あやかし商店街(参) 壱
季節は冬真っ只中である。
大阪堺市は、雪自体は積もっていないが、時たまチラチラと降っていた。
しかし、あやかし商店街は不思議な事に、雪が積もっていたのである。
「わーい!雪だるまー!雪うさぎー!雪ジバニャーン!」
と、雪兎の刺繍が入った真っ白な着物を着ている付喪神ことお雪は、骨董屋の庭でキャッキャと遊んでいた。
「こら、雪芽。そんなにはしゃいでいたら転ぶわよ?」
お雪と一緒に遊んであげているのは、お雪の姉でもあり母でもある雪女の白雪である。
「相変わらず元気じゃのぉ」
「ははは、そうですね」
それを炬燵に入って温かく見守っていのが、妖が見える瞳を持ち、骨董屋でバイトをしている宮前真司。
普段の真司は、学校終わりに商店街へと来ているので学ラン姿だが、今は冬休み中なのでチェック柄のチノパンに、ニットのパーカーという全体的に落ち着いた雰囲気の私服姿だった。
そして、同じく真司の隣に座っているのが、この骨董屋の店主でもある菖蒲である。
黒の生地に、菖蒲色の双葉模様があちこちと散らばっている着物に銀色の帯を締めていた。
帯留の中央には黒の花が小さく咲いている。
そして、やはり寒いのか若紫色の薄い羽織を着ていた。
真司は茶を啜る菖蒲を見た。
「そう言えば、どうしてこっちは雪が積もっているんですか?」
と菖蒲に言った。
「ふむ。この商店街は同じ次元にあって、別の次元にあるからのぉ」
呑気に答える菖蒲に、真司は首を傾げた。
「同じ次元であって、別の次元ですか??」
「うむ。この説明は難しいのぉ〜」
「はぁ」
と、まったりと言う菖蒲を見て、曖昧に返事をする真司であった。