僕のきもち
専門学校の授業が終わると、僕には必ず向かう場所がある。一人で暮らしているアパートと学校の間に位置するコンビニエンスストアだ。
お目当ての代物は、週の始まりに発行される漫画雑誌。
高校時代は、必ず買ってくる同級生に読ませてもらっていたけれど、その同級生とは別々の道を辿っている。自分で買わなくても楽しく読めていたことが、とても恵まれていた環境だったのだと今になって思い知った。
桜が舞う四月。入学したばかりの僕のクラスに、昔からの知り合いはいない。
県外に進学したという理由もあるけれど、同じ専門学校に進む同郷の変わり者は皆無だったということだ。
一話完結の話ばかりなら未練はないが、週刊の漫画雑誌は毎週買わせるように物語が作られている。
起承転結でいえば、必ず転で次週に続くのだ。先が気にならないはずがない。
月刊で発行する漫画雑誌に比べて一冊の値段は安いけれど、ひと月分に換算すると苦学生には出し渋ってしまう金額になる。
だから毎週、僕はコンビニエンスストアへ立ち読みに行くのだ。
自転車を自転車置き場に停め、ドアを引いて中に入る。
店員の「いらっしゃいませ」という声に罪悪感を覚えながら、他の場所には目もくれず、雑誌が陳列されている窓際に体を向けた。
「あれ?」
いつも漫画雑誌の周辺にできている男子の群れが、今日はない。
疑問に思いつつ歩を進めると、違和感は他にもあった。
山積みになっているはずの漫画雑誌が、どこにもない。
心臓が、ドクリと嫌な音を立てる。
マジかよ。今週号を読まなかったら、次週からわけが分からなくなってしまう。
一冊や二冊は残っていないだろうかと、女性誌や男性誌、経済誌の間を隈なく探す。
アダルトコーナーに目を向けて、いやいや……あるはずがないじゃないか、と自分に言い聞かせた。
「そんな……」
どこにもない。
雑誌コーナーの前で立ち尽くしていると、トイレに向かう店員が擦れ違いざまに告げる。
「週刊少年ジャ○プなら、先週土曜に発売ですよ」
「先週の……土曜日?」
そんなまさか。
店員の気配が消えた頃、カバンの中から手帳を取り出して日付を確認する。
「しくった」
昨日の月曜日は祝日だった。そして今日は火曜日だ。
月曜日が祝日のとき、僕が楽しみにしている漫画雑誌は、店員が言った通り先週の土曜日に発売する。三日も四日も経った今日、コンビニに置いてあるほうが奇跡に近い。
さらに由々しき事態に僕は気付く。
適切な助言をくれた店員に、毎週読みにくる人だと認識されてしまっているということ。
どうしよう……恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
ああ、しょうがない。
顔が割れているのに、なにも買わずに立ち去る勇気がない僕は、飲み物でも買って本屋に行こう。
肩を落とす僕の背後に佇む気配に気付いたけれど、それが誰なのか確認する元気は残されていなかった。
仲間内で書いているお題作品です。
今回のお題が『コンビニ』でした。