表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/18

あやかし商店街(参) 十参

「どうぞー」

美希は、茶菓子をテーブルに置くと、丁寧な仕草で真司の前に紅茶の入った白いカップを置いた。

「有難う」

真司は微笑みながら言った。

「うん♪」

菖蒲も早速茶を手に取ると、茶を啜った。

そして、何故だか菖蒲だけは湯呑で日本茶だった。

美希は菖蒲と真司の前のソファーに座ると、勇を膝の上に乗せキラキラした目で菖蒲を見た。

「ねぇねぇ!怪我が治ったのってお姉ちゃんの魔法なん?」

菖蒲はゆっくりと湯呑を置いた。

そして、人差し指を口元に当てニヤリと笑った。

「秘密じゃぞ?」

その言葉に、女の子は更に目をキラキラと輝かせた。

「すごーい♪お姉ちゃんは、魔法使いなんやね!!」

「ふふふ」

「あははは…」

と、苦笑する真司。

「みゃー」

と、美希の膝の上に乗っている勇が泣いた。

美希は思い出したかのように、ハッとした。

「そうやった!ボルサノ!!お姉ちゃん達、ボルサノはこっちやよ」

そう言うと、勇を胸に抱き美希はリビングを出た。

菖蒲と真司は、お互い目を合わせるとコクリと頷いた。

そして、二人は美希の部屋へと向かったのだった。



―ガチャ


「ここが、うちの部屋やよ」

美希の部屋に着くと、勇は美希の腕からストンと降りて、窓際のボルサノの傍に寄った。

「みゃー」

と、勇は照れくさそうに鳴いた。

すると、寝ていたボルサノの片耳がピクリと動いた。

そして、勇を認識すると

「みゃー」

と鳴いた。

その一鳴きに、勇は硬直してしまったのだった。

ボルサノはゆっくり起き上がると、勇の体に頭をすり寄せた。

「みゃーみゃー」

それを傍から見ていた美希は嬉しそうな顔をした。

「すっかり仲良しさんやね♪」

真司は、菖蒲の袖をチョンっと引っ張った。

すると、菖蒲は察したのか、真司の顔に耳元を近づけた。

その近さ、微かに匂う甘い花の匂いに、真司は内心ドキッとした。

「え、えっと…その…何だか、勇さん固まってませんか?」

何だか気恥ずかしくなったのか、ちょっぴり俯き気味でコソコソと喋る真司。

「うむ。猫語の事は、よう分からんが、緊張でもしてるかもしれんのぉ」

「だといいんですが……」

チラッと真司は勇を見た。

すると、勇はぎこちない動きで真司を見ると、真っ青な顔をして真司に飛びかかったのだ。

「うわっ!!」

真司は急に飛びかかって来た勇に驚き、勇を落とさないように抱き抱えた。

そして、小声で勇に話しかけた。

「どうしたの?」

「緊張でもしたかえ?」

勇は勢いよく頭を横に振った。

…どうやら違うらしい。

「ボルサノ、おいで〜」

「にゃー」

美希はボルサノをヒョイッと抱き抱えると、真司と菖蒲なボルサノを紹介した。

「この黒猫が、私のお友達で家族のボルサノやよ♪」

「ふむふむ。綺麗な毛並みじゃなのぉ〜」

ボルサノの顎を撫でる菖蒲。

「にゃー」

気持ちよさそうにするボルサノと反対に、真司に抱き抱えられている勇はプルプルと震えていた。

「ふふふ。何とも人懐っこい猫じゃ」

ボルサノは菖蒲の手に頬をスリ寄せたり、ペロペロと舐めていた。

「可愛いですね」

「うむ」

ボルサノは勇の事が気になるのだろうか、勇に近づこうと顔を近づけた。

勇はビックリしたかのように、毛を逆立てた。

美希は、そんなボルサノの事は気にぜず、ずっとニコニコ笑ってボルサノの腹を撫でた。

「もふもふ〜」

勇は真司の服をクイッと引っ張った。

「ん?どうしたの?」

真司は勇が何かを言おうとしているので、勇の顔に耳元を近づけた。

「は、はははよ帰ろう!今すぐ帰ろう!ていうか、帰りたいっ」

「え?どうして?」

「え、ええから、帰るんや!」

真っ青な顔をして慌てている勇に真司は「わかった」と言って、菖蒲に声をかけた。

「菖蒲さん…勇さんが」

菖蒲はそんな勇と真司を見て、軽く頷いた。

「うむ。美希よ。来たばかりで申し訳あらへんが、私らは、そろそろおいとまするよ」

「えー、もう?」

「ごめんね?どうも、猫の調子が悪いみたいだから」

真司はその場逃れの嘘をつき、美希の頭を優しく撫でた。

すると、菖蒲も美希の視線に合わせるようにして少し(かが)んだ。

「すまんの」

美希は少し頬を膨らませていたが、菖蒲を見るとニコリと笑った。

「ううん。猫さんの調子が悪いなら仕方ないよ。また、遊びに来てくれる?お姉ちゃん」

「うむ」


(…あれ?僕は?)


「お兄ちゃんも来てくれる?」

「え?!あ、うん!」

真司は、もしかして自分は忘れられてる?と思い苦笑したが、どうやらそうでもなくて心無しホッとしたのだった。


(それにしても、菖蒲さんって、やっぱり子供でも人気なんだなぁ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ