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あやかし商店街(参) 五

(やっぱり…面白がってたんだ…)


と内心思い、軽くため息を吐く真司。

菖蒲は瓢箪に入っている酒を杯に入れた。

酒は水のように透明で澄んでいた。

名の通りのお酒だな、と真司は思った。

菖蒲は、杯を口に付けコクリと喉を鳴らし酒を飲んだ。

そして、杯をテーブルに置いた。

勇は、どんな感想が来るのか緊張しているのだろうか?猫のくせに、器用にも正座をし背筋を伸ばして菖蒲の顔を見ていた。


居間に静寂が訪れる…。


(…う…な、何だか、僕まで緊張してきたよ…)


菖蒲が口を開いた。

「「!!!」」

いよいよ来る!と思い、真司までもが背筋を伸ばしていた。

白雪は、ニコニコと微笑みながら、再び眠っているお雪を膝の上に乗せ傍観していた。

「美味じゃ」

その一言で、真司と勇はホッと安心した。

「うむ。今年も美味ぞ。これならば、供えても問題なかろう。あやつも喜ぶ」

「よかったです!」

「はぁ~…僕まで緊張したよ…」

「ふふふ」

勇は、スクっと立ち上がると、瓢箪を菖蒲から受け取り再び首に掛けた。

「では、予定通り進めていきたいと思います。失礼します」

丁寧にもお辞儀をする勇。

「うむ。気をつけて帰るのだぞ」

「はいっ!」

元気良く返事をする勇は、居間を出て行った。

真司は勇を見送る為に、店の入口まで着いて行った。

「人間、世話になったな」

「いえ、僕は何もしていないので」

「いやいや、俺が知る限り、菖蒲様も相当お変わりになられたぞ。きっと、その変化は人間…お前の存在やろうな」

「は、はぁ…」

「ま、それはええわ。ほなな~人間」

そう言うと、勇は四つん這いになり、颯爽と去って行ったのだった。

真司は勇の背中を見送りながら、ふと、思った。


(菖蒲さんって、昔からあんな感じじゃなかったのかな…?)



―翌日



真司は家族と一緒に、東大阪よりもっと東にある高槻市(たかつきし)に来ていた。

「初めて来たけど、何か風流があるって感じだなぁ」

そう、着いた先は真司の地元より緑が多く、年期の入った建物が沢山あった。

家族と離れて、少し辺りを散歩していると横の小さな隙間から猫が通り過ぎた。


(ん?)


真司は、通り過ぎた猫を見た。

その猫は、黒と白のぶち猫で背中に大きく"酒"と書かれた法被(はっぴ)を着ていた。

何だか、例の猫又こと勇を思い出した真司は、その猫の後を追ったのだった。


・・・・・

・・・・・


後を追った真司が着いた場所は、先程居た場所より少し今風の家が並んでいた。

猫は、その中の綺麗な洋風の家の前に来ると足を止めて上を見上げていた。

「???」

真司も、つられて上を見上げた。

すると、見上げた先は窓だった。

「窓??」

真司は眼鏡をクイッと上げて、目を凝らした。


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