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恋愛成立確率0.00%の彼と、未来が見える私 〜彼を選べば壊れると知っている恋〜  作者: ふぁい(phi)


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8/10

第8話 一日だけ、恋人だった

未来を見なかったその一日が、

いちばん幸せだった。



「一日だけでいいから」


その言葉を、

口にしたのは、私だった。


放課後、

校舎の裏。


夕暮れが、

世界をやわらかく包んでいる。


彼は、

少し驚いた顔をした。


「……何が?」


「普通に」


私は、

視線を逸らす。


「普通の、恋人みたいに過ごしたい」


理由は、言わない。

期限も、言わない。


それでも彼は、

否定しなかった。


少し考えてから、

静かに頷く。


「一日だけ?」


「一日だけ」


約束は、

それだけだった。



私は、

未来を見ないと決めた。


目を合わせないわけじゃない。

関わらないわけでもない。


ただ、

「覗かない」。


それは、

私にとって、

小さな反逆だった。



駅前のカフェ。


並んで歩く。

同じ飲み物を頼む。


他愛もない会話。


「甘いの、好きなんだ」


「意外?」


「うん、ちょっと」


そんな一言一言が、

胸に、静かに積もっていく。


未来を、

見なければ。


彼は、

ただの同級生で。


私は、

ただの女の子だった。



映画を観て、

笑って、

少し泣いた。


エンドロールの間、

肩が触れる。


彼は、

何も言わない。


でも、

離れない。


それだけで、

十分だった。



夕方、

川沿いを歩く。


風が、

少し冷たくなってきた。


「手、冷たい?」


彼が、

そう言って、

そっと手を取る。


未来を、

見ない。


見ない。


見ない。


ただ、

温度だけを感じる。



その瞬間、

分かってしまった。


これが、

「普通の幸福」だ。


特別じゃない。

劇的でもない。


でも、

確かに、幸せ。


だからこそ、

痛い。



日が沈む。


空が、

ゆっくり暗くなる。


「……そろそろ、終わりだね」


私が言う。


彼は、

少しだけ、寂しそうに笑った。


「一日、早かったね」


「うん」


それ以上、

言わない。


聞かない。


それが、

この約束の条件だった。



別れ際、

彼は、少しだけ迷ってから、言った。


「今日さ」


一拍置いて。


「楽しかった」


それだけ。


告白は、ない。

未来を変える言葉も、ない。


私は、

それに救われて、

同時に、深く傷ついた。



帰り道、

私は一人で、立ち止まる。


未来を、見る。


全部、戻ってくる。


彼を選ぶ未来。

壊れる未来。


変わらない。


何も、変わっていない。


それでも――


未来を見なかったその一日が、

いちばん幸せだった。


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