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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第四章 裏切りと忠誠と俺たちの夏休み
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馬皇の戦い その2

『うおぉぉぉ‼』


「はっはっは‼ そうじゃなくちゃ‼」


 馬皇は翼を羽ばたかせてに一気に屋久島へと飛びかかった。突撃する馬皇と同じタイミングで屋久島の放った銃弾が馬皇に迫る。それを馬皇は体を一回転させて躱すと自身の爪に魔力を纏わせて切りかかる。屋久島は迫りくる馬皇に対して腰に差していた警棒を左手で取り出して軽く振る。警棒が伸びた状態となり馬皇の腕を叩きつけた。


「っは‼」


『ぐっ‼』


 屋久島は馬皇を押し返すとお互いに警戒して動きを止めた。


「ほう。思い切り叩きつけたんですが折れませんでしたか」


「どういうことだ? お前にそこまでの力はなかったはずだ‼」


 竜人となった馬皇の膂力は大幅に強化されている。馬皇自身もケイスケの居場所を聞き出すために仮に殺さないように無意識に手加減をしていたとしてもただの人間に押し返されたのはおかしいと感じていた。


「それはそうですよ。お前を倒すためにいろいろと用意してきたんだからなぁぁぁ‼ あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ‼」


 そう言って屋久島は手に持っていた銃と警棒を投げ捨てた。そして叫ぶと屋久島の全身が変質する。先程と比べて2周りほど大きく膨れ上がりその体は鉛色へ。そして体の周りには鎧のような甲殻に覆われる。体と同程度の長さの尻尾が伸び額の中央には真っ赤な一本角が禍々しく生えていた。


「ふうっ。この状態になるのに時間が掛かるのがやはり問題だな。だが、すばらしい力だ。漲ってくる」


「っ‼」


 屋久島が言葉を発した瞬間、馬皇は屋久島が取り込んだ力の種類を感じ取る。そしてとっさに大きく後退する。馬皇が立っていた場所には大きな爪で削り取ったような跡が残された。


「ほう。この力が分かりますか。どうですか? この力は?」


「最悪だよ」


 馬皇がそう言うと屋久島は大きく口をゆがませる。馬皇は知っていた。時には共にあり、時には何度も対峙した存在を。


「竜を……いや、俺の一部を取り込んだのか?」


「すばらしい。正解ですよ。正確にはあなたの今の姿の爪の細胞の欠片を使わせてもらいました」


 馬皇の言葉に屋久島は正解とばかりに口元を大きく歪ませ手を叩いた。屋久島から発せられる力の正体に馬皇は過去に同じようなことをした敵を思い出していた。人間の体に竜の細胞を混ぜ込む。そんな悪魔よりも凄惨な人間の実験を。その存在の事ごとくが今の屋久島と似た様な体となり最終的にほとんどが理性など存在しない怪物と成り果てていた。そして、馬皇と対峙して破滅した存在の事を。


「お前は竜の力を取り込むという意味が分かっているのか?」


「はぁ? 何を言っているんですか? そんなこと知る訳ないじゃないですか。力は所詮力でしょう? これはお前に復讐するために用意した物の1つに過ぎませんよ」


「そうか」


 馬皇はその先にある確定した破滅にあわれみを込めた目で屋久島を見るとそれが癇に障ったのか不快そうに声を荒げた。


「そんな目で見てんじゃねぇ‼」


 屋久島が自身の爪を使って馬皇に切りかかる。先ほどよりも直接的に攻撃を仕掛ける屋久島の猛攻を時には躱し時には受け流して冷静に対処しながら屋久島を挑発した。


「どうした? 変身する前の方がもっと厄介だったぞ?」


「くそがぁぁぁぁぁぁ‼ 当たりやがれぇぇぇ‼」


 屋久島の攻撃が叫びと共に苛烈になっていく。一撃一撃が今の馬皇であっても致命傷になりえる攻撃であるが大振りになっているためにそれも当らない。そして、攻撃の後の隙を突いて一方的に馬皇がダメージを蓄積させていく。


「何故だ‼ 力を手にしたのに何故あいつに攻撃が当たらない‼」


 攻撃の当たらないことに屋久島が業を煮やす。屋久島はさらに力を引き出すたびに体が肥大化していく。その様子に馬皇は屋久島が理性を失いかけていることを理解する。


「理性が飛びかけてるか。そんなお前の攻撃なんて当たるかよ」


「それは1人であればという注釈が付きますけどね。後ろががら空きですよ」


「なっ‼」


 馬皇が油断していたという事もあるが今まで見ているだけだった皆月の声が唐突に後ろから聞こえた。その声に馬皇は後ろを振り向くが誰も居ない。馬皇は屋久島から一瞬目を離したことに気が付き慌てて前を向くとそこには屋久島の両の拳が馬皇を叩き潰さんと振り降ろされようとしていた。


「くそっ‼ 古典的な手を‼」


 隙を突かれた攻撃に対して馬皇は慌てて屋久島の攻撃を受け止める姿勢をとる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛‼」


 屋久島の邪な笑みと声と共にその両腕は勢いよく馬皇に振り落とされた。


「はははははは‼ 死ね‼ 死ねぇぇぇ‼」


 屋久島は叫びながら何度も拳を振り降ろしては上げ振り降ろしては上げを繰り返す。最初は馬皇の抵抗があったがそれも次第に無くなり屋久島が振り降ろしを止めて馬皇を見ると傷だらけになって膝をついていた。


「おぉ。まだ生きていたんですか? 思いのほか頑丈だなぁ!? おい?」


 屋久島が馬皇に対して思っていることを言うと馬皇は屋久島に対して何も言わず立ち上がり屋久島をにらみつける。しかし、馬皇は立っているのがやっとなのか膝が震えていた。


「っは‼ その程度の攻撃で死んでやるかよ……」


「生意気なことを言いやがって‼ 本当は立ってるのも辛いんだろ?」


 そう言って今度は馬皇を蹴り飛ばす。勢いよく飛ばされるが馬皇は再び立ち上がった。


「おい? その程度か?」


「しぶてぇんだよ‼」


 屋久島は馬皇に対して再度潰そうと拳を振り上げる。そして、振り降ろす。それでも、馬皇は立ち上がる。それが何度も繰り返される。屋久島を挑発しながら。


「どうした? これでしまいか?」


「なんでだ‼ なんで‼ 死なねぇんだぁぁぁ‼」


 屋久島は叫ぶ。何度も起き上がってくる馬皇に対して。とっくに限界を迎えているであろう存在に向かって。相手は死に体である。立っているのもやっとのはずだ。その証拠に膝は震えているし体を覆ている鎧のような甲殻も所々割れて血を流している。だが起き上がってくる。心も折れていない。その姿に屋久島の脳裏に先程まではなかった感情が、疑念が、馬皇が起き上がってくるたびにその存在が大きくなり屋久島の取り込んだ生物たちの本能が理性を思考を喰らおうとする。


「がぁぁぁあああぁぁぁ‼」


 馬皇が作りだした動揺によって屋久島は無差別に暴れ回り始める。そこには既に屋久島の意識は残っていなかった。


「情けねぇな……。その程度で飲まれちまうなんてよ」


 馬皇は視界がかすんでいるのか体を前後左右に揺らしながらも目の前の相手を打ち倒すために動かずに回復に努める。その間に獣のごとく理性なく暴れる屋久島の腕が馬皇に迫る。


「やべっ‼」


 回復に専念しているために馬皇は動くことが出来ない。さらに、馬皇の限界が近かったのも重なってこの一撃を貰うのは非常に危ないと馬皇は判断するがどうすることもできない。この一撃を耐えるために馬皇は腕の一本は犠牲にする覚悟を決める。迫りくる拳の勢いは衰えることなく加速され迫りくる。馬皇は衝撃に備える。しかし、その衝撃はやってこなかった。


「がっあああぁぁぁ‼」


「いつまでこんなの相手にてこずってんのよ?」


 屋久島は攻撃が通らずに返ってきた衝撃に叫びを上げる。真央が目の前に唐突に現れ屋久島の攻撃を魔力で作り出した障壁を使って防いだのである。真央はボロボロの馬皇の姿を見て不思議そうな顔をするが馬皇はいつもの調子で言った。


「お前が探してる奴を見つけるまでだよ。まぁ、少しだけ面倒だったがな」


「そう。減らず口が叩けるなら問題ないわね。後、安心しなさい。もう見つけたわ」


「そうかよ」


「それよりもなんかあるでしょ?」


「あの時の姿か? やっぱ、あんまり今と変わらないんだな」


「誰が感想を言えと言ったのよ‼ 私の力を感じなさいよ‼」


 真央が前世の姿であることを言っているのかと勘違いして感想を言った馬皇であるが今までの真央とは力が段違いであることを肌で感じ取っている。そして、おそらく真央の故郷の世界に一時的に戻っていたことを悟る。


「何はともあれおかえり」


 馬皇の言葉に真央は呆れた表情を浮かべる。


「私が戻ってきたなんてよく分かるわねぇ。違ってたら悶絶物よ。そこら辺分かってる? ……まぁ、いいわ。ただいま」


「さってと。それじゃあ、反撃開始と行きますか」


 馬皇は真央の言葉を聞いて準備運動のように体の関節を鳴らした。ここからが本番であるかのように。

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