あやかし商店街(参) 十四
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そして、菖蒲と真司•勇は美希の家を出て、例の公園へとやってきた。
空は薄らとオレンジ色になっていて、公園も誰も居なくて静かだった。
勇は、まだ真司の腕の中で硬直していた。
「お前さん。こりゃ、勇」
菖蒲に名を呼ばれハッとした勇。
「は、はいっ!」
「ふむ。ようやく戻って来たか。お前さん、一体、何をそんな固まっておったのだ?」
すると、勇は案の定目に涙を溜めて泣き始めた。
無論、急な号泣で菖蒲も真司も驚いている。
「うわぁぁぁぁぁん!!あの美猫!!あの美猫ぉぉぉぉ!!男やったんやぁぁぁぁぁ!!」
その言葉に、キョトンとしながら数回瞬きをする菖蒲と
(あ〜…やつぱり…)
と思う真司。
「勇や…それは、誠…なのかえ?」
「うぅ…ぐず…はい…」
「こりゃぁ、驚いた。まさか、オス猫やったとわねぇ」
頬に手を添え驚くというより、しみじみする菖蒲。
「僕は…何となく予想はしてましたけど…あはは」
「それは、ほんまかえ?!」
「え、はい。」
「どないじて、わがっだんや?…ぐず…」
「あ、あはは…とりあえず、はい、ちり紙。」
「ありがどうな…」
チーーン!と鼻をかむ勇。
「えっと。まず、名前からにして可笑しいと思って。女の子にボルサノなんて名前付けないですよ、普通。…た、多分ですけど」
「しかしや人間。普通は気づくはずやのに、菖蒲様も気づかんかってんで?」
「うむ。オス猫とは思わんかったのぉ」
真司は、空を見て少し考えた。
「うーん…。多分ですけど、あの猫は早い段階で……あー…その…」
言葉を濁す真司に勇は
「なんやねん。はよ言えや」
と、手をバシバシと真司の腹を叩いたのだった。
「き、去勢してたんだったと思います」
その言葉に、勇は恐ろしい言葉を聞いたかのように自分の股間を押さえ
「ひぃっ!!」と毛を逆立てて恐怖した。
菖蒲は、納得したかのように頷いた。
「ふむ。それでか。」
「だから、うーん。なんて言うのかな?中性的?に見えたのかも。」
「……うぅ……俺の初恋…」
また、ぐずり出す勇に菖蒲と真司はお互い顔を見て勇の小さな肩に手をポンッと置いて
「「どんまい」」
と言ったのだった。
「俺の初恋を返せぇぇぇぇぇぇぇ!!」
薄らとオレンジ色に染まる空の中、木霊するかのように叫ぶ勇にであった。
END
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