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Another Sky ー藍色の少年ー  作者: ライにゃん
3/4

1-2 兄妹

時計の針は10時過ぎを指している。


消灯はしたものの、どうにも寝付けず、少年はふと窓の外を見てみた。



窓の外には、雲ひとつない美しくも広大な夜空が広がっていた。



彼が住むこの街は、大都会と呼ぶべき都会中の都会であるため、普段なら晴れていても星はほとんど見えないのだが、今夜はなぜだか、星の1つ1つが鮮明に輝いて見えた。


満月に、北極星を取り囲むように星の数々。


少年が見たことのない景色がそこには広がっていた。


手を伸ばせば掴めるような、そんな間近にも感じられ、実際に手を伸ばしてみたりもした。



「明日はいいことありそうだなぁ…」



少年の目もさながら星のような輝きが芽生え始めた。





◆ ◇ ◆ ◇ ◆





「ほら見てくださいよ、星空がきれいですよ。まるであなたみたいにッ!!」



窓の奥の夜空を指指しながら、シンジはキメ顔を金髪の女性に向けた。



やはり、反応はない。


ムスッと無愛想な無表情を決め込んでいる。



それと反対に、妹のリンと言ったら、熱でもあるのか疑うほどに赤面していた。



「やっぱりジャーパニーズじゃダメか。ザットイズベリービューティホォースターズーー」


「……お兄ちゃん」



もはや恥ずかしさを通り越してあきれてしまうほどであった。


さすがにダメだろうなぁ、と思いつつリンは金髪の女性の方に目を向ける。



「……クスッ」



驚くことに、今まで無表情を貫き続けた彼女が、笑顔を見せたのだ。


美しくも可憐で、それでもって優しい笑顔。見とれてしまいそうに、飲み込まれてしまいそうになる。



ハッとなったシンジは、ここぞとばかりにカタコトな英語を続ける。



「ワォ!ベリープリティーアンドビューティホォー!!」


「下手な英語ですね…スミマセン、思わず笑ってしまいました」


「オゥノー…」



割りと本気で傷ついたのか、シンジは体操座りで俯いてしまった。



「とはいえ、元気付けてくれたんですよね…。ありがとうございます」



嫌みのない言い方に、シンジは不貞腐れたように顔を背ける。


シンジ自身が嫌みたっぷりな台詞や、ひねくれた態度、挙げ足をとったりする人柄故に、こういった素直な人はどうも苦手だ。



「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私の名前はセシール・エクアドルといいます」



セシールのその言葉に、シンジは眉をひそめる。



「セシール…?」


「えぇ、そうですけど……何か?」


「いや、昔その名前をどこかで聞いたような気がするんだが…多分気のせいだな」



うんうん、と一人勝手に納得するシンジ。


よくわからない人だなぁ、セシールはそう思った。



「それより、こっちも自己紹介しないとな。俺はシンジ! で、こっちのいたいけな少女が俺のかわいい妹のリンだ」


「は、はぁ…」



名前のことではなく、シンジの妹の紹介に、セシールは少しばかり引いた。


多分シスコンなんだろうな、そう思ってリンの方を見てみたら、照れ臭そうに、「もう、やめてよお兄ちゃん…!」などと言っている。



「…仲のいい兄妹ですね」


「よく言われます」



気恥ずかしそうに俯くリンと、何故か笑みを浮かべるシンジ。分かりやすく言えばドヤ顔である。


…兄に勝る弟はいない、という言葉があるが、兄に勝る妹はいるんだ、なんてことを考えながら、



「兄に勝る妹は存在するんですね」



と思わず口に出すセシール。



「…あんた、思ってることをそのまま口にするタイプだろ。その癖直すか、失礼なこと考えないようにするかした方がいいぜ」


「くすっ、忠告ありがとうね」



セシールと、こんな他愛もない話をずっとしていたいが、そうにもいかない。


シンジは思いきって、セシールに本題を告げることにした。



「そういえば、あんたが血塗れですぐそこの海岸に倒れてた訳だが…一体なにやらかしたんだ?」


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん…いくらなんでも直球すぎるでしょ……」



そう言ってセシールのほうを見ると、さっきまでのセシールとはうってかわって、気まずそうに目線をそらす。



この事がセシールにとっては触れてはいけない話題だったことは、シンジでも十分理解している。


だが、聞かなければならない、そんな気がしたのだ。



一瞬だったが、この息苦しい沈黙はシンジや、リンにとっては長く感じた。



「実は、あなたたちに、いやリンちゃんに頼みたいことがあったんです」


「頼みたい…」「ことですか?」



セシールの言葉に、兄妹は目を見張った。



「この少年を、探してほしいの」



そう言って彼女は懐から一枚の写真を取り出した。


その写真には、満面の笑顔を浮かべ、両手はピースさせている一人の少年が写っていた。


肩にかかる程度の黒い短髪、幼さを隠しきれない顔立ち、『sky』とプリントアウトされた白いTシャツ、とごくごく普通の少年ではある 。



「あのな…リンが警察に見えるか?俺ならともかく、無理ありすぎだろ。そういうのは他所で――」


「ダメなんです…あなたじゃないと」



正直に言ってセシールには不可解な点が多すぎる。


今の写真の件もそうだが、なぜセシールが血まみれで海岸に倒れてたのかもまだ明かされていない。


なぜ警察ではなくシンジやリンのもとを訪ねたのか。



普通なら、適当に言いくるめて帰らせるか、病院(頭のではない)に行かせるだろう。


だが――



「理由はなんであれ、どうしてもリンが必要なんだな?」


「…えぇ」


「…OKだ。 じゃあまずは情報収集からだな」



シンジはリンに「行くぞ」と軽く声をかけると、立ち上がって部屋から出ていこうとする。



「あ、あのっ」


「ん?」



セシールの呼び掛けに応じ、シンジは踵を返す。


シンジの顔つきからは先ほどのふざけた様子は消え、真剣み溢れる顔つきになっている。



「なんで、私なんかのために…第一事情もなにも全く話してないのよ?」


「事情なんかはあんたが俺のことを信頼してくれたら聞くさ。話したくない話なんだろ?」


「……」


「安心しな、今は俺が勝手に了承したが、うちのリンはたぶん世界一優しい少女だから、アンタが何者だろうと手を差しのべてくれるぜ。俺もだがな」



セシールは押し黙ってしまう。


この兄妹には本当に敵わない、そうセシールは感じた。



「ねぇお兄ちゃん、情報収集って言ったけど…こんな時間にどこいくの?」


「RPGで言ったら情報収集と言ったら酒場だろ? つまりそういうことだ」



ちょくちょく訂正はしています



ここおかしいな? と思ったら容赦なく指摘してくださ><

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