デート? 違います捜索です
なかなか進まない……。
話し合った結果、2人は一度帰宅して駅前の噴水の前で集合しようということになった。今の時間帯は先生や警察官が見回りが厳重なためであった。あんな話があった後に制服を着て探そうものなら寄り道扱いですぐに注意の対象になってしまうだろうことは想像に難くなかった。
一度別れた後、馬皇はさっさと着替えて待ち合わせの場所へと向かう。早めに準備が終わった馬皇は私服姿だった。上に薄手のシャツとパーカーを着て下にジーンズで動きやすいように運動用の靴を履いたラフな格好でる。
真央を立って待っている途中でふと周りを見ると集団での待ち合わせもあればカップルの待ち合わせのような人たちがいたるところに見られた。カップルと思わしき待ち合わせの比率の方が明らかに多い。
「あれ? これっていわゆるデートなんじゃ?」
周囲を見ながら良く考えるとそうとられても仕方がないような状態に馬皇は気づいた。相手が真央であることは不本意ではあるが、思春期真っ盛りの男子である。そんなことを考えて無駄にドキドキしていると後ろから真央の声がした。馬皇は心臓の鼓動が更に高鳴って振り返った。
「ごめん待った?」
真央はなんと上も下も同じ黒のジャージ姿だった。柄どころかワンポイントすらない。動きやすい恰好という意味では確かにそうなのかもしれないが、さすがにこの残念な格好を見て馬皇は思わず他人のふりをした。
「人違いです」
そう言って距離を取る馬皇。馬皇の対応にさすがに真央も顔をしかめる。
「何バカなこと言ってんのよ」
真央が呆れた様にそう言うと真央は距離を詰めた。距離を詰めると馬皇はさらに距離を取る。真央は再度距離を詰める。それを何度も繰り返して馬皇は人通りの少ない場所まで誘導する。駅から人通りの少ない所でさすがに馬皇は突っ込みを入れた。
「確かに動きやすい恰好って言ったけどな。さすがにそれはないだろ……」
「そう? とても動きやすいのだけれど? それとも何? そんなに気合の入った私の私服姿が見たかったの? きゃー、えっち、へんた~い」
真央は自分の恰好を見直す。いつも通りに動きやすさのみを追求されたジャージ姿。いつもの自分の格好に疑問にも思っていなさそうだった。確認を終えるとその後はいつものように馬皇をからかう。最後の方を棒読みであるためからかわれているのが馬皇でも分かった。からかっているのが分かる表情と人差し指を口に当てる仕草に馬皇は不覚にもかわいいと思ってしまう。
しかし、それ以上にジャージという恰好のためか色気なんてものはみじんにも感じなかった。
「ちげーよ。確かに、私服だったら多少はドキッとしたかもしれねぇよ。でもな、あれ私服でお前ジャージの組み合わせだったらめちゃくちゃ目立つだろうが。さっきだって一瞬だったけどあの周りの男女とかが 『あれはないわ~』 って目が言っていたぞ」
「そう、なら問題ないわね。行くわよ」
何も問題なさそうに言ってそのまま行動しようとする真央。馬皇はツッコミを入れる。
「いや、話聞けよ」
真央は嫌そうに言った。
「誰があなたなんかに私服なんか見せなきゃならないのよ。それだったらこの格好の方がましよ」
思いっきり我がままを言う真央に馬皇は再度言う。
「それでもこれだと目立って連れていかれるだけだろ普通に考えて」
真央は馬皇の言葉に肩をすくめた。
「大丈夫よ。この時間帯はいつもこの格好で走りこんでるのよ」
真央の言葉に疑問を持つ馬皇は言った。
「なんでだ?」
そんな疑問を投げかける馬皇に少し怒ったように真央は言った。
「デリカシーないわね。ダイエットよ。ダ・イ・エ・ッ・ト。体系を維持するのって大変なのよ」
馬皇は真央の体の方に視線を映した。確かに努力が実っているのか体系は年相応に細い。とある箇所には一切脂肪が言っていないようでもあるが。何故か不憫に感じ馬皇は格好のことには触れないことにした。
「あまりじろじろ見ないでくれる。って‼ そんな不憫そうな子を見る目で私を見るな‼」
自分の体形を自慢したりずっと見ていたりすることに文句を言ったりと忙しいやつ奴だと馬皇は思った。馬皇は真央を宥める。
「悪かったよ。なら問題ないんだな」
「ええ。そうよ。終わったら走って帰る予定だし。それに堂々としてれば意外とばれないものよ」
そう言って真央はうなずいた。
「よし、なら行くぞ」
踵を返して普段良く行っているゲームセンターや店がある商店街の方へ向かう。
「もう、おいてかないでよ」
真央は馬皇の後を追う。そんな掛け合いをしている2人はにぎやかに商店街の方へ向かって行った。




