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恋愛成立確率0.00%の彼と、未来が見える私 〜彼を選べば壊れると知っている恋〜  作者: ふぁい(phi)


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4/10

第4話 未来が、少しだけ揺れた日

見えなかった。

その未来だけが、どうしても。



その日は、

ほんの些細なことから始まった。


昼休み、

いつもの静かな場所。


私と彼は、

向かい合って座っていた。


言葉は、少ない。

でも沈黙が、

不思議と重くない。


箸を動かしながら、

私は彼を見ないようにしていた。


――見てしまったら、

また未来が流れ込む。


そう思っていたのに。


「……目、疲れてない?」


彼が言った。


思わず、顔を上げる。


視線が、重なる。


その瞬間。


何も、見えなかった。



いつもなら、

引き金みたいに始まる。


視界が歪んで、

胸の奥が冷えて、

「その先」が押し寄せてくる。


でも、今回は違った。


何も、来ない。


彼の壊れる未来も、

成立しない結末も、

どこにも、映らなかった。


ただ――

目の前にいる彼だけが、

確かに存在している。


「……大丈夫」


そう答えた自分の声が、

やけに現実的に聞こえた。


まるで、

未来なんて最初から存在しなかったみたいに。



その日から、

小さな違和感が続いた。


彼と話しても、

未来が、途切れる瞬間がある。


ほんの一秒。

ほんの、呼吸ひとつ分。


でも、

確かに「空白」がある。


未来は、基本的に固定。

揺れることなんて、ない。


それを、

私は誰よりも知っている。


だからこそ、

この現象が、怖かった。


そして――

少しだけ、

期待してしまった。



放課後、

校舎裏で雨宿りをしていた。


突然の雨。


傘を持っていないのは、

二人とも同じだった。


「……濡れるね」


彼が言う。


「走れば、いけるかも」


そんな他愛もない会話。


でも、

肩が触れる距離。


雨音に、

言葉がかき消される。


彼が、

一歩、近づいた。


心臓が、

うるさく鳴る。


未来を、見る。


――見えない。


見えなかった。


ここまで近いのに。

選びかけているのに。


それでも、

未来は沈黙したままだった。



「……ねえ」


彼の声が、

近い。


「もしさ」


そこで、

言葉が止まる。


彼は、

それ以上踏み込まなかった。


視線を逸らして、

少し照れたように笑う。


「いや、なんでもない」


その一歩が、

踏み出されなかったことに、

私は救われて――


同時に、

胸が痛んだ。



帰り道、

一人になってから、

私は立ち止まった。


未来が、揺れた。


ほんの一瞬だけ。

でも、確かに。


それは、

希望かもしれないし、

錯覚かもしれない。


未来視の限界。

感情のノイズ。

ただの、疲労。


理由はいくらでも考えられる。


でも。


もし。


もし、この人だけが、

例外だとしたら?


その考えが浮かんだ瞬間、

私は強く首を振った。


違う。

それは、いちばん危険な想像だ。


希望は、

選択を誤らせる。


私は、

もう間違えない。



見えなかった。

その未来だけが、どうしても。


だから私は、

見なかったことにした。


それが、

この揺れを終わらせる、

唯一の方法だと思ったから。


――そしてまだ、

この時の私は知らない。


見えない未来ほど、

人を強く縛るものはないということを。

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