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恋愛成立確率0.00%の彼と、未来が見える私 〜彼を選べば壊れると知っている恋〜  作者: ふぁい(phi)


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10/10

最終話 恋愛成立確率0.00%でも

恋は、成立しなかった。

それでも――

無意味じゃなかった。



数年後。


私は、

未来が見えることに、

少しだけ慣れていた。


慣れた、というより、

付き合い方を覚えた、

が近い。


無理に避けない。

無理に選ばない。


ただ、

知っている事実として、

受け取る。


それが、

私なりの折り合いのつけ方だった。



彼の未来を、

久しぶりに見た。


偶然だった。


駅前で、

すれ違っただけ。


一瞬、

視線が合う。


それだけで、

未来は流れ込んでくる。


――壊れていない。


胸の奥が、

静かに、ほどけた。



彼は、

笑っていた。


隣には、

知らない誰か。


恋人かもしれないし、

そうじゃないかもしれない。


でも、

それでいい。


彼は、

自分を責めていない。


誰かを信じることを、

やめていない。


優しさを、

失っていない。


私の知っている未来の中で、

いちばん穏やかな形で、

彼は、生きていた。



私は、

立ち止まらなかった。


声も、

かけなかった。


過去に戻る必要は、

なかったから。


あの恋は、

終わっている。


ちゃんと、

終わらせた。



一日だけ、

恋人だった日。


未来を見なかった時間。


彼の手の温度。

何気ない会話。

沈黙の、居心地の良さ。


どれも、

今でも、はっきり覚えている。


それは、

失敗じゃない。


選ばなかったからこそ、

守られた記憶だ。



私は、

別の誰かを、

好きになったこともある。


未来を見て、

選ばないこともあった。


それでも、

後悔はしなかった。


だって私は、

知っている。


成立しない恋でも、

人は、確かに救われる。


少なくとも、

壊れずに済む未来がある。



彼を選ばなかったことを、

私は、

正解だったとは言わない。


でも、

間違いだったとも思わない。


あれは、

私の選択だった。


好きという感情を、

否定しないまま、

手放すという選択。


それができたことを、

私は、

少しだけ、誇りに思っている。



恋は、成立しなかった。


確率は、

最初から、0.00%。


それでも。


あの恋があったから、

私は、

誰かを壊さずに、

誰かを想うことを、

学べた。


だから――

無意味じゃなかった。


彼を選ばない未来が、

いちばん優しいと知っている。


それでも、

あの恋を、

私は確かに、

愛していた。


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