結成‼ 魔王コンビ
授業終了後、早く帰るように言われたにもかかわらず馬皇は無言のまま屋上に向かった。本来ならば勝負をしない予定の日で関わらないのが基本であるが、今回に関して言えば自身の気持ちを折り曲げて真央だけに机から見えるように授業中にこっそりと手紙を置いた。内容は放課後に隠れて屋上に来てほしいということが書いてある。
馬皇が屋上に到着すると案の定鍵がかかっていた。見回りのために先生たちが一気に少なくなるためだ。馬皇は魔力を指先から実体化させ鍵の形を作る。魔力の扱いの応用である。鍵穴の中を魔力で見たすと小さな音が鳴った。そのまま魔力塊を回すと鍵の開く音がした。
魔力量は前世に比べると圧倒的に少なくなり業火はほんの少ししか出せない。しかし、魔力消費の少ない魔法であれば問題なく発動できることをあの勝負の後に1人でいろいろと試したのだ。あの時は記憶がよみがえって少ししか時間が経っていなかったこともあり、思い出していた魔法があれ1つで問題なく使えると思いやらかしてしまったが。今なら魔力を実体化させるのは問題なかった。
馬皇はドアを開くと下から見えない位置に座って真央を待つ。
「来たか」
しばらくすると、馬皇は1人そう言って扉の方を見る。そこから真央は同じように扉を開けて屋上に出てきた。
「待たせたわね」
ここにいるのがばれないように配慮しているのか、いつもより小さい声で馬皇の所に向かう。近くまで来ると馬皇の隣に腰を落とした。
「それで、何の用?」
真央は馬皇に言った。彼女は予想をつけてはいるが、あえて馬皇に問う。しばらくすると意を決したのか突然、馬皇は頭を下げる。いつもは敵だとか無乳だとか失礼なことばかり言う馬皇が、である。
「虫のいい話なのは分かっている。正直、出来れば俺一人で解決できるなら解決したい。だが、今の俺だと無理だ。だから、俺の友人を探すのを手伝ってくれ。喧嘩だってよくする。それに俺自体付き合いが悪いし変な奴だっていう自覚もある。だけど、何も言わず俺を受け入れてくれる。だから、助けたいんだ」
馬皇は思いの丈をぶつけた。言葉は正直に言うと取りまとめはない。しかし、ないなりに自分の思いを真央に伝える。そんな馬皇に真央は驚く。自分の友人のために簡単に頭下げる馬皇に。
「それで、私に何のメリットがあるの? 私ボッチらしいからわかんないわ」
正直に言えば、協力してもいいと真央は思っているが、素直になれないのか真央はそっぽを向く。その反応に馬皇から見てあまり乗り気ではなさそうな態度の真央に対して、もう1度頭を下げて頼み込む。
「頼む」
短い言葉。しかし、あまりにも真面目な態度の馬皇に真央は我慢できなくなり頭を掻き毟った。
「あぁ‼ もう‼ 頭を上げなさい‼ 気持ち悪い‼ いつものあんたらしくしなさい‼ そんなことしなくても手伝ってやるわよ‼」
真央の言葉に馬皇は感極まって真央に抱き着いた。
「ありがとう」
馬皇の唐突な行動に真央はいやそうに馬皇の中で暴れて罵る。
「もう‼ 離れなさい。このバカ、脳筋」
「お、おう。悪い」
馬皇は感極まってやらかしてしまった事に慌てて真央を離した。馬皇は顔を赤くしている。同じように顔を赤くしている真央は馬皇に言った。
「そのかわり貸し1だかんね」
その言葉に馬皇は言った。
「ああ。こっちから頼んでるんだそれぐらい問題ないぞ。……出来れば勝負に関係なく俺ができる範囲ならな」
馬皇は真央の言葉にうなずくと少しだけ間を開けて無茶な要求だけは避けてくれと最後に言った。
「そう♪ まあ、それでいいわ」
そんな様子の馬皇に対して上機嫌な笑顔を見せる真央。その笑顔を見て、馬皇は不覚にも可愛いと思ってしまう。そんなはずはないと頭を左右に振って正気に戻ると馬皇は右手を差し出す。真央もそれの意図を組んで右手を差し出した。
こうして二人の前世魔王はコンビを結成した。




