15話
「よくもぉぉぉ‼ よくもやってくれましたねぇぇぇ‼」
わずかな傷をつけられただけで激昂する置田。その様子に真央は間髪入れず氷を射出しそれを置田の腕が反射的に掴む。氷を掴むと置田の腕は掴んだ氷から冷気が広がって動きを止める。
「ひいっ‼ 今度は腕が凍った‼」
「今よ‼」
真央の合図と共に馬皇は飛び出した。
「おうよ‼ 行くぞ‼ クラウ‼」
『久々の登場ですよぉぉぉ‼』
「ええい‼ 調子が狂うから後にしろ‼」
クラウを呼び出した馬皇はのっけからテンションの高いクラウを叱責する。そして、炎を吹く上げて加速すると一瞬にして置田を通り抜ける。馬皇が置田の後ろから少し離れた所で止まると凍っていた機械の腕の片方が落ちる。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛‼ あ゛つ゛い゛‼ いだい゛よぉぉぉ‼ う゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ‼』
焼け落ちたのか切り落とされた腕は真っ赤に赤熱しており繋がっていた置田自身もその熱に悲鳴を上げる。
「ロック。縛り上げなさい。それとその腕冷ましてあげるわ」
真央はにっこりとほほ笑んだ。そして、抵抗できない様に真央が地面から大地が縄のようにうねりを上げて置田を縛り上げる。そして、真央は水球を作り出すと直接上からぶっ掛けた。
「ぎゃあああぁぁぁ‼」
水蒸気を上げる中で置田の悲鳴が聞こえる。熱せられた鉄の腕をつないでいた部分が急激に冷やされたことによって変形したことによって発生した痛みと熱によって皮膚が焼けた痛みが同時に襲い掛かっているのである。
「さぁ。答えてもらうわよ。あの巨人は何?」
悲鳴を上げ終えて泡を吹いて気絶している置田をよそに馬皇を問い詰める真央。
「あいつはほっとくのかよ?」
馬皇はチラリと拘束されている置田を見て言った。
「あんなの今はどうでもいいわ」
「お前ら鬼かよ……」
馬皇たちの容赦ない行動とその後のどうでもいいと捨て置く行為に鉄に連れられて戻ってきた洋介が開口一番にそう言った。ちなみに由愛には鉄がさえぎる様に立っているために置田の状態は見えていない。
「失礼ね。ちゃんと死なない様に処置はしたわ。ただ、同じようにスペアの手足とか出されても困るからすぐ繋げない様に接続部分を変形させただけよ。ね?」
真央が馬皇に確認を取ると馬皇も真央の意見に同意なのか頭を縦に振る。
「ああ。さすがに他の誰かを人質にされたら敵わんからな」
「……慣れてんのな」
「まぁな。起き上がるまではなるべくはっきりとは見ない様にしとけ。そうにすれば少しだけ楽になるぞ」
「……そうさせてもらう」
置田の様子を見て顔色を悪くする洋介。馬皇はアドバイスすると洋介はそれに素直に従う。
「それで? さっきから聞いてるんだけど?」
真央が催促する。それに対して馬皇は答えた。
「あの巨人だったな。あれは俺が戦った世界を壊そうとした巨人だ。確か名前はミーミルだったか。神を名乗る輩がそう言っていたな」
「馬皇。それはユミルと同じ名前だ。確か北欧神話の霧の巨人の名前だったはず」
洋介から意外にも博識な答えが返ってきて馬皇はたずねる。
「そうなのか?」
「ああ。前にゲームのボスの解説か何かで見た」
「そんなんでいいのかよ?」
「いいんだよ。適当でも分かりやすいだろ?」
「はぁ……」
洋介の解答に馬皇はため息をついて巨人・ユミルを眺める。未だ眠りについている状態なのか動く気配はない。
「あんたがため息吐くのは分からないでもないけどなんでそんなもんがここにいるのよ?」
「話を折って悪いな。あの時はさすがに勇者とか魔王とか関係なくてな。あれが見境なく暴れて危なかったから連合軍作って討伐しようとしたんだよ。その時に初めて勇者と組んだな。そう言えば……」
懐かしいなと言わんばかりに思い返す馬皇。その語りの中に引っ掛かりを覚えた真央がたずねる。
「勇者と組んだって言ってるけどまさか……」
「そのまさかだ。お前の母親だよ。今のお前そっくりの美人だったから良く覚えてる」
「そ、そうなの」
馬皇の発言に真央の顔が赤くなる。そして、それを見てニヤニヤとしている由愛と洋介。真央が2人がニヤニヤとしているのに気が付き真央の顔はさらに赤く染まる。
「あぁ‼ もう‼ そこの2人‼ 隠れてニヤニヤしない‼ それでその後は?」
「その後は総出で3日3晩休みなく戦い続けて突然消えたんだ。まさかこんなところにいるとは……」
「……ちょっと待って。決着つかなかったの? お母さんと一緒に戦って?」
馬皇が感慨深げに言うが決着が着かなかったという発言に真央は何とも言えない危機感を覚える。
「ああ。どうにもあの時は動きを止める役が俺しかいなくて、しかも殺し切るためのブレスの溜めが出来なくてな何しろあの巨体だろ? 人間サイズの魔法じゃどうにも火力が足りなかったんだよ。それに再生速度がめちゃくちゃ速いしな」
「今目覚めたらもしかして相当ヤバい?」
「そうだな。俺のブレス1回じゃ死なない数少ない奴だ」
「なんでそんなにのんきなのよ……。それにしても何というかあんたの世界って相当ヤバいわね」
馬皇の生きた世界の事を知り何とも言えない表情をする真央。そんな様子に馬皇はなんてこともない風に言った。
「そうでもないな。せいぜい世界が崩壊する危機なんて生きてる内に俺がやったのを含めて5回しかねえよ」
「それは多いわよ‼」
「そうか?」
真央のツッコミに馬皇はそう言うと洋介と由愛を見る。洋介たちも馬皇の話を聞いていたのか真央に同意するように何度もうなずく。
「まぁ、その話は置いておいてあいつをどうするかだよなぁ……」
「そうよねぇ」
どうするべきか馬皇と真央が声をそろえて考えていると唐突に巨大な爆音と共に巨人の足元が爆発する。
「うおっ‼」
「きゃっ‼」
突然の大きな揺れに馬皇たちは声を上げてバランスを崩すがすぐに立て直す。するといつの間にか目を覚ましていたのか置田が声を上げる。
「はぁっはっはっは‼ 油断したなぁ‼ もう遅い‼ 眠れる巨人のお目覚めだ‼」
「何をした‼」
「見ての通り爆破しただけですよ。さすがにここまですれば目を覚ますでしょうね。私はこれから楽しみですよ」
「何してくれやがる‼ このクソ野郎が‼」
馬皇は怒りのまま置田を放り投げる。受け身も取れないほど拘束されているにもかかわらず恍惚とした表情で横たわったまま巨人を見る。
「さぁ‼ 私に暴れまわる姿を見せておくれ‼ ユミル‼」
置田の言葉と同時に巨人は目を覚まし動き出した。
巨人は動き出す。ここからが戦闘の山場になっていく予定です。
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