反動力
これは先日あげた強制力の別視点での後日談となっています。
あくまで私が描いたらこうなったと言う話ですので、これはこれとして楽しんで頂ければと思います。
大好きだった乙女ゲームの主人公に転生したと喜んだのは1年前。
最初は本当にゲームの世界に転生したんだと思えて、それはそれは喜んで調子に乗りまくったのだけど。
「こんなのってないよ」
今日はゲームで言う最終日に当たる最終学年の方々の卒業式だったのだけど。
私の意思を無視して何故か攻略キャラの皆と付き合ってもいいみたいな、所謂逆ハーエンドに限りなく近い終わり方をしてしまった。
私は誰とも付き合いません! と言っても殆ど聞いてもらえず。気持ちの整理をして下さいとか訳の分からない事を言われる始末だし。
ぶっちゃけ全く嬉しくない。
と言うか、なんでそんな状況なのに誰も非難したりしないの?
あくまでもゲームと同じようにちやほやされても……私は私だよ? ゲームの主人公とは違う人間なのよ?
あるきっかけでそういつも口にしていたのに……それを信じて応援してくれていたのはきっかけだった1人の私の大好きな、大好きなあの人だけ。
でも、あの人は私のせいで……私が最初に逆ハーとかゲームの世界でならやっても良いよね、と軽はずみに行動してしまったせいで学園を追放されてしまった。
正直後悔しかない。
私が慎重に行動するなり、取り敢えず様子を見るなりすればきっと防げた事で……、たらればを考えてもしょうがないよ、これから挽回すれば良いじゃないとあの人がずっと言ってくれていたのだけど、でもやっぱり考えてしまう。
「挽回だって出来なかった訳だし……」
私に出来た事と言えば、抗いまくって何とか婚約と言う形ではなくしたこと。
こんなのじゃ抗えたとか、口が裂けても言える訳ない。
しかも、この結果だってあの人に助けてもらえたから成し得た事だから。
あの人が実家も追い出され、深い怪我を負って、でも何とか命は大丈夫で匿われているとあの人を愛してやまない皆様から教えて頂いてもらって。
同時に、実は不穏分子となる私の暗殺等が提案されていたのだけど、あの方がその全てを抑えて助けて下さった事も伝えられ。
……ははは、結局私はあの人に助けて貰ってばかりで。
伝えられた瞬間寧ろ死にたいなんて考えて、そんな私に伝言に来ていた先輩が、最後に死にたいとか思わないで、きっと頑張れば上手く行くから。私も頑張るから貴方も頑張って、で、皆で幸せになりましょうと言うあの人の言葉を伝えられて。ああ、絶対叶わないなって思った。
「そう、まだ諦めるには早いよね。
寧ろここからが本番じゃない。
ゲーム期間が終われば少しは変わっている……筈……」
一切確証が無い事に縋るように口にする。
いな、もう私にはそれに縋るしかない。
……それに縋らなきゃ今度こそあの人にただただおんぶに抱っこされるだけになってしまうから。
ぐちゃぐちゃで荒れる心を持て余しつつも、明日からが勝負と早目にベッドに潜り込んで……でも、結局眠れる訳もなかった。
寝ずに1夜を過ごしてしまったのだけど、ああ、朝日が上がってきちゃったな何て思っていると聞こえてくる異口同音の叫び。
それに釣られるように叫び声はドンドン増えて行ってって、さ、流石にこれって異常事態?
「み、皆様奇声を上げてどうしたのかしら?」
これは流石に初めてで、と言うか想定外すぎるでしょ!
取り敢えず身嗜みを最低限整えて外に出ると……うわぁ、なにこれ?
ネグリジェ等寝る為の服装のまま慌ただしくその辺りを駆け巡る皆さん。
と言うか、え? ほんとなにこれ? 大声をただただ上げて中には泣いていらっしゃったりする方もいるのだけど、何がどうなっているの?
「皆、落ち着け!」
と、一際通る声が響き、秩序が戻ってくる。
その声の主の王太子殿下ってうわぁ、殿下も寝巻き姿じゃないですか……。
しかも表情とんでもなく険しいし。
「……どうやら私達はこの1年間ほどおかしくなっていたようだ。
多分皆分かっていると思うが、我々は取り返しの付かない事をしてしまっている。
何をすべきか話すべきだろう、が!
兎も角皆着替えて少しだけ落ち着こう」
その言葉を受けて、初めて自分の姿に気づきました! と言うように恥じらいを見せる皆様。
と言うか、本当に今更すぎるのだけど……。
っと、この辺りは落ち着いたようだけど、まだまだ叫び声が……って、これ全校生徒が発しているの?
そりゃぁまるで地響きが起こったかと錯覚するようにうるさくなる訳だ。
はっ、と気づいて殿下へと視線を戻したら既に殿下は居なくて……。
えっと、あの人の元の評価って確か全ての人が愛さずにはいられないとか、学園どころか国でもっとも尊い人とかだったっけ?
その状況を話でしか知らない私だけど……確か大精霊様に、しかも複数に愛されている時点で国王なんかよりも遥かに地位が上になるとかだっけ?
何故かゲーム期間から見当たらなくなってってダメだ、混乱して思考が無茶苦茶だ。
「わ、私も取り敢えず落ち着いて少し整理しよう」
そう意識して呟いて、いったん自室に戻るのだった。
それから1ヶ月。あまりの変わりように最近やっと慣れる事が出来ました。
と言うか、変わりすぎです。
元あの方の部屋は皆の懺悔部屋のようになっているし……何がどうなっているのでしょう。
お話も色々お聞きしたのですが、曰く自分の意思があるのに遠くから意思に反する言動をする自分をずっと強制的に眺めさせられてた。と言うのが総意な感じで、これが強制力と言うか世界の修正力と言うか、そんなものだったのかなぁ?
神様とかどうやら実在してその力をも見る事が出来る世界のようですし、そう言う存在の力が作用したのか。
そういう世界だから世界の力でこうなってしまったのか。
ともかく、今では状況はとても好転できて……いえ、それは私だけかもしれません。
あの人の事を想って必死に動いていたのが学園内外問わず物凄く評価されて、私だけは何のバツも受けていないと言うか。
でも、皆様の落ち込み様やら押さえつけられていた外の有力者の皆様の圧力やらなんやら、色々と揉めてまして……ただ、今はもう私の言う事を皆様が聞いて下さるので亀のような歩みですけど自分の目指す景色へと歩めている。
そんな気がします。
そうそう、私への評価も変わりすぎだと思います。
と言うか、周りの方の話を黙って聞いているとあの人は女神のよう……なのは同意出来るので良いのですが、何故あの人の為に働きたい! なんて行動している私利私欲に満ちた私があの方の使いみたいな評価を得ているのでしょう。
否定したら謙遜も過ぎれば嫌味ですよ何て怒られてしまいますし。
実は最近で一番の悩みと不満だったりします。
まぁ、色々便利だと打算的な私が思っている部分も事実ですけど……だから本当に皆様が言うように心が綺麗とかないですって。
本当に恥ずかしい。
「しかし、マリアンヌ様はお元気でしょうか?」
「はい、元気ですよ!」
ああ、いけません。
あまりにお会いしたくてあの人のお名前を呟けば幻聴までって、ええええええええ!?
「ま、マリアンヌ様!」
「あぅ、そんなに見つめないで下さいませ。
と言うか、皆下ろして、恥ずかしい!
その、転移してくれた事もリリアンヌ様に会わせてくれた事も感謝しているのだけど、これは恥ずかしいよぉ」
やばい、照れているマリアンヌ様萌え!
じゃなくて!
何色にも光り輝いて宙に浮いていらっしゃるお姿が神々し過ぎて。
あ、こりゃ確かに世界でもっとも可憐で尊いお方だって言われるのも納得。
1大精霊でこの国くらい軽く滅亡させうる力を持っているとか色々納得だけど、そんな細かな事はどうでもよくて。
やっぱりマリアンヌ様お美しい。
確かにパッと見の容姿は現世の私も遜色ないかもだけど、滲み出る物がだんちだわ。
マリアンヌ様に匹敵しますとか戯言言った奴らに見せつけてやらないと。
なんて内心でいつまでも暴走していても仕方ないので、可愛らしく精霊様達にご注意を促すマリアンヌ様へと口を開く。
「あの、えっと、お会い出来て凄く嬉しいです!
お元気そうで何よりですけど……その、大丈夫なんです?」
何とか床に足を付けたマリアンヌ様に聞いてみると、満面の笑みで近寄ってくれます。
わぁ、ハグですか。凄くいい匂いだし柔らかいし、何と言うご褒美私今まで以上に頑張れそうです!
「はい、私も嬉しいです。
あ、でですね、その色々こちらもゴタゴタと言うか皆が私にベッタリになった後はっとしてブチギレまくったと言いますか。
本当はですね、もっと早く来るつもりだったんです」
「え? え? ま、マリアンヌ様?」
待って下さい、ちょっと私置いてきぼりになってますぅぅぅ。
「本当に遅くなってすみませんでした。
えっと、取り敢えず問題はほぼ解決したみたいです。
色々端折って言いますけど、この子達が原因と言うか大元の1柱様をフルボッコにして土下座させて事なきを得て。
で、実は怪我の影響で私腕が動かなくなって――」
「うぇぇええええええ? 腕が?
って、動いてますよね?」
「はい、皆が自分達の罪のせいだからと私が望むまで放置するつもりだったのだけど、あの馬鹿のせいだからすぐに治すと聞かなくて、治されちゃいました。
この子達が力使うと色々影響出るので心配だったのですけど、案の定一面のお花畑とか突然出来ちゃいましたし。
私が絡むと皆張り切りすぎちゃうって、これは良くてですね」
おおう、マリアンヌ様もだいぶ舞い上がっていらっしゃるな。
これが私のせいだとすると……どうしよう、凄く嬉しい。
と言うか、戦友みたいな感覚もあるからね、そりゃぁきっと今では1番の親友同士と言う自負があるわ。
他の方々には申し訳ないけど。へへん。
「はぁ、凄いのですね」
取り敢えず口では当たり障りのなさそうな事を言っておく。
まぁ、そんな精霊様方が一切頭の上がらない存在なマリアンヌ様が1番凄いのは確定的なのですけどね。
「あ、で、それで色々この子達とも話していたのですけど、リリアンヌ様に皆が加護を授けるそうです」
「加護ですか……うえええええ? しかも皆様ですか?」
「はい! 1番私が苦しんでいる時に支えて下さったご褒美だそうですよ。
私としてもリリアンヌ様に少しでもお返しが出来て嬉しい限りです。
ふふふ、多分私は今後色々行動が不自由になってしまいそうですけど、でもリリアンヌ様とはいつでも会えますね……。
ごめんなさい、そんな打算もありましたの……許して下さいます?」
「はい、光栄の極みと言うか嬉しい限りです!
が、でも私如きが1つの加護で歴史書に乗るような大精霊様から幾つもって、ああああ、これ今無断で加護付けましたよね!
急に見えるようになりましたもん、精霊様方が。
ああああ、お1人で……あれ? 1人とかで良いのかしら?
と、兎も角1つで十分ですよって言おうと思いましたのにぃー」
「諦めてください」
「はうぅん、笑顔が素敵です」
にゃー、もう嬉しいからどうでもいいや!
マリアンヌ様も満面の笑みだし良いよね!
……なんか私もマリアンヌ様もただ開き直っているようにしか見えないけど、たぶんきっと気のせいね。
後日2人で頭を抱えて……あ、でも2人なら別にいいか。
うん、何の問題もなしっと。
って、考え事しているうちにまたマリアンヌ様が浮いていら……ああああ、私も!
「ま、マリアンヌ様。一体これからえ? 浮いて? ちょっ。どうなるのです?」
慌てすぎて支離滅裂な私。
と、素敵に微笑んで下さったマリアンヌ様が今度は開き直った感じではなく、意志の強い光を瞳に宿して……私の大好きな顔でこうおっしゃいます。
「この国を救いに行きます」
次の瞬間、何故かひれ伏した皆様……って、王族貴族の主要メンバーほぼ全てじゃないでしょうか!
って、色々浮いていらっしゃるの精霊様の分身ですよね……何でもありなんだなぁ……。
と、マリアンヌ様を見ればニコニコと微笑んでいらっしゃって。きっとお任せして後は大丈夫だと確信しました。
うん、いつかお話した通り2人で最高のハッピーエンドへと導きましょうね!
前書きでも書きましたが、これはこれ、そして皆様が色々想像したそれぞれの結末、その全てが正解だと私は思っています。
私の書いたこれが全てではありません。
あくまであの短編から導き出される数ある後日談の1つとお考え下さいませ。
と言いますのも、この短編でも実は盛り込んでしまいましたが、色んな結末を想像するのって楽しいと私は思うのです。
なので、皆様もどうぞ色々と想像して、そして楽しんで頂ければと思います。
そんな思いもありましたので、本当はこの短編は書く予定ではなかったのですが。
すみません、私皆様に読まれたり評価されたり感想頂いたいすると物凄く嬉しくてすぐこう言う事をしてしまうのです、単純ですから。
いや、本当に感謝感激で、少しでもそのお返しになっていれば嬉しいなぁって思います。
この1アンサーはあくまでも全てが大ハッピーエンドへと導く為の布石だと思って頂ければと思います。
例えばの話ですが、殿下とはどうなるの? 実際どのくらいの範囲で強制力は及んでいたの? サイファとは? 原作主人公の今後は? など色々あるかと思いますが。
ええ、是非色々妄想して頂ければなと思います。
私は既に設定した1つの答えは持っておりますが……実は自分の作品の癖にそんなのかんけーねー! とばかりに色んな展開を想像しては楽しんでいたりします。
物によっては皆また苦しみに立ち向かったり、また別の想像ではただただラブコメに勤しんだり、はたまた急転直下ファンタジー戦記物みたいな妄想をしてみたりと。
こうやって口に出してしまう事は実力不足の現れだと思いますが。
本当に物語を楽しむのは無限に広がっていると思うのです。
な訳で、今回も前回に引き続き物足りない! でも心地よいを目指したつもりです。
……前回よりもまとまってなかったり、オチが弱い気もしますけど……その辺りの判断も各読者様の自由でありまた楽しみであると考えていますので、自由に捉えて頂ければと思います。
……後書きが凄く長くなってしまいましたが、つまりは私の作品を読んで少しでも楽しんで頂けたのでしたら、私としてはこれ以上の幸せはありません。
なので、最後にこと言葉を贈らせて頂きたいと思います。
ご閲覧誠にありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けたのでしたら嬉しいです。
それでは、また連載の方か短編の方でお会い出来ましたら幸せです。
長々と最後までお付き合いありがとうございました!