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イジメってさ。

 勝てない。なんどやっても、勝てない。


(なんで勝てないんだ!)

俺は、自棄になっていた。

 ここは、俺の部屋。今は朝。


 おれの悲しい苦しみは昨日の晩からのものだった。


昨日、雛の家から俺の家へ帰りながら、ゲームをしていた。

 つぎのゲームクリアでランクが11になる筈だった。

だが……勝てなかった。


「負けました。 コンティニューしますか?」

皮肉なゲームの画面表示。


 コンティニューするためには、金がいる。  勿論、現金だ。だから、俺はコンティニュー出来ない。

 初回限定のゲームの中で使える金は、とっくにコンティニューに費やした。


 あぁああああああああああああああああ!

と、怒鳴りたくなる。


でも、そんな近所迷惑なことはできない。

 母さんは、ただでさえ鬱気味なのに、これ以上に俺が原因でこじらせたくない。

 それにしても、この俺が勝てないボス。誰かに似ていた。……ゴリラみたいな奴。

 そうだ! 中西剛だ!


 中西剛は、俺の先輩だ。


「暴力不良」って名でここらの地域に知られている。

俺も、何回か喧嘩になったことがある。どうにか逃げることができたが、本当危ない奴だ。


 そんで、こいつはゴリラに似ている。 とにかく、ゴリラ。体型が大きくて、筋肉ムキムキ。見ているだけで、暑苦しい。


 そんなことを思いながら、時計を確認。

(あ、ヤバイ)

 時計の針は8:30 を指していた。




 俺は、慌てて学校に行く準備をする。


 朝ご飯、食べてない。最悪だが、そんなことにこだわる暇がない。顔は、とりあえず適当に早く洗い、歯磨きは適当に、歯を歯ブラシで一回なぞりする。


 そして、下におりていく。

「…………」

 母さんは、リビングで音楽を聞いているらしい。


 俺は、ダイニングルームにそっと入る。俺の分の朝ご飯はなかった。そして、昼の弁当もなかった。


 俺の昼飯は、購買で買うしかなかった。

(朝ご飯は抜きにするしかないか)


「いってきます」と母さんに言ったあと、学校へと走った。多分、母さんには聞こえてないけど。


 学校に到着。授業まであと十分。

なんとか間に合った。慌てて教室に入る。

「あれ?」

その教室をみて、俺は驚愕した。

 俺の机が、ないのだ。

 教室を確認。 この教室は、確かに俺のクラス。


だけど、俺の机はなかった。一番後ろの窓側の席にある筈なのに。


 まわりを見回した。でも、ない。

「あれー? マコトくん、この学校やめてなかったのー?」

憎たらしい声がした。……中西剛だ。


(なんで、ここにいるんだよ)


 俺は、小さく舌打ちをした。だけど、それはあいつに聞こえていたらしい。

 ただでさえ強面のゴリラのような顔が、なおさら歪んで醜くなる。


「マコト君の机、どこにあるかなー? 探してみたらー?」


 醜い顔のまま、俺になめた口調で喋ってくるあいつ。

(俺が、あんな奴に屈したりするはずがない!)


 教室から出ようと踵を返す。

その時、誰かにぶつかった。


「?」


俺は、上を見上げる。

 その背の高い男性は、メガネをかけていた。

その上、色白。 なんか、弱そうな顔つきだ。

「あ、ごめん。 ねぇ、君はこのクラスの生徒かな?」


優しいが、どこか儚い笑顔で、彼は話しかけて来た。


「はい、そうです。 さよなら」

 俺は、彼の横から滑り出ようとした。




「え、いや、ちょっと待って」


 男性は、俺の手をつかんだ。


だが、その力は……とてつもなく弱かった。

(本当に男か、こいつ?)

拍子抜けしたが、すぐに腕を振り払う。


 そして、走り出す。

俺の向かう方向から、担任が歩いて来た。

(あれ? さっきのあいつ、 担任じゃねーの?)


 俺は、てっきりあの若い男性が新しい俺らのクラスの担任になるものだと思っていた。でも、担任は目の前にいる。


 どういうことか、頭が混乱する。だけど、深く考えるわけにはいかない。


 あまり考えていると、担任に捕まってしまうからだ。


 俺は、走って廊下の端の階段にむかう。

担任の驚いた顔が俺の横をすぎていった。

そして、俺は、階段を降りていく。

「よし、脱出成功」

 とりあえず、ガッツポーズ。

 そして、息を整えるために一旦立ち止まる。


それにしても、あいつは誰だ?

 あんなか弱い男の先生は、この学校にはいなかったはずだ。


 息がある程度整うと、今度は走らずに玄関から校庭へとでる。この学校の校庭は、他の学校と比べると、小さめだ。だから、校門まではあっという間。


 校門から外にでると、すごく安心した。不安が消える。


 空を見上げる。 昨日と同じ曇天の空だった。

でも、雲と雲の隙間から日光が覗いているのが、カーテンのようで綺麗で清々しかった。


 暫く歩くと、街に出た。


涼しい風が俺のほおを撫でる。


 この街は、すっかり寂れていて、居るのは年寄りばかり。若い奴はいないし、人気がなくて怖いくらいだ。




 その街を歩いていく。

並んでいる店は、殆ど閉まっている。

俺が幼い頃好きだった和菓子屋も、閉まっていた。


(ここの和菓子屋、美味しかったんだけどな)


ため息をつきながら、店の前を通り過ぎる。


 そして、店をすぎたところにあった自動販売機でコーラを買うことにした。

 金をいれて、ボタンを押す。

しかし、自動販売機は反応しなかった。

もう一度、ボタンを押す。だが、さっきと同じで反応しない。


「お釣り」と書かれたボタンを押す。これも、反応しない。


 仕方なく、(違うところで買おう)と思いながら自動販売機の前から立ち去る。買えなかった上に、自動販売機に入れた金は俺の手には戻ってこなかった。


 正に、不幸な一日。

本当、現実逃避をしてしまいたい。

なんで、俺はこんなに不幸なんだろう。


 寂れた街と別れを告げる。

 次は、暫く歩いた先にある大きなショッピングモールへ。


(何か買って帰ろう。母さんのあの様子なら、多分晩ご飯も作ってないだろうし)


 モールに入ると、たくさんの人。いつもの二倍くらいは多かった。

(どうしてだろう? )

人ごみに流されながらそう思っていると、壁にに大きな広告があるのを見つけた。


 広告には、「セール中! 全商品50%OFF!」と書かれていた。


……そりゃ、沢山の人がくるわけだ。

 俺は、妙に納得しながら惣菜エリアへ行った。

沢山の惣菜が並んでいた。

「どれがいいかな……」

 十分くらい悩んだ結果、肉じゃがと弁当だけを買っていくことにした。

さっさとレジを済ませる。


 俺の財産も、50%OFFのおかげであまり減らなくてすんだ。


 弁当を持って、そのまま家に向かった。

家に向かう途中、鞄にいれてあったスマートフォンから着信音がなる。


「なんだろう」


 鞄から電話を取り出し、相手を確認する。

≪父さん≫と表示されていた。




「ん? なにー?」


 父さんからの電話に素早く対応した。


「真人か? 今日、夜遅くなる。 母さんに言っておいてくれ」

「ん、分かった」


 俺は、電話を切る。この頃、こんな事が多い。


 父さんが、俺を通して母さんに要件を伝える。または、その反対。


(息子だからって、伝書鳩みたいに利用するなよ)


 イライラしながら、家に帰る。


 リビングを覗いてみたが、母さんはいなかった。仕方なく、自分の部屋に帰る。弁当は机の上においておく。


 そして、鞄からスマートフォンを取り出す。


ゲームしようと思って電源を入れた時だ。

「充電をしてください」


という文字が画面に表示された。そういえば、充電はしていなかった。


 俺は、スマートフォンを充電器に差し込んだ。


 さて、なにをしようか。


勢いで帰って来てしまったから、今更学校に行くのは嫌だ。なにより、かっこ悪い。

母さんもいないし、スマートフォンは充電している。


 散々なにをやろうか考えた結果、勉強をすることにした。


鞄から算数のテキストを取り出し、今日の単元のページを開ける。


暫くシャーペンも持たずにテキストを眺めていた。

 しかし、

「わからないっ、ムリだ!」

 ついに弱音を吐いてしまった。


 意味の分からない記号が並んでいるページは、もう既に意味不明。こんなのが理解できる奴の頭が不思議だ。


「はぁ……ダルい」


ベッドに倒れるように寝転ぶ。

 教科書は、鞄に放り込む。しかし、教科書が鞄に入ることはなかった。


 鞄の角にぶつかり、教科書が床に落ちる。ページが折れていたが、もうそれを直して鞄に入れる気力が俺にはなかった。




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