7話
短いですが更新です。なろう大賞は1次落ちましたがこのまま完結まで持って行ければと思っています。
閑話にしようと思いましたが短く出来上がったので本編に混ぜました。次回は話が動きます。
「あちぃ。死ぬ……」
田中洋介は真夏の暑い中ひとり来た道を戻っていた。
「幸太郎も小太郎も実家に帰ってるとか先に行ってくれよ。しかも、どっちも連絡おせぇし。どっちも大丈夫って昨日行ってたから家の方まで来たのに着いて、いざチャイム押そうとしたら急にメールで当分家にいないとか。今日は踏んだり蹴ったりだな」
洋介は1人愚痴る。直接遊びに行ったら誰も居ないのである。うだる暑さで頭が回らずフラフラと道を歩く。誰かいるだろうと思っていたら誰も居なかったためにさらにやる気も思考も一層そがれていくがそのまま帰るというのも味気が無さすぎると考える。
「あ゛あ゛。考えてもしかたねぇ。ゲーセンでも行くか……」
愚痴を吐いてすっきりしたのか元々切り替えが早いのか頭を勢い良く振ると気合を入れる。そして、ここから一番近いゲームセンターの方を向いた。すると、洋介の目に普通ならばありえない状況が飛び込んできた。
「って‼ おい‼ 大丈夫か‼」
逆さまで上半身が埋まって下半身だけが見える状態である。器用に足をばたつかせているが一向に取れる気配はない。そして、人が近くを通っていることに気が付いたのか話しかけられた。
「……あ? 人か? この程度問題ねぇよ。ちょっと落ちただけだ。すぐ出られるって……。よっと? あれ?抜けねえ」
くぐもっていて声は聞き辛かったが問題ないと言っていることを理解して洋介はじっと見る。男は抜け出そうともがいているがちょうどよく引っかかっているのか引き抜くことが出来ない。しばらくすると、洋介に頼み込んできた。
「……あぁ。申し訳ないんだが手伝ってくれないか?」
「ああ。分かったから大人しくしてろ‼」
そう言って洋介は男を引き抜くことを手伝うことにしたのだった。
「あれが俺と馬皇の出会いだったな。あの後、引き抜くことに成功して改めて自己紹介したんだったな。それでその後がさらにおもしろく――」
しみじみと何度もうなずきながら洋介は語ろうとする。しかし、馬皇はいつの間にか抜け出すことに成功したのか洋介の口を両手で物理的に塞ぐ。
「わぁぁぁ‼わぁぁぁ‼」
「ちょっと何……してんだ‼」
「馬皇ちゃん‼ ここ店内ですよ‼」
馬皇は止めることに必死になっていて周りが見えていない。由愛がそんな馬皇を捕まえて膝の上に乗せて動きを再度止める。大人しくなると、洋介との出会いを思い出しているのか羞恥やら絶望やらが混じった表情をしている。
そんな様子の馬皇を見ていた全員が肩を震わせて必死に笑いをこらえている。そして、馬皇は言った。
「……笑えよ」
打ちひしがれた顔がより笑いを誘うのか顔を逸らして各々が笑い始める。それ馬皇は必死に耐える。
「っぷ。ったく。あんた何やってんのよ?」
真央は軽く吹きだし率直に馬皇にたずねる。どうすれば現代でそんな状態に陥るのか訳が分からない。
「あ、あれは、躓いたらたまたまその先に穴が開いていて頭から突っ込んだだけだ‼」
「それでもこれはないわぁ」
「俺もそうは思いたかったが事実って時に物語よりすごいことが起こるからなぁ」
真央が否定に入り洋介が実感のこもった声で言う。
「も、もういいだろ‼ 終わり‼ もうこの話は終わり‼」
馬皇がそう言うと同時に注文していた料理がタイミングよく来る。そして、全員の料理が揃うと馬皇は話をさせない様に1人食べ始める。
「ああ。馬皇ちゃん。口についてます。ほら、お野菜も食べてください」
「後で食べるから問題ない」
「それ前にも同じこと言いましたよね。駄目ですよ」
「大丈夫だって。たまに食べてるから大丈夫」
「これ意外においしいですわ」
「そうね。ファミレスだからあまり期待してなかったけど案外いいわね」
「にぎやかよね。ここ」
由愛が馬皇に対してせっせと世話を焼き、我関せずと言った様子でサライラと真央は料理の感想を言う。そんな様子をリンがにこやかに見ている。
「……やべぇ。さっきまで普通に話してたのにもう食べて別の話になってやがる。話が切り替わるの速すぎだろ。こいつらマイペース過ぎて着いて行けるしねぇ」
あまりの切り替わりの速さから呆気に取られると一人取り残されたように洋介は1人呟く。そして、出された料理に口をつける。うまいのだが、それは少し冷めていたのを感じた。
嘘か?真か?次回予告風
集団でのデート? が終わり夕方。ついにストーカーが姿を現す。しかし、ストーカーに待っていたのは……
次回「ストーカーには同情する by洋介」
お楽しみに
申し訳ありませんがサブタイは当面つけずに進んでいく予定です。書くのは楽しい……
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