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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第五章 2学期の戦い
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4話

 土曜日の朝。清々しいくらいの秋晴れの中で由愛と馬皇は作戦を実行するために駅前の噴水前でリンを待っていた。


「なぁ? 本当にこれでいかなきゃなんないのか? この格好すごく恥ずかしいんだが?」


「おと……お姉さま。良く似合っておりますよ」


「駄目です。それに似合っていますよ。私のおさがりですがサイズがあってよかったです」


 サライラがにこやかに感想を言って、由愛は馬皇を抱きながら言う。抱きしめているが眼は馬皇に釘付けになっており今にも抱きしめたいといった表情である。


 そう。今の馬皇の姿はあの時の特典の少女化した馬皇である。服装は赤いチェックの半袖ワンピースで膝少し下までの白い靴下。靴は動きやすい運動靴であるが女の子用であるのか少しだけ可愛らしいワンポイントがある。鞄は肩にかけるタイプでどう見ても小学生にしか見えない。


「……それはすごくうれしくないんだが? この服装は俺としてはすごく心もとなく感じるしな。それに何と言うか見られてる?」


 可愛らしい声で馬皇は文句を言いながら由愛から離れて立ち上がり周りを見る。すると各方面からなぜか馬皇を見ている視線の元を発見する。男女関係なくちらりと見ていてこちらが見ると何故か顔を逸らされる。


「これが女の子の普通ですわ。それにお姉さまは可愛らしいんですもの。その視線は当り前ですわ。本当なら由愛と真央と私だけのものですがお父様は絶対あげたくないので今日はこのお姿で我慢してください」


 サライラが言った。


「なんでこうなった」


 ちょこんと可愛らしい動作で椅子に座る。その仕草が異様に似合っていることを感じ取って肩を落とした。そして、あの時のリンとの話し合いの事を思い出した。






「私にいい考えがあります」


 由愛が自信満々に言い切る。


「それで……どうするんだ?」


 馬皇は嫌な予感がしながらもそう聞くと由愛は目を輝かせてこう答えた。


「そう。今こそ馬皇ちゃんの出番です」


「は?」


 馬皇は耳が悪くなったのかと思ってしまい思わず聞き返した。さらに、聞いていた真央が由愛の提案に乗る。


「それはいい考えね」


 真央がいやらしく笑みを浮かべると馬皇はこの後に何が起こるのかを察して全力で否定を始める。


「嫌だからな‼ 絶対に嫌だからな‼」


「それはやってくれっていうフリですよね?」


 そう言って馬皇に詰め寄る由愛。目は若干怪しい光を放っており馬皇は別の意味での恐怖を感じた。


「ちげぇよ‼」


 由愛は馬皇を連れて行こうとし、馬皇はそれに必死に抵抗しているとこの3人のやりとりに着いて行けない洋介が馬皇たちを引き離してたずねる。


「3人で話してることが理解できないんだが俺やそこのリンって子に分かる様にそろそろ説明してくれよ」


「それもそうですね。とりあえず実演してみましょうか? 馬皇さん。こっちに来てください。じゃないと真央さんとサライラさんが私と一緒に気が済むまで馬皇さんを……」


 由愛は途中で言うのを止める。馬皇はそこから何が起こるのか由愛たちのとあることに関する所業の数が多すぎて当たりを付けられないためにうなずくしか選択肢はなかった。


「……はい」


 馬皇は渋々と言った感じで着いて行く。由愛は心なしか満足そうにしておりこの場に残った真央は羨ましそうに眺めて馬皇たちが一旦生徒指導室から出て行くのを見ていく。


「3人でいったい何をするっていうんだ!?」


 洋介は真央、サライラ、由愛という組み合わせで馬皇はいったい何をされるのか気になって仕方がなくなってしまう。


「年相応にエロいのになんで私の魅了は効かないの? 私の異能ってそんなに弱かったっけ?」


 リンは如何わしい想像を膨らませている洋介に異能が効いていないことに別の意味で落ち込む。


「まぁまぁ。そんなに落ち込まなくてもあなたの異能は効果を発揮してるわ。ただ、ここにいるのが基本的に効かない奴ばっかりなだけよ。それよりもこれから面白いのが見れるわ。洋介も期待してなさい」


「マジで‼ 本当に何があるの!? 期待しちゃっていいの!?」


 真央がそう言うと洋介の表情と共に耳がぴくぴくと動く。その様子に真央は呆れた様子で言った。


「なんというか? あんたはすごく分かりやすいわね」


「いやぁ、よくナンパする女の子にもよく言われるんだよなぁ」


 洋介は照れて頭をかく。


「褒めてないわよ」


 真央が言い切るが洋介は聞いていない。そのことに気がついて真央はため息をつくと由愛がすぐに戻ってきた。その後ろにはだぼだぼの男子制服を落ちない様に持った明らかに年下の女の子と共に。


「ただいまです」


「……ただいま」


 ぶっきらぼうに言っているがその声は見た目よろしく可愛らしい声で喋る。


「えっと? そちらの子は?」


「馬皇ちゃんです」


「はい?」


「馬皇ちゃんです」


「え? もう一回言ってくれ」


「ま・お・うちゃんです」


「ワンモワプリーズ」


「ma・o・uちゃんです」


 洋介は由愛に4度たずねるとようやく理解したのか馬皇(少女)に話しかける。


「馬皇?って‼ えええぇぇぇ‼」


 驚きの声を上げその後に馬皇をマジマジを見る。見た目的には明らかに年下にしか見えない。そして、可愛らしらが相まって非常に抱きしめたくなる雰囲気である。洋介は顔を赤くしながら馬皇の視線に合わせてしゃがむ。


「マジマジと見んな‼ 顔赤くすんな‼ 見てるこっちが恥ずかしいわ‼」


「がぷっ‼」


 馬皇の拳が洋介に刺さる。小さくはなっているために体重は軽くなっているが馬皇の本来の時と力は変わらない。そして、拳の大きさだけ小さくなっている。つまり、威力は変わらないのである。そんな拳を受けて洋介は倒れる。


「あ。やべ……。起きろ~。起きろよ。洋介」


 馬皇が洋介を揺する。すると、素早く洋介は復活した。


「っは‼ 可愛らしい女の子に揺り起こされる俺。夢でも見ているのか?」


「夢じゃねぇよ。説明がまだだろうがこのバカ野郎」


「なんだろう……。罵倒されているはずなのにこの胸に来る温かい物は……」


 馬皇の言葉に洋介は何故かときめく。その様子に馬皇を含む他の全員がドン引きしていた。


「さすがにそれはないと思うぞ。洋介」


「なんていうか気持ち悪いわ」


「同感です」


「みんな割と酷いな‼」


 馬皇たちの言葉に洋介は涙目である。それと同時に若干だけほんの少しだけ息が荒いのは置いておく。


「それはそれとしてですね。リンさんは今のこのメンツでデートに行きましょう」


「はぁ? この男も含めて?」


「はい。男の子1人に今は来ていない女の子を含めて5人。そんな状況ならばストーカーさんが男の子の方に行くと思いませんか?」


「それだったらさっきの馬皇だけでも良くなかった?」


「っは‼ 確かに‼ それだったら俺もこの姿じゃなくても良かっただろ‼」


 リンがそう言うと馬皇もわざわざ女の子の姿にならなくても良いことに気が付く。そんな中で洋介は必要ないと言われていることを理解できてしまいさらに膝をつく。


「本当に酷い扱いだな。俺……」


「いえ。今回は囮なのでその後の追跡、介入、殲滅には馬皇さんと真央さん、サライラさんが必要です。馬皇さんだったら迎撃できますけどストーカーさんが1人である保証は有りません。それに私たちの馬皇さんなのに独り占めされるのは癪ですし……」


 後半になるにつれて小さくなる由愛の言葉。何気に戦力にカウントされていない洋介であるがここだけはあっさりと流される。リンは最後の方で何が言いたかったのか察しがついたのか由愛の提案に同意した。


「あぁ~。そうね。これでも一応は問題ないわね。それじゃあ、土日はそれでよろしくね。馬皇ちゃん。それにしてもこの抱き心地は最高ね」


 リンは馬皇にそう言うと抱く。その抱き心地の良さにほんわかとした表情になると由愛も嬉しそうに言った。


「ですよね。これがクセになりそうなぐらい気持ちいいですしほんのり温かいですよね」


 由愛は正面で馬皇の頭をなでる。馬皇はすでに抵抗する気はないのかされるがままとなる。


「わかるわぁ。これだったらいつまでも抱いていたいわ」


「俺の意見は無視かよ……」


「大丈夫です。絶対にうまくいきますから」


 完全に馬皇で楽しんでいる由愛とリンに撫でられ続けるのであった。






「おっす」


「お待たせ。洋介とリンを見かけたから一緒に連れてきたわ」


「おはよう。私のためにありがとうね」


 洋介、真央、リンが馬皇たちに挨拶をする。


「それにしても……」


「なんだ? 洋介?」


 洋介が何かを言いたそうにしていたので馬皇が聞く。すると楽しそうに洋介は言った。


「このシチュエーションは良くあるアニメとかのハーレムだなってな。お前、真田さん、山田さん、サライラさんが普段こんな感じだからいつも羨ましいなと思ってたんだ。それが一時とはいえお前を含めて可愛らしい女の子達と付き合えるんだぞ‼この状況はある意味で男冥利に尽きるってもんだ」


 力説すると洋介は意味もなくガッツポーズを取る。


「そうか? 真央とか結構容赦ないぞ。どんな時でも遠慮なく要求してくるしな」


「ぐぬぬ……。それがすでに羨ましいんだよ。馬鹿野郎」


 恨みがましい視線を馬皇に向けると馬皇もさすがに面倒になったのか話を変えようとする。


「そ、そうか。ところで最初はどこへ行くんだ?」


 馬皇は洋介に最初にどこへ行くのかたずねると由愛が割り込んで言った。


「服屋です」


「いや……それは後でもいいだろ? それリンがメインだからさすがに俺の服を見に行くなんてまずいだろ?」


 馬皇は語られなかった服屋の惨劇を思い出して後回しにしようとする。


「服屋です。前回は見て周っただけなので今回はちゃんと馬皇ちゃんの服をいくつか見繕わないと。せっかく女の子になれるんですから。それにリンさんとも最初に話し合った結果です」


「ええ。私も新しい服探したいし、貴女がいろんな服を着ているのを見て見たいわ」


 まるで、最初から決まっていたかのように話す由愛とリンに馬皇は必死にいかない様に話しに食いつく。


「……女の子用の服を片付ける所と資金なんてないんだが?」


「それについては馬皇さんのお母様に後で見せることを約束して資金を調達しましたわ」


「サライラァァァ‼」


 サライラのまさかの裏切りに馬皇は思わず発狂する。サライラは楽しそうに馬皇の攻撃を避けている。そして、さすがにはしたないと思ったのか真央が馬皇を捕まえる。


「ダメよ。馬皇たん。せっかくかわいい恰好してるのにそんなに動いたら服が乱れるでしょ」


「離せ‼ そして、たん付は止めろ‼ 気持ち悪い‼ 今はその資金源についてはサライラと話し合いをしなければらないんだ‼」


 真央は身体能力を強化して馬皇を抑え込む。馬皇は真央に抱き着かれて思うように動けないために真央を説得しようとする。


「嫌よ。それにちょっと噛んだだけよ。ゴメンね。馬皇ちゃん」


「お、おう。それならいいんだ。こっちこそ悪かったな」


 素直に謝られて馬皇は何とも言えなくなり冷静になったのか馬皇も謝る。


「でも、もう限界……ペロ……」


「ひゃうん‼ 何してるんだ‼ 真央‼」


 急に馬皇を真央は舐めた。その様子に由愛は顔を真っ赤にして手で覆う。指に隙間が大きく空いているのはご愛嬌。


「ああう‼ ま、真央さん‼ 何やっているんですか‼」


「何って? 味見しただけよ?」


 なんてことないように答える真央。その様子に由愛は興奮した様子で言った。


「ここは公共の場ですよ‼ そんなことしたら‼ ほら‼」


 由愛がそう言うと真央も周りを見る。そこには顔を赤くして目を逸らした者。「キマシタワー」とか言っている者。「尊い」とか言っている者。興奮した様子でガン見している者。と多数の人間がいた。その様子に真央もさすがに恥ずかしくなったのか早口で言った。


「ほら‼ 馬皇ちゃんの服を見に行くんでしょ? さっさと行くわよ‼ 洋介もしゃんとしなさい‼ 男でしょ‼」


「っは‼ そうだ。フクヤニイカナイト」


「おい‼ 洋介‼ しっかりしろ‼」


「フクヤニイカナイト……」


「何か洋介の様子がおかしいんだが!?」


 完全に目が死んでいる洋介を見て馬皇は正気に戻そうとするが由愛に手を引かれているために手を放そうにも精神的に手が離せなかった。馬皇たちが動くと洋介もふらふらとゾンビのように後を追い始める。何というかそのある意味恐ろしい様子に馬皇は何とも言えない恐怖を感じる。


「大丈夫です。ちょっと説得しただけですから。それにちゃんとついてきているでしょ? ほら。馬皇ちゃん。行きますよ」


 何でもない様に笑う由愛に馬皇は戦慄しながら今日はもうどうにもならないことを確信してやけくそになる。


「もうどうにでもなれ‼」


 そう言って馬皇たちは早速、駅の反対側にある複合商業施設『OMAモール』のある場所へと向かうのであった。


OMAと書いておうまと読みます。なんて。

散歩効果とテンションに任せて書いたら思いの他、書けてしまうという……


いつも読んで下さりありがとうございます。

感想、批評、指摘、ブックマークなどしてくれるとうれしいです。

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