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恋愛成立確率0.00%の彼と、未来が見える私 〜彼を選べば壊れると知っている恋〜  作者: ふぁい(phi)


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3/10

第3話 私が彼を選ばない理由

選ばなければ、壊れない。

それが、私の世界の唯一のルールだった。



未来が見えると言っても、

私は神様じゃない。


全部が分かるわけじゃないし、

自由に覗けるわけでもない。


見えるのは、

「関わった先」だけだ。


目を合わせたとき。

名前を呼んだとき。

心が、ほんの少し近づいたとき。


その延長線上にある未来が、

勝手に、流れ込んでくる。


逆に言えば――

関わらなければ、見えない。


そして、見えない未来は、

壊れない。


少なくとも、

私が原因で壊れることは、ない。



過去に一度だけ、

私は「選んだ」ことがある。


あのときは、

未来が見えることを、

救いだと勘違いしていた。


壊れる未来が見えるなら、

避ければいい。

修正すればいい。

正しい選択をすればいい。


そう思っていた。


でも、現実は違った。


どれだけ回避しても、

どれだけ言葉を選んでも、

結末は、同じ場所に辿り着いた。


むしろ――

私が選び続けたことで、

壊れ方は、より残酷になった。


最後に残ったのは、

取り返しのつかない後悔と、

「選ばなければよかった」という事実だけ。


だから、私は決めた。


未来は、変えない。

変えられないなら、

触れない。



彼の場合は、

最初から分かりすぎるほど、分かっていた。


選んだ瞬間、

彼は壊れる。


それは、

事故でも、病気でもない。


もっと静かで、

もっと残酷な壊れ方。


自分の価値を疑って、

誰かを信じることをやめて、

それでも優しさだけを手放せなくなる。


そんな未来。


それを、

私が与える。


そんな役目を、

私は引き受けない。



だから私は、

線を引いた。


近づきすぎない。

期待させない。

名前を呼ばない。


彼が一歩近づいたら、

私は半歩下がる。


それで、均衡は保たれる。


壊れない未来。

成立しない関係。


安全で、

正しい選択。


――そのはずだった。



「ねえ」


ある日の帰り道、

彼が私の隣に並んだ。


夕焼けが、

校舎を赤く染めている。


「最近さ、無理してない?」


心臓が、跳ねた。


そんな未来は、

想定していなかった。


未来が、

ほんの一瞬だけ、

曖昧になった気がした。


「……どうして?」


「なんとなく」


彼は、困ったように笑う。


「いつも、少しだけ遠いから」


その言葉で、

私は理解してしまった。


私が引いた線は、

彼にも、ちゃんと見えていた。


それでも、

踏み越えない。


それでも、

責めない。


その優しさが、

胸を刺す。



未来は、

選択の先にある。


でも感情は、

今にしか存在しない。


私は、

正しい選択をしている。


――それなのに。


「遠くないよ」


そう答えた自分の声が、

ほんの少しだけ、

震えていた。


――この一言で、

すべてが壊れる未来を、

私は、もう知っているはずなのに。


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