あやかし商店街(参ノ伍) 参
「猫又の里ですか?」
「うむ。ここと同じように、昔は猫又だけの里があったのじゃ。そこに行けば、猫又にもなれると言われておる」
勇は、コクリと頷いた。
「そや。老いた俺はな、何とかして猫又の里を見つけて、長老様に修行を頼んだんや。」
「それで、猫又に?」
「ま、そやな。妖怪になってからは、若返るようにもなったし、体も軽いし!万々歳や!!」
「でも、よく、家の人に気づかれずに暮らせましたね」
「真司や。勇の家中らは知っとるんやえ。勇が妖怪であることにの」
「え?!」
「いやな、本人ら曰く…」
《あまりにも長生きし過ぎているしなぁ、ははは》
《親父も、勇は普通の猫じゃないって小さい頃、よう言ってたからな》
《お前も年老いてたし、最期となって、ついに家を出たかと思ったら、そりゃぁビックリしたわ。お前が元気になって帰ってきやがったからなぁ》
《古い写真にも、いつも勇が写っていたしなぁ》
「だとさ。やから、石井家のもんは、全員知っとるなぁ」
真司はまたもや唖然とした。
「ちょ、ちょっと待って下さい!え?!知っている?!み、皆さん…その…勇さんの家の人達は恐がらなかったんですか?!」
菖蒲はクスクスも笑った。
「恐がるも何も、あそこのもんは皆、それでも勇を家族として、また、酒の神として称えとる。」
「…………」
「因みに、この商店街の事も菖蒲様の事も知っとるよ」
「え?!」
「うむ。勇に会ったのは確か…明治から大正にかけてじゃったかな?それ以降、あそこの酒には御贔屓にさせてもらっていてのぉ〜。あのひょろっとした坊が今じゃ立派に子孫を残して…。時が流れるのは早いのぉ」
真司は、眼鏡を少し上げてこめかみを軽く揉んだ。
(うぅ…何だかんだ、頭が痛くなってきた…)
すると、突然、勇やルナ以外の猫の鳴き声が聞こえ始めた。
―にゃーにゃーにゃーにゃー
勇は、甚平の袖口から携帯を取り出した。
どうやら、猫の鳴き声は携帯の着信音だったみたいだ。
(いやいや!そんなことより、猫が携帯?!)
勇は器用に爪でボタンをポチッと押した。
「もしもし〜。おぉ、清太郎か!どないしたん?ん?あぁ、わかった。ほな、直ぐ戻るわぁ」
「…………猫が携帯…」
ポチッとまたボタンを押すと、勇は真司と菖蒲を見た。
「ほな、俺は酒蔵に戻らなあかんから、これでおいとましますわ」
「うむ。気をつけて帰るのじゃぞ」
「人間…あー……えっと…真司はんも有難うな」
勇は、少し恥ずかしそうに頬をかいて真司な礼を言った。
真司は、初めて名前を呼ばれたのと礼を言われたので、同じく何だか恥ずかしくなって頬をかいた。
「い、いえ。僕は何もしてないですし」
「いやいや、そんなことあらへんて。ほな、白雪様もお雪はんも星はんもこれで失礼します」
勇は、ペコリとお辞儀をすると、庭に出て颯爽と走って行ったのだった。
お雪は少し残念そうに
「いっちゃったぁ………抱っこ…」
と言った。
白雪は、ふふふと笑いながら、そんなお雪の頭を撫で、星とルナは眠いのか同時に欠伸をしたのだった。
「なんだか、色々あったなぁ」
勇が消えて急に静かになったので、真司はボソリと呟いた。
その呟きが、菖蒲に聞こえたのか菖蒲はクスクスと笑っていた。
「それは良い事じゃな。真司や」
「はい?」
「これから、まだまだ色んな出会いがある故、その縁を断ち切ってはならんえ?」
真司は菖蒲の言葉に少しポカンとしたが、自分でもそう思ったのか、ニコリと微笑んで
「はい」
と言ったのだった。
『恋愛がなんや!俺は、酒に生きるでぇぇぇぇぇぇ!!にゃはははは!!』
(終)
next story→あかしや橋のあやかし商店街(四)
【次回】
ついにクリスマス目前!!
あやかし商店街は、相変わらず賑やかだが‥‥おや?どうやら、ある妖しだけ雲行きが怪しいようだ。
次回のあかしや橋のあやかし商店街(四)は、妖同士の甘い対決...?!
次回も新規投稿でお届けします。お楽しみに。




