表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

スマートフォン

俺は、赤崎 真人(あかさき まこと)丸菜(まるな)高校一年生。平凡極まりない男子だ。

毎日、アンニュイな日々を過ごせるのは、ある意味平凡な俺の特権だろう。


だが、そんなある日、俺は突然スマートフォンをもらった。

母と父からのプレゼントだった。


誕生日でもないのに。なぜ貰ったかはわからない。 突然貰ったのだ。


それは、昨日の夜の話だった。

「真人ー、 今日はいいものをあげるわよ!」

その日の母はなぜか異常な程に上機嫌だった。

この前のテストもいつも通り普通に71点だから褒められることもない。表彰されるようなこともなかった。

俺は首をかしげながら、母の前に立つ。


「なに? 母さん」

「じゃじゃーん!」


無駄に大きな声で効果音を発した後、母が取り出したのは、今話題になっている「スマートフォン」だった。


「え、なんで?」

嬉しいのは嬉しいが、なぜもらうのか分からなければ、素直に喜べはしない。


「なんでもなにも、 父さんが買えっていったのよ。 だから、プレゼントよっ」

俺に、スマートフォンの入った箱を押し付けてくる。


なんなんだよ、俺の両親。意味わかんねぇ。

とりあえず、落としたら多分大変なことになるから、箱を受け取り、机の上で箱を開けた。


母は、俺の隣で感想でも待っているのかにこにこしていた。



箱の中に入っていたのは……黒いスマートフォン。


かっこ良かった。そこまでは良かったのだが、俺は疑問に思ったことがあり、母に聞いた。

「なぁ、これなに?」


なんと、スマートフォンの背中の部分に赤い字で「MAKOTO(マコト)」と書かれてあったのだ。

「あぁ、それね。 父さんがわざわざ特注してくれたのよ」


意味わからねぇ! てか、別に、特注しなくていいんだけど? 恥ずかしさでこんなスマートフォン学校に持っていけないし。





「え、あ、まぁ。 ありがとう、母さん」


正直な感想をいったら、母が寝込みそうなので、一応お礼をいっておく。


すると、母は尚更ハイテンションで、

「いいのよ、いいのよ! 礼は父さんにいいなさい!」


と俺の背中をばしばし叩く。母さんの黒い長い髪が揺れている。


そうだな、たまには父さんの帰りでも待つか。

いつもなら、11時だから寝たいところだが、今日くらい待とうじゃないか。

俺は、自分の黒い髪をいじりながら、父を待っていた。


しばらくして、机の上にある、母の鏡を使って、いじった髪を直す。

俺は、母さんに似ているらしい。確かに、鏡をみると自分でもそう思う。母さんと同じ黒い髪に、黒い澄んだ目。自分でいうのもあれだが、整った鼻筋。


そんな俺は、学校へはいかない。学校へいくのは嫌なのだ。親の思い通り、大人の思い通りにはなりたくないのだ。


母さんは、まぁ優しいから俺は反抗したくない気持ちもある。だけど、問題は父だ。 父は、俗にいう金持ちだ。それに、わがままという特典付き。最悪なのだ。


「ただいまー」


低い声が玄関から聞こえた。父が帰ってきたらしい。

俺は、玄関に向かって、

「おかえりー」

と、適当に返事を返す。と、横で母も、「おかえりなさい」と返事を返している。


「お、なんで真人も起きているんだ?」

「もぅー、とぼけちゃって! 真人がお礼をいいたいのよっ」

母さんは嬉しそうに父に言う。だが、父の表情は堅いままだ。


しかめっ面のままで、

「そんなもの、明日いえばいいだろう」

といったのだ。 流石の母も表情が曇る。




(なんだよ、それ。 わざわざ待っていたのに)


俺は、そう思いながら時計をみる。針は、12時を指していた。1時間なんて、早いものだ。


「そんなこといっても、待ってたのよ。真人は」


母の弱々しい抗議。父はそれを無視して、部屋へと入っていく。机に置いてある母の作った料理も無視して。


その後、暗い母に言われて、俺はスマートフォンをもって自分の部屋に帰った。

俺の家、こんな家庭で大丈夫なんだろうか。


というわけだ。突然のスマートフォンの登場だった。あまり嬉しくはない日だったけれど。


「真人ー、起きなさい」

下の部屋から母の声。 昨日ほど暗くはないが、明るくはなかった。

俺は、適当に「はーい」と返事をしてから、制服に着替えて下の部屋におりていく。


「おはよう」


俺が言うと、母も父も「おはよう」と返してくれた。

あまり酷いことにはなっていないようだ。


俺は、さっさと朝ご飯を食べる。

今日は、目玉焼きとサラダ。それにご飯。いつも通りのメニューだった。


母さんは、機嫌が悪い時には朝ご飯はパン一つになる。そして、父と大声の喧嘩になる。だが、そんなことはなかったから二人ともあまり怒ってはないみたいだ。良かった。


「ご馳走様でした」


俺は、食べ終わると、重い空気から抜け出すように、洗面所へ。そして、冷たい水で顔を洗う。やはり、冷たい水は気持ちがいい。


その後、部屋に戻りバッグを持つと、「いってきます」といって返事も聞かずに家をでた。


……さぁ、今からどこへいこうか。


学校だって? さっきもいったとおり、俺は学校へはいかないんだ。 だから、いつも制服でぶらぶらしている。


前は、隣町で一日中ゲームセンターにいた。かなり所持金は減ったけれど。


でも、今日はどこにもいかなくていいかもしれない。なぜなら、このスマートフォンがあるからね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ