真央は出会う 2
更新です
「私がいる?」
「そうよ。私。ややこしくなりそうだからまっちゃんとでも呼んで。それと、とりあえず話をする前に。はい」
マオは平坦な声、無表情でお茶目な名乗りを上げると思い出したかのように懐からビンを取り出して真央に投げ渡す。真央はそれを受け取り魔力回復ポーションであることを確認するとふたを開け一息に飲みこんだ。
「んぐっんぐっんぐ……。うげぇ……やっぱり不味いわ。私」
「でしょうね。やっぱり私を私以外で呼んでくれないのね」
「そんなこと最初から分かってた事でしょ? 私」
「そうね」
久しぶりの薬草のエグミだけが濃縮された味に真央の顔は歪む。やはり同じ存在なのかマオも真央も目の前にいる相手に関しては自分としか言わない。そんな話をしている間に魔法薬がすぐに効きだす。魔法薬の効能は絶大なようで空に近かった魔力が短時間でほぼ戻ったことで人心地着いたのか真央は話を切り出した。
「それで、どうしてここに私がいるの? 私は死んだはずよね? そうじゃなかったら私は誰なの?」
「そうね。確かにあの日、私は勇者によって止めを刺されたわ。死んだのよ」
マオがそう言うと真央はあの死んだ瞬間の出来事が偽りの記憶でないことにそっと胸をなでおろす。
「なら、私が死んだ後に何があったの?」
「鋭いわね。さすが私」
「おだてても何も出ないことは分かってるでしょ? 私。出来るだけ簡単に説明しなさいよ。なるべく早く戻らなくちゃ行けないんだけら」
「それについては何も問題ないわ。向こうとこっちでは少しだけ時間の流れが違うのよ。こっちの1時間が向こうでは大体10分くらいかしらね? だから、慌てなくても大丈夫よ」
「関係ないわ。さっさと話す」
「分かったわ。私はせっかちね」
そうしてマオはやれやれと頭を振ると話を始めた。真央の死んだあとのことを。
「簡単に言えばあの後私は死んだんだけどバラバラに砕け散ったの。なぜそうなったのかは知らないけど、私は知らない?」
「残念ながら私にもその理由は分からないわ。それで?」
「ケイスケが私の残滓を集めた結果が私よ。だから正確には魔王時代のマオではないわ」
「ケイスケはずっと探していたの?」
「ええ。私を完全に復活させたい一心で40年かけて私を集めてここまで私を修復した。だけど、魔力の半分と記憶の一部、魂の半分が足りない状態でね。そして、彼はずっと考えていた。どこに私の半身があるのかをね。そして、見つけた」
「……そう。それが私ってことね」
ケイスケの目的を知らされ真央がそう言うとマオはうなずいた。
「ええ。予想外なことに別の存在として転生していたことには私も驚いたけどね。昔からそうだったけど彼は私のことになると後先考えなかったでしょ? だから、見つけた瞬間に躊躇いなくあなたの元へ向かったのよ。間抜けなことにあなたをここへ送る手段も考えずにね」
「なるほど。それであの装置か……」
「ええ。どうやって戻るのが一番効率いいかそれを考えて機械を使うことにしていたわ。あっちの世界で資金提供の協力を得て研究員に混ざってね。まぁ、その結果があの装置を使うために利用されているんから皮肉が来ているのだけどね。それでも私の元へ私を送る事には成功した」
異世界転移装置に関わっていたであろうケイスケの本来の計画。その装置を使って真央を目の前のマオに送る事。その最大の目的に関してはケイスケの目論見通りに達成したと言ってもいいのだろう。
「それで? どうすればいいの?」
「あら? 何の事かしら?」
「しらばくれなくてもいいわ。ケイスケが集めて収集した。それなら私たちは1つにならなきゃいけないってことでしょ?」
「ええ。私自身がそんなに時間がないの。近いうちに私は消滅するわ。そして、あなたも。覚えがあるでしょ? 魔力の回復が遅くなっているのだから」
「ええ」
記憶を思い出したときの事。そして、最近に至る間。あの時には何も感じていなかったがよくよく思い出してみると魔力の回復する速さが遅くなっていることに気が付く。最初はただの誤差であると思っていたが気のせいではなかったようだった。
「それに、何も思わなかった? 下級の魔法しか使えてなかったことに」
「あっ」
真央が使っていた魔法が召喚魔法と過去に出てきた勇者やここの書物を盗みに入ってきた魔法使いたちの魔法、そして転生してから自身が考え付いた魔法しか使用していなかったことに思い至った。他にもマオの魔法を思い出そうとするが前世のマオが使っていたであろう魔法が一切出てこなかった。
「でしょうね。私も契約の方は覚えているし契約した魔物たちとつながりは有る。だから、契約した存在から情報を得ることが出来る。けど召喚魔法だけは呼び出す術と私が経験したであろう出来事が思い出せないの」
「そう言う事なの」
真央はマオの言葉に得心が言った。知識は有る。しかし、それを実行することが出来ない。確かにそんな状態であればケイスケを呼び出したくても呼び出せないだろう。
「だから、1つになるために私と戦ってちょうだい。いくわ」
「は?」
真央が間抜けな声を出すと同時にマオは魔法で作り出した6色の槍が真央に目がけて襲い掛かった。
いつも読んで下さりありがとうございます。
感想、批評、指摘、ブックマークなどしてくれるとうれしいです。




