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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第四章 裏切りと忠誠と俺たちの夏休み
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幕間 実験の少し前から開始まで

なんだかんだで100話ですよ。

年末ですが更新です。

モチベーションを維持するにはどうすればいいんだろう……

 馬皇たちが突入を開始する少し前。


 WCA日本支部の研究室。実験の最終段階を実行するために屋外に機材の搬入を終えて試運転の小規模な境界を作り出し成功した所へ代表の皆月が現れてケイスケにいきなりこう伝えた。


「今すぐに異世界への境界を開いてください」


 そのひと言にケイスケは慌てて皆月を説得し始める。


「もう少しだけ‼ せめて調整のために2時間だけ待ってください‼ あれだけでは何が起こるか分かりません‼」


「そんな猶予は有りません。ここを互助会が嗅ぎ付けてます。いつ襲撃を仕掛けてきてもおかしくないのです。データも取らねばなりませんが逆にお披露目のチャンスでもあります。既に他のスポンサー方の了承は得ています。なので、これは私の……いえ、結社の決定ですよ」


「そんな‼ あれはまだ安定性に欠けます‼ これでは何が起こるか分からない‼ それならば中止を」


ケイスケは焦っていた。自身の野望と計画を実行するためにこの組織でいろいろとやっていた彼であるが代表の皆月から下されたのは稼働を今すぐにやれと言われる無茶もいいところな要求だった。


「小規模な実験については成功させているのでしょう。何度も成功していることに対してその規模が大きくなある程度で恐れる事なんて何もないでしょうに。それに私たちの目的とするところもお金も時間も無限ではないのです。今回の結果が得られないことにはどうすることもできません」


「それは分かっていますが規模が大きくなって失敗するという可能性はあります。それが原因で最終的にどちらかの世界もしくは両方の世界が崩壊してしまってもですか?」


 ケイスケは険しい顔をして皆月をにらむ。それに対して涼しい顔で皆月は言った。


「とは言ってもそんなことが起こり得るのはほとんどないんでしょう? その為の事前の小規模実験なのですし。報告にも実行して問題ないとのことだったが? 君のそれはいささか恐れすぎではないのかい?」


 ケイスケが危惧していることは0.1%程の最悪のケースである。それでも自らが発案したこの実験に関しては安全を期したいのかケイスケは言った。


「それでもです。仮に入念に準備したとしても世界と世界の境界を繋ぐんです。これで成功したとしても何らかの影響は絶対に出るんですよ。もしもの時のために入念に準備しておくのは当たり前です」


「そうですか。それならば仕方ありませんね」


 ケイスケの意見を聞いた皆月は顎に手を当てて悩む仕草をする。世界の崩壊というリスクにその様子にケイスケは分かってくれたのかと胸をなでおろす。皆月は計画の変更のためにマイクを取り出して放送を流した。


「それでは異世界渡航のプランAを破棄します。そして、プランB異世界侵攻の実行準備を開始してください。そして、マテリアルKを捕縛して座標を導き出すのです。我々としてはどちらかの世界が残ってくれるのでしたら何も問題ないのですよ。知識は一方的に手に入るのならば」


「なっ‼」


 ケイスケ自身が知らない皆月たちの計画の一端に触れ一瞬思考が停止する。その隙を突いてか後ろからねっとりとした声が聞こえた。


「キヒヒヒ。悪いねぇ。これも仕事なんだわぁ」


 屋久島が右手を払いケイスケの首を飛ばす。普通であればそこから血が噴き出すような出来事であるが分離させた先からは血が出る気配はみじんにも感じられない。本来、手刀だけで首と体が分離することはない。


 しかし、屋久島の異能がそれを可能としていた。分離合成。それはあらゆる生き物を好きなように混ぜ合わせ組み合わせる能力である。可逆の能力であり元に戻すこともできる。無論、合成しすぎれば本人でも元に戻せなくなるし、抵抗が強ければ分離も合成もすることもできないというデメリットもある。そのために基本的に不意打ちでしかも分離だけしか屋久島は今のところ成功できていない。それでも相手の強さや硬さを無視して自由にできるというのは反則といっても過言では能力である。


「それではマテリアルKが発する魔力とやらと異世界への座標を直接脳から取り込んでしまいましょう。屋久島。彼の頭を機材へ」


「へいへい。分かってますよ」


 皆月に言われるがままに屋久島はケイスケの頭を乱雑に掴みあげて専用の機材へと放り投げる。


「もっと優しく扱ってください。まだエネルギーとしての価値があるのですよ」


 皆月は屋久島を軽く睨んでからすぐさまケイスケの頭を大量に繋がれた機械の中心へセットする。


「分かってますがこいつ、俺の可愛いキメラちゃんを見殺しにしたんすよ。せっかく作り出した合成獣シリーズの数少ない成功例なのに」


「含む物があるのは分かりますがこっちは雇い主なのですから指示には従ってください。っとそれでは皆さんはじめてください」


『マテリアルK接続完了を確認。情報抽出します』


 皆月の宣言と同時に機械音声がケイスケの頭から異世界の情報を抽出する。


『情報抽出完了。異世界への境界を開きます』


「さぁ‼ いよいよ異世界という未知の領域への扉が開かれるぞ‼ そして、我々は世界を制する者としての栄光が……」


 恍惚とした顔をして皆月は開かれる境界を見つめる。


「お楽しみの所済みませんが1ついいですかね?」


「はぁ。何ですか? 屋久島?」


 気分が乗ってきた皆月に水を差すかのように屋久島が話しかける。それに嫌そうな顔をするが空気を読まない屋久島はケイスケの身体を持ち上げる。


「この体いただけませんかね? 戦力になると思いますよこの体」


「そんな事いちいち聞かなくても勝手に持って行ってください。それよりも良く見てなさい。今、世界は異能という領域と共に異世界への境界を渡るという人類初の試みが幕を開けようとしている姿を」


 皆月は楽しそうに口を大きく歪めて狂気的な笑みを浮かべる。彼の目には誰も映ってはなく異世界の境界が開く光景だけしか映ってはいない。その規模はどんどんと大きくなっていきやがて空を突き抜け世界が繋がる。


 その様子に屋久島はやれやれと言った様子でケイスケの身体を持って出て行った。


「興味ありませんか……。残念です」


 屋久島が出て行く姿を視界の端に捕えてそう呟くと再び空を侵食する空間のを眺め続ける。しばらくすると侵入者用の警報が鳴り響き始めた。


「お客様が来たようですね。屋久島もKの身体を何かに使うと言っていましたがすぐに行動に移せるでしょう。それにお客様は盛大におもてなしをしませんとね」


 皆月は1人そう呟くと空間の接続に入った装置が世界と世界をつなぐのを見るために用意した特等席に座った。


いつも読んで下さりありがとうございます。

感想、批評、指摘、ブックマークしてくれるとうれしいです。

これからもよろしくお願いします。

来年もいい年になりますように。

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