調査 公園
投稿します。今回の調査は公園です。
最初は中学校近くの商店街の少し前の辺りにある公園に向かった。公園自体はそれほど大きくもなく周りをぐるっと囲うようにフェンスに覆われている。公園にあるものと言えば遊ぶための広い空間と少しの遊具と砂場、他にはベンチと木があるだけだった。
「ここはよく来る公園だ。広場の隅にあるあそこのイスは、よく帰りの途中にコンビニで食い物と飲み物を買って、飲み食いしてる所だな」
馬皇がそう言うと、真央は腕を組んで言った。
「へぇ……。ということは昨日もここに来ていたの?」
真央の言っていることに馬皇はうなずいた。
「ああ。昨日は買い食いしようと誘われたからな。それに、ここ以外で集まって飲み食いする事は少なくとも今までなかったからな。よく、年下の奴らと一緒になって食ったり遊んだりしているな」
中学生と言っても、なりたての頃は小学生高学年と大きくは変わらない。小学校で仲良くしていた後輩たちと一緒になって大勢で遊んでいると馬皇は言った。その光景を真央は容易に想像できてぽつりとつぶやいた。
「そう。意外と面倒見良いのね。……羨ましい」
最後の方が聞き取れなかったのか馬皇は顔を真央の方に向ける。
「どうかしたのか?」
独り言を呟いていることを聞かれて慌てるが、何ごともなかったように真央はそっぽを向いて言った。
「いいえ。何でもないわ。とりあえず小学生たちとそれなりに仲が良いなら1回聞いてみるのも手ね」
真央はそう提案した。独り言のことは今はどうでもいいと判断してのか馬皇は真央の考えに肯定して首を縦に振った。
「そうだな少し聞いてこよう。今日は公園の主はいないしな」
「……ちょっと待って。公園の主って何よ?」
馬皇の発言に真央は頭を抱えてそう言うが、馬皇には聞こえていないのか近くの小学生と思しき子たちに話しかけに行った。馬皇は片っ端から公園の子たちに話しかけているようだった。
「うぅ。公園の主とか何かすごく気にワードが出て樹てるのが気になるけど……私もやりますか」
1人になってからそう言って、あいつが言っていたベンチへ移動して座る。楽な姿勢で小五ロリを発動させる。今回は人ではなく物であるが、発動に関しては問題ないだろうと楽観的に考えていた。
『あ~。女の尻と体がやわらかいんじゃ~』
そんな感じで楽観的に考えて発動するといきなり訳の分からない思念の声に戸惑い勢いよく立ち上がる。変質者の声に思わず周りを見渡したが周囲には誰もいなかった。
「気のせいよね。近くには誰も人なんていなかったし」
色々と信じたくない事に対して、真央はそう言い聞かせてもう一度同じ魔法を発動させる。
『さあ、わしに座るんじゃ。やわらかい尻の少女よ』
案の定、ベンチの声だった。やけに年寄りじみた声で物のくせにセクハラ発言を続ける。腹が立ったので真央はベンチを蹴った。
『あいたっ‼ 何するんじゃ。年寄りはもっといたわらんかい。これでも10年近くいる古参なのじゃよっ‼』
真央は頭を抱えたくなった。何でこうもこの魔法を使ったときに変態じみた思考や発言だけが入ってくるのか。この模倣の開発に携わった下僕から変態だったからだろうか。色々と憂いたい気持ちになるが、とりあえずわかったのはこのベンチがとんでもなくスケベだということぐらいだろう。それもダイレクトに変態発言をするタイプの。
「それで、あなたが喋ってるのね。エロベンチ」
『エロじゃないわい。ただ、かわいい子に座って欲しいだけのただのベンチじゃわい。それに何も手なんて出してないからの。ベンチだからの。最近は男の固いケツと老人のケツしか感じられなくて欲求不満だったんじゃ。何故か若い娘は座ってくれんし。というか、座ってわしにその尻を堪能させてください』
どうしようもない変態だった。それ以上にベンチに手なんかないだろって突っ込んでやりたかった。むしろこんな邪な思考が漏れているのか微妙にいやらしい雰囲気を感じてそりゃ座りたくなくなるわと思ってしまう。
しかし、聞きたいことがあるため顔色を変えずに一応訊ねてみる。
「そう。それで、さっきいた奴は見たことある」
ベンチは、自慢げに言った。
『ああ。あるよ。ここを動けんから座った奴はだいたい覚えとるわい。不本意じゃけどな』
「なら、昨日の夕方どんな人が座ったか覚えてる?」
『もう歳だから覚えとらんの~ 。お前さんが座ってくれたら思い出すかもしれんの~』
「そう。なら、お仕置きが必要ね」
『やれるならやってみろ。座ってくれるまでは喋らんからな』
「いい度胸ね」
真央は腹が立ちそこから言葉もなく蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。ひたすらにベンチを蹴る。
ベンチも最初は無言だったが、ひたすら蹴り続けると足が曲がり始める。さすがにベンチは耐えきれなかったのか音を上げた。
『イタッ‼ 痛い。痛い。止めて。壊れる。冗談じゃから爺さんの軽いジョークじゃから蹴るのは止めて。壊れちゃう。こわれりゅ~‼』
容赦ない蹴りをやめて冷ややかな目でベンチに言う。
「そう。ならだれが座っていたの?」
『き、昨日はあそこの小僧とその仲間が飯を食ってたっ‼ じゃからこれで勘弁してくださいっ!』
「そうなら用はないわね。ありがと。とりあえず、私の知り合いに座ると良いことあるよっていう噂を流した挙げるわ」
『本当かの?』
期待したような声でベンチは聞いた。真央はいい笑顔で答える
「ええ。約束よ。嘘はつかないわ」
『うっひょぉぉぉ』
ベンチは真央の言葉にテンションを上げる。それを見た真央は汚物を見るような目でベンチを見ると馬皇のワードを思い出した。
「そういえば……公園の主って?」
『かわいい子ちゃん。はぁはぁ。若い子からご老人まで女性であればだれでもウェルカムなのじゃぁぁぁぁぁぁぁ‼』
「……そっとしておきましょう」
一応は必要な話が聞けたので、自身の興味を上回って頭のおかしくなりそうな独り言を聞きたくない一心で使っていた魔法を切って、そのままベンチから離れる。真央は馬皇のいる公園の入り口へ着いた。馬皇も大体話を終えていたのか立って待っていた。真央はベンチにはもう聞こえないだろうと判断して馬皇と話を始める。
「おう、何か情報を得たのか?」
真央はとりあえず答える。
「とりあえず聞けたわ。あのベンチに誰も座ってなかったみたいよ」
馬皇は「は? ベンチ?」と頭をかしげるが、すぐにどうでも良くなったのかそのまま話を続ける。
「そうか、こっちも知り合いたちに聞いたが、昨日はいなかったってさ。次行くか」
「そうね。あとベンチが『大事に使ってありがとう。これまでのように大事に使ってね』だって。後、割と固い男の尻が好きだって言ってたから、あなたの知り合いにあそこのベンチに座ったらいいことがあるって教えてあげて」
とりあえずベンチのことで嘘を伝える。ついでに、このまま固い尻の感触だけを味わうがいいという思いで馬皇に伝える。馬皇は物の声を聴いたという風な真央の言葉と真央の発言自体に少し引きながらどう答えればいいのか分からなくなって躊躇いがちにうなずいた。
「お、おう。物の声まで聞こえるのか。それならもっと大切に使ってやらないとな。ありがとよ」
無難な言葉で回避する馬皇だった。とりあえずこれからも友人たちと大事に使ってやろうと考える馬皇だった。真央はあのエロベンチに今後も続く地獄を味あわせるために爆弾を仕込めたと笑顔である。馬皇の言葉に満足したのか次に行くことを提案した。
「なら次行きましょうか」
「よし。なら行くか」
こうして公園の主について真央は聞き忘れたまま。2人は公園を後にするとその足で商店街へ入って行った。
もう、1か所ほど調査をして、追跡、戦いが入る予定です。




