょう」
「思いついたのか?」
真央が1人呟いて納得したのを見て馬皇はたずねる。それに対して真央は自信満々にうなずいた。
「ええ。とりあえず洋介を呼んできてくれる?」
「おう。分かった」
真央がそう言うと馬皇は洋介を呼んでくる。由愛に関しては本人は残りたそうにしていたが今回の件は由愛を守れるかは分からない。そう判断して鉄がその場から離れる際に連れて帰っているので今この場にはいない。
「何かあったか?」
「来たわね」
「すまん。待たせたな」
洋介が馬皇に呼ばれ真央の前に来た時に合わせて鉄が複数の人を連れてやってきた。
「あ。鉄先生。それと勇次も久しぶりだな」
「久しぶりっす。アニキ」
勇次は勢いよく手を振り馬皇もそれに合わせて手をぶつける。
「あら。久しぶりね」
「菫さんでしたっけ? 今日はありがとうございます」
「気にしなくてもいいわ。こいつが行くっていったんですもの。私が着いて行かないわけないじゃない」
そう言って北原 菫は勇次をちらりと見て顔を赤くする。
「どうかしたっすか?」
勇次の方は見られていたのに気が付いて馬皇と菫の話に割って入る。
「何でもないわ。それよりもこちらこそよろしくね」
「よろしく」
菫にあいさつすると今度は闘技大会の時にいたおっちゃんが話しかけてきた。
「おう‼ 邪魔するぜ‼」
「あの時の親方‼」
「はっはっはっは‼ なんか大変なことが起こってるって聞いてな‼ 俺も力になるぜ‼」
親方もとい親部 文蔵が馬皇の背中を力強く叩く。馬皇がそんな様子の親部に心強さを覚えながら親部の方を向くと手を差し出す。
「こっちこそよろしく頼むぜ‼ 親方‼」
「おうよ‼ 任せろ‼」
馬皇が手を差し出したのを見て力強く親部は握り返す。
「お・と・う・さまぁぁぁ‼」
力強い握手をし終えると同時に後ろからいつも聞いている声と共に馬皇の背中に衝撃が走る。
「っと‼ サライラも来たのか‼」
倒れない様に体をしっかりと支えながら馬皇は後ろを振り向く。
「ズルいですわ‼ ズルイですわ‼ 私に黙っているなんて‼ それに私を置いていくなんて……」
サライラは馬皇にしがみ付いたまま言った。始めの方は力強い感じであったが最後の方は泣きそうな声になって行く。馬皇はそんなサライラに申し訳なさそうにする。
「すまんな。忘れてた訳じゃないんだが報告の後にすぐに行ったからな。調べるだけの予定だったから……」
「……由愛は一緒にだったのに」
すねた様子のサライラはぼそりと馬皇に言う。
「いや、由愛は関係ないだろ」
「大いに関係ありますわ‼ 私も由愛の事は親友と思っていますがそれとこれとは別なのです‼」
そう言ってサライラは馬皇に抱きつく力をさらに強める。馬皇はサライラを引き離そうとするが引っ付いている場所が背中と言うことも有りなかなか引き剥がせない。
「訳わかんねぇよ。それでいつになったら放してくれるんだ?」
「お父様が私と結婚して下さるまでですわ」
「親子で結婚できる訳ないだろ‼」
「それは前世までの話‼ 今は親子ではありませんわ‼」
「ええい‼ は・な・せ‼」
「むうぅぅぅ‼ 嫌ですわぁぁぁ‼」
サライラは必死に抵抗して馬皇にしがみ付く。しばらくして馬皇は疲れたのか息を乱しながら動きを止める。
「あのな。今は一応緊急事態なんだが……」
2人の様子を見かねて息を整えている馬皇に鉄が言った。馬皇は申し訳なさそうな顔をするがサライラは目をぎゅっと閉じて馬皇に力いっぱいしがみついたままである。
「サライラ。そろそろ……」
「や‼」
「いや、や‼ じゃなくて」
「や‼ です」
「最後にです・ます調で答えられてもだな」
「や‼ はなしたくない‼」
幼児退行を起こし始めているサライラに馬皇はどうすればいいのか分からなくなり真央の方を見る。その様子にサライラはさらに頬を膨らませる。
「そんなの自分で何とかしなさいよ」
真央はそれだけ言ってそっぽを向いてしまう。どうしようかと洋介の方を向くと腕で×を作り拒否される。
「……仕方ないわねぇ。ねぇ? サライラちゃん」
「ふぇ? スミレ?」
菫はサライラと目線を合わせるように中腰になり話しかけるとなぜかサライラは素直に話に応じる。
「お父さんと離れたくない気持ちは分かるけどそのまま邪魔し続けるとお父さんは構ってくれなくなるわよ」
「それはイヤ‼」
サライラは力強く答える。それに対して菫は微笑む。
「そうね。それはイヤでしょ。なら、お父さんを放して手伝ってくれる? そしたら、お父さんが今度デートに付き合ってくれるって」
「ホント‼」
馬皇は言っていないぞと菫を見るが「それぐらいの甲斐性は見せなさい」とサライラに聞こえないように視線で訴える。そして、馬皇はサライラのキラキラとした表情を見てため息を1つ吐くと折れた。
「ああ。どこへでも連れて行ってやる」
「やったぁぁぁ‼」
そう言って喜びの声を上げてサライラはようやく馬皇を放す。サライラの喜びように周りの空気は何と言うか弛緩する。
「ただ、この戦いが終わってからだぞ」
「分かってるわ‼ さっさと終わらせてしまいますわ」
サライラが鼻息を荒くする。
「話は終わった? 時間ないから話進めたいんだけど?」
ようやく話がまとまり苛立っている真央が馬皇たちに話しかける。その声にサライラが冷静になり顔を赤くして体を震わせる。他に人がいる場でダダを捏ねたこと。何よりも馬皇の前で自身の子供っぽい醜態を見られたことを思い出し恥ずかしさで動けなくなる。何よりもなぜあんな行動をとったのか分からないと思考の海に囚われていく。
「ほら。サライラ行くぞ」
「……は、はい‼」
馬皇にいきなり話しかけられたことと恥ずかしさで馬皇の目を見れず緊張した声で答えるとサライラは馬皇に手を握られサライラはさらに緊張する。それと同時に恍惚とした表情を見せる。そんな様子のサライラに馬皇は心配した表情で話しかける。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ‼ お父様‼」
「そうか。なら、いくぞ」
「はい‼」
サライラは馬皇に最高の笑顔を向けると馬皇も笑顔を返す。そして、全員が集まっている真央の元へと向かって行くのだった。
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