スキルをくれるというのでインベントリを選んだのに異世界で標準装備でした。
異世界召喚で神様からスキルを貰うならなんだろうか。戦闘系、回復系、補助系なんならバフの付与も読んだことがある。でも私が選ぶならコレ一択。
「インベントリをください!」
備えあれば憂いなしと母が言っていた。
「おぉ、異界の勇者たち。この世界をお救いください」
王様らしい豪華な服装の人物が芝居がかった仕草で近寄ってくる。そしてテンプレ通りスキルを確認していく。
「そなたはなんのスキルを持っている」
「インベントリです」
王様は、落胆の溜め息の後に嘲るような視線を向けてきた。その視線で一気にこの王様が嫌いになる。
「ふん、インベントリなんて誰でも使えるスキルなどいらないではないか。ある程度金は渡すから好きにしろ」
「は?」
私は、金を渡され城から追い出された。せめてこの世界について教えてから追い出して欲しかった。渡された袋の中身の相場がわからない。私は、どうしたものかと考えるのだった。
「母さんの言う通りだったねぇ」
「なんか言ったか」
「魔王がさ。娯楽とうまい飯に飢えてるなんて、思わなかったということよ」
魔族が人間の領域に現れていたのは、長い時を生きるからこその暇と刺激をもとめていたのだった。魔族に戦うつもりは毛頭ないが異分子を排除するのが人間だ。見事に攻めてきたと勘違いしたというわけだ。
「毎回同じではないがちょっとした変化が欲しいわけだ。人間は、数が多いから発想の幅がある。そこが面白いのだ」
「そういうものですか」
「最たる例がお前だろうが。人間族の女性が一人魔王城にきたというからなんだと思ったら商売を始めるなど」
「国境の魔族の町で人間の商品を売ったら喜ばれたから行けるとこまで行こうと思ったんですよ。ダメならそこまでだし」
元の世界に帰れないならと自暴自棄になっていた。残したものは多いが恋人や旦那、子どもがいないことだけが救いである。口がうまい方ではないが肝がすわっているとはいわれていた。
「おかげで楽しませてもらっている。そういえばあっちで伯爵になったそうじゃないか。イベントリ伯爵」
「嫌味ですか。これから人間と魔族の交流が増えるからその仲介役として箔をつけたいだけですよ」
「だろうな。人間の仲介役としてお前を使命した。まさか爵位につけるとは思わなかったが」
「犯人はお前か」
召喚された人たちは、それぞれ頑張っている。まさかの勇者のスキルの人物は、役者をしながら困った人を助けている。回復スキルの人もそれにくっついて回復したりグッズ販売して儲けているとか。
これからこの世界は、色々混ざって更に良くなるのか難関にぶつかるのか。でも各種族と人間が分かり合えばもっと面白いこともあると思う。
「ところで前に言っていた前の世界の娯楽についてもっと教えろ。とくにゲームだ」
「はいはい。TRPGというゲームがありまして」




