ダイフクの大・冒・険
一応ファンタジーです。誤字脱字、おかしい表現あったらすみません。
おいらはダイフク。ただいまビグネコに追われて生死の境い目にいる。森の中を全速力で駆けているのに一向にビグネコとの差は開かない。それどころか距離は縮んでいる気がする。どこか隠れる場所がないか必死に目を彷徨わせると、ちょうど良い大きさの洞を見つけた。急いで洞の中に身を潜り込ませるのと、ビグネコの振り上げた前足が樹木を削ったのが同時に起こる。ビグネコはしばらく洞の前に陣取っていたが、諦めたのかどこかに去っていった。少しだけ、おいらの心に余裕が生まれる。けど、温室育ちの甘ちゃんはここで安心してすぐに洞から出てくるのだろうが、自然の荒波に揉まれたおいらはそんな事しない。大事を取って夜が来るまで待ってるんだ。みぃちゃんを見つけるまでおいらは絶対に生きるんだ。
おいらはダイフク。今はヒトが大勢いる場所に来ている。みぃちゃんはヒトだから、仲間のいる場所に居るはずなんだ。みぃちゃんはおいらが居ないとすぐに泣いちゃうから。きっとみいちゃんは泣いてるんだ。早くみぃちゃんを見つけてこの自慢のふわふわで慰めないと。みぃちゃんは泣いててもおいらが居ればすぐに笑ってくれるんだ。
「ダイフクはふわふわでお日様の匂いがするね」
そう言ってみいちゃんはいつも優しくおいらを撫でて抱きしめてくれる。みぃちゃんの手は優しくて、撫でられるといつも眠くなってしまうんだ。
水たまりに写ったおいらの毛は少し汚れて、ボサボサしていた。
おいらはダイフク。みいちゃんに会った時、ふわふわを堪能させるために毛繕いは欠かせない。少し前にそれを思い出して、一生懸命毛繕いをした今のおいらは温室育ちの甘ちゃんも妬む程のツヤツヤふわふわだ。水たまりに写ったおいらの毛並みにうっとりしていると、おいらの後ろから手が生えてきた。
「可愛いうさちゃん!どうしたの?迷子なの?」
は、離せ!おいらを抱きしめていいのはみぃちゃんだけなんだ!
「わあっ!暴れたらダメだよ。落ちちゃうよ」
下ろしてもらおうと暴れるほど、締め付けが強くなる。途中から苦しくて暴れると、やっと苦しみから解放された。
「うさちゃん苦しかったんだね。ごめんね。」
よく見ると、みぃちゃんと同じくらいのヒトが悲しそうにしていた。
「お母さんとお父さん、迷子になっちゃったの。だから、私探してるの。ねえうさちゃん。一緒にお母さんとお父さん、探すの手伝ってくれない?」
小さなヒトは目に涙を溜めていた。おいらの毛並みはみぃちゃんだけの特別だけど。仕方ないからおいらは慰めてやるんだ。だって、おいらが優しいことをすれば、おいらの大事なみいちゃんも優しいってことになるんだから。
小さなヒトは色んな事を話してた。何が美味しいやら、楽しかったことやら。オカアサンとオトウサンの事。話してる間にいつの間にか小さなヒトはオカアサンとオトウサンと再開してた。みんな泣いてたけど、これは悲しい涙じゃないことをおいらは知ってる。みぃちゃんが教えてくれたんだ。おいらも早くみぃちゃんに会いたい。おいらの目から涙が溢れてきた。みぃちゃん待っててね。おいらがすぐに見つけるから。
おいらは、ダイフク。絶賛、ご飯を探して放浪中。最近、まともにご飯にありつけない日々が続いて、おいらのお腹はへこみっぱなしだ。みぃちゃんが居た時はいつも美味しいご飯を食べてたけど、みぃちゃんを探してからは、美味しいご飯なんて夢のまた夢になってしまった。ヒトが多くいる場所では明るい道の方がご飯は多くある。けど、食べられるよりも見つかって叩き出されることの方が多い。だから、狭くて薄暗い道の方でご飯を探すのが定席になっていた。もちろん、狭く薄暗い道にもご飯を狙う生き物が居る。でも、最近はおいらの自慢の歯と生え始めた爪で蹴散らしてやってる。おいらには絶対に生きなきゃいけない理由があるんだ。こんな所で他の奴らに負けてちゃいけないんだ。
何とか今日もご飯を食べられた。みぃちゃんは美味しいものは必ずおいらにくれてたんだ。みぃちゃんのオカアサンにはちゃんと食べなさいとか何とか怒られてたけど、みぃちゃんはおいらに美味しいものを分けてくれてただけなんだ。全部おいらにくれてたけど、それはおいらのためにくれてたんだ。それに、みぃちゃんはお美味しいものを食べると、ほっぺたを押さえてすっごく可愛く笑うんだ。また、みいちゃんと一緒にご飯を食べたいな。
みぃちゃん、ほっぺた押さえて笑ってくれるかな。このご飯、みぃちゃんと一緒に食べたいな。
おいらは、えっと、ダイフク。みぃちゃんを探して、森の中を移動中。自然の荒波に揉まれたせいか、おいらの身体はみいちゃんと過ごしていた時よりも大きくなった。歯も鋭くなって、爪も大きく、鋭くなった。食べられなかった肉を食べられるようになったからかな?みぃちゃんは嫌いなものは絶対に食べようとしなかったからか、オカアサンに怒られてたけど、好き嫌いせずしっかりご飯を食べると、おいらみたいに大きく成長できるよって言えるかな。でも、こんな大きくて、鋭い爪と歯も持って、みぃちゃん、おいらだって気づいてくれるかな。いや、みぃちゃんなら絶対にすぐに気づいてくれる。みぃちゃんから貰った赤い首輪があるんだ。これがあればおいらがどこに行ったって、すぐにおいらだって分かるって。みぃちゃんはそう言っておいらを抱きしめてくれたんだ。首輪はまだ、ちゃんと着いてる。
少し前から首輪が首にくい込んで息がしづらくなってきた。
おいらは、ふわふわ?あ、違う。ダイフク。森の中でご飯を食べてたら、ビグネコに見つかって追われてる最中。でも、ビグネコってもっとでかかったように気がするんだ。このビグネコは子供なのかな。ちょっと後ろを確認するけど、ビグネコの顔の怖さに急いで前を向く。やっぱり、ビグネコは怖い。子供でもあんな凶悪な顔になるんだ。肉食は野蛮だ。みぃちゃんはお肉も食べるけどいっつも優しくて可愛い顔だった。同じ肉食なのになんでこうも違いが出てくるんだろう。考え事をしてたからか、目の前が斜面になっているのに気づかず盛大に転げ落ちてしまった。
どれくらい気を失っていたのか、真夜中になっている。ビグネコはいつの間にかいなくなっていた。目が片方開かない。それに気づいたら、いきなり痛くなってきた。転げ回ることも出来ないくらい痛い。それでも、こんな所にいたら他の肉食に捕まっちゃう。情けなくなる心と身体を無理やり動かして近くの物陰まで物音を立てないように移動した。
みぃちゃんは怪我をしていないだろうか。怪我がこんなに痛いものだったなんて、あの頃は知りもしなかった。ただ、みぃちゃんがあんなに泣いてるから、痛そうだなんて思ってただけだった。想像と体験はこんなに違うんだね。みぃちゃんは怪我をしていないだろうか。泣いていないだろうか。おいらに力があれば、みぃちゃんを怪我から守ってあげれるのかな。
おいらはふわふわ。おいらの目の前には今日のご飯が沢山ある。みいちゃんを探して、もう随分と時間が経ったような気がする。早くみぃちゃんを見つけてあげないといけないのに、一向にみいちゃんに会えない。きっと、みぃちゃんと過ごした時間より、みいちゃんを探している時間の方が長い。ううん。そんなことない。みぃちゃんと過ごしてた時間の方がずっとずっと長い。おいら、沢山沢山食べるようになったんだ。だから身体もすっかり大きくなった。狩りだって、とっても上手くなった。今、目の前にあるご飯だって、簡単に取れた。みぃちゃんに美味しいご飯を沢山食べさせてあげられる。みぃちゃんはお肉が好きだから、今のおいらなら沢山お肉を取ってくることができるんだ。早くみいちゃんに合いたいな。みぃちゃん、どこにいるんだろう。
おいらもみぃちゃんと同じご飯が食べらるようになったんだよ。
おいらはおいらだよ。なんだか息がしやすくなってた。不思議だよね。今まであんなに苦しかったのに。なんで急に苦しくなくなったんだろう。考えてもよく分かんない事は考えても仕方ないね。それに、ご飯をまだ食べてないんだ。もう、お腹がペコペコだよ。
ビグネコって、お肉が沢山あるからいっぱい食べられておいら好きだな。でも、この頃1匹だけじゃ足りなくなってきちゃった。これが成長期ってやつかな。
おいらはダイフク。みぃちゃんの可愛いダイフクだ。最近、名前がすぐに出てこないんだ。だから、いっぱいおいらはおいらの名前を言うんだ。今日、夢を見たんだ。みぃちゃんが居なくなった日の夢を。あの日、おいらはみいちゃんが大事に育ててたご飯を食べちゃったんだ。みぃちゃんはあんなにおいらに食べたらダメだって言ってたのに。おいら、我慢出来なくて食べちゃったんだ。みぃちゃん、顔が真っ赤になるほど泣いてた。それに、怒ってた。
「ダイフクのバカ!なんで食べちゃったの!?みいちゃんが育ててたのに。食べたらダメって言ったのに!ダイフクなんて知らない!嫌い!あっち行って!!」
おいらはそれを聞いてたまらず家を飛び出した。誤解して欲しくないのは、みぃちゃんに酷いことを言われたからじゃないんだ。みいちゃんが育ててたご飯と同じものを見つけて、みいちゃんに謝ろうとしたからなんだ。すっごく時間が経って、同じものは見つけられなかったけど、似たものを持ってみいちゃんの所に帰ったら。家がぺしゃんこになって、無くなってたんだ。周りの家もぺしゃんこになって。何も無くなってた。みぃちゃんも、みぃちゃんのオカアサンとオトウサンも、他のヒトも。必死に呼んでも聞こえるのは野蛮な生き物の声だけだった。それから、おいらはみぃちゃんを探してるんだ。あのヒトの集まってた場所には、ヒトだけが居なくなってたから。きっとみぃちゃんたちは何かから逃げたんだ。
おいらはみぃちゃんのダイフク。おいら、とんでもない事に気付いたんだ。首輪がないんだ。どこを探しても。いつから無くなってたのかもさっぱりなんだ。なんで首輪がないことにこんなに焦ってるのかも、さっぱりなんだ。首輪なんて苦しいもの、付ける意味あるのかな。でも、そうだ。おいらだって気づいてもらうためには絶対に必要なんだった。そうしないと、再会した時においらだって気づいてもらえないよ。おいら、抱きしめてもらえないよ。あ、でも。今のおいらなら、逆に抱きしめることが出来るんだ!みぃちゃん、絶対に喜んでくれるよ!
おいらはみぃちゃんのダイフク。ダイフクってご飯の名前だよね。おいら知ってるよ。なんで、ご飯の名前がおいらの名前なnだっけ。おいらはご飯じゃないのに。変なの。きっと、このみぃちゃんっていうのがおいらの名前だよ。確かおいら、おいらの名前を忘れないように名前を言ってるもん。このみぃちゃんってずっとおいらが言ってる名前だから、おいらの名前はみいちゃんなんだ。それにしても、ダイフクなんてご飯の名前、一体誰がつけたんだろう。おいら食べられてたかもしれないのかな。
君はね、白くて、ダイフクみたいにもちもちふわふわだからダイフク!
おいらはみぃちゃん。今、森の中で小さな人と会った。おいらが探してるヒトも小さかった気がするんだ。この子がそうなのかな?もしそうだったら、おいらだってすぐに分かるよね。だって、その子がどこに居たってすぐに分かるって言ってたんだもん。
「ヒッ!?モ、モンスター!?」
なんで笑ってくれないんだろう。なんでおいらの名前を呼んでくれないの?
「こ、来ないで!あっち行って!」
石を投げられた。身体は痛くないけど、涙が溢れてくる。おいら、その子に物を投げられたことなんて1度もないよ。それなのに、おいらの名前を呼ばないで石を投げるなんて。この子はその子じゃない。その子の真似をして、おいらのその子を探す邪魔をしてるんだ。こんな悪い奴においら、負けないんだぞ。
小さなヒトって食べるところ全然ないや。でも、ポリポリしてて噛みごたえってやつはあるんだね。
おいら、ヒーローなんだ。ヒーローって誰かを守るんだって。なら、おいらはあの子を守る、あの子だけのヒーローなんだ。当然、あの子を騙っておいらを騙す悪い奴ら、そんな奴らを庇う悪い奴らを懲らしめるんだ。それと、ヒーローになってから気づいたんだけど、おいらの周りには悪い奴らがいっぱい、ほんとにいっぱい居るんだ。おいらを騙すためにわざとあの子と同じ格好をしてるんだ。許せないよ。ちょっと疲れるけど、あの子を見つけるまではおいら頑張るんだ。それに、お腹が好かなくて助かってるんだ。あの子とまた会ってそれから。それから、どうしたいんだろう?おいら、あの子に会ったら何をしたかったんだっけ?何かしたかったはずなんだけどな。うーん。ま、いいか。会った時に決めればいいや。それよりも、今は悪い奴を見つけないと。
「ねえ」
あの子と同じ小さなヒトだ。あの子かな?おいらの名前、呼んで。
「君、人喰いでしょ。大人達が言ってた」
ヒトクイ?違うよ。おいらはみぃちゃんだよ。なんでおいらの名前を言ってくれないの?
「人ならなんでも食べるモンスター。どれだけの年月を経ればこんなに大きく 」
おいらの名前をすぐに言ってくれないこいつは悪い奴だ。またおいらを騙したんだ。懲らしめないと。
「お腹空いてるの?まあ、ちょうどいいや。おいで。たらふく食わせ 」
な、なんだ!?おいらの首に何かが巻き付いて締めてくるんだぞ!?取れない!それに、引っ張られてる!こんなに悪い奴、初めて会ったよ。
小さなヒトがいっぱい居る所に来た。こいつ、実は良い奴なのかも。あの子が居る所に連れてきてくれたのかな。
「モンスター!?なんでこんな所 」
「お前、自分が何をやったのか分かって 」
「あんたたちが私にしてきたことを鑑みれば妥当 」
「忌々しい魔女めが。やはりあの時 」
全然おいらの名前を呼んでくれない。あの子はここに居ないのか。やっぱりこいつ悪い奴だ。ここに居る小さなヒト達と協力しておいらを騙したんだ。こんなに悪い奴がいっぱい居るんだ。今日は頑張らないと。
ふー。結構いい運動になった。そういえば、最初においらを騙した悪い奴、ずっと笑っててなんか怖かったな。今も、お腹の中で笑い声がしてそうで嫌だな。
ファルハパ大陸の中央に位置する巨大原生林、ドゥビタティオを1匹の大柄なモンスターが悠々と歩いている。一体何時からいるのか。なぜここまで成長できたのか。さっぱり謎なモンスターだ。
本来、ドゥビタティオには多くの生物が生息しているため賑やかなものだ。それが、今は真夜中ですら騒がしいと言えるほど。大柄で白いモンスターに見つからないように、他の生物は息を潜めていた。
どうやら、このモンスターだけがのんびりしている空間に侵入する命知らずが現れたようだ。微かな音は、よく聞けば脆くて弱い人の声。それもまだ子供と言えるくらい幼く、高い声だ。楽しそうに歌でも歌っているのか。可哀想に。このモンスターは人に、特に幼い子供を中心に食べる。きっと、この声の持ち主もすぐにこのモンスターに食べられてしまうだろう。しかし、この声が現れなければ、人喰いは当分ここに居座っていたはずだ。息を潜めていた生物たちは、哀れな子供に感謝した。
このモンスターが声に気づき、声の持ち主を探すと、すぐに見つかった。しかし、このモンスターの予想とは違い、声の持ち主は子供ではなかった。いや、正しくは人の子供ではなかった。それは、滅多に見られない希少な種族ハーピーだった。ハーピーは楽しそうに歌っている。何がそんなに面白いのか。コロコロと笑っていた。
「新しいお顔!新しいお声!とっても可愛いわ。ああ、なんて素敵なんでしょう」
ハーピーにとって、人とは装飾だ。飽きたら変える。それだけのこと。ハーピーの子供は、新しく付けた顔と声がとても気に入っているようだ。常に湖に映る顔を確認しては笑っている。歌を歌っては声に酔いしれている。実に愛らしい様だ。そんな微笑ましい空間に割入る異物が1匹。このモンスターだ。このモンスターに気付いたハーピーの子供はにこりと可愛らしく笑いかける。
「あら。こんにちは知らないモンスターさん。ねえ、私の新しいお顔。新しいお声。可愛いでしょう?惚れ惚れするでしょう?私自身、うっとりしているんですもの。あなたもこの鈴のような声に誘われてきたのね」
ハーピーはとてもお喋りだ。このモンスターはハーピーの話を半分以上聞いていなかった。ただ、このモンスターの心には騙された、それだけが浮かんでいた。
モンスターはごろりとその場で横になる。おやつの後はお昼寝だと、相場は決まっているのだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
pixivにも同じものを載せています。




