表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

小説家になろうラジオ大賞

宇宙連邦の文化的な年賀状

作者: 塩谷 文庫歌

 二学期終わり。



「良いお年を」

「ぁ……はい」


 静水(しみず)羽音(はおと)はペコリ。

 バサッと被る前髪。


 視力が低いのか瓶底眼鏡、布マスクで超無口、独りでモタモタ帰宅していく姿。俺だけは、清水さんの正体を知っている。


 半年前。

 掃除中に躓いて「キャ!」と澄んだ声、咄嗟に引っ張り起こして、見た。

 ポッチャリした顔かたち、整った目鼻立ち、派手なインナーメッシュの蒼い髪、蒼い瞳、桃色の唇を「ども」とモゾモゾ一言、みるみる頬が紅潮する。


  『 かっ カ ワ イ イ !! 』


 ギャップ萌えだった。

 どうにか距離を縮めようと奮闘。

 目標だったクリスマスは、今日。



 終 わ っ た ――





 謹賀新年。

 スマホに届くアケオメを受け流していたら、ポチ袋が足りないと母に頼まれて、コンビニへ行く準備。郵便受けに挟まる葉書に気付いた。


 珍しい、年賀状が届いたらしい。

 何気なく手に取り表書きを見る。


 静 水 さ ん ?!


 往復はがきで、年賀状。

 静水さんらしい心遣い。

 半年無駄じゃ無かった。



  【 宇宙連邦へ加盟を希望しますか? 】


      YES / NO



「は?」


 新 年 の 挨 拶 ?

 斜め上を行くセンスだ。

 贔屓目(ひいきめ)なしにカワイイ。


 YESに丸、返信側を投函してきた。


「あ?」


 手元に残った自分の宛名。


 静水さんの連絡先は、ポストの中に。

 楽しい冬休みは、今。



 終 わ っ た ――





 餅を食べつつスマホを起動。

 似たような新着ニュースが並んでいる。


 【 ()()()()()()()()()()()


 なになに?


 加盟条件は『文化的な生活を送る惑星』、各国代表が次々希望し、()()()()()()()()()()があったらしい。

 偶然、俺と同姓同名だ。しかし投函は小一時間前。事前に知ってて悪戯(いたずら)したなら静水さんのカワイイ指数爆上がりだが、さすがに単なる偶然か。



 ピンポ~ン♪


「お!」


 親戚が、お年玉目当てに訪問か?

 ポチ袋は間に合った、良かった。


 玄関に行き、鍵を開ける。

 黒ずくめの、()()()()()


「誰?」

「死ね」


 額に押し付けられた()()


 次の瞬間。

 男は両断され、何等分かに切り分けられて、炎上、消滅。

 ()()()を、殺人犯(命の恩人)

 眼鏡やマスクはしていないが……

挿絵(By みてみん)


「静水さん?」

「ぁ……はい」


「なんで?」

「ビームサーベルで」


 宇宙連邦調査員()()()

 本日付けで任務が変更。

 真顔で話している。

 俺の平和は本日付けで。



 終 わ っ た ――





 宇宙連邦の加盟に希望、ボディーガードに静水さん。

 その理由は、夜の記者会見で判明した。



 【 加 盟 条 件 】


 『 文 化 的 』 = 衣・食・住


 地球人は()()()()()()()を確保。

 宇宙連邦委員会が、審議・判定。

 登録まで続く、長い歴史が始まった ――――

「羽音ちゃん、お餅焼けたわよ?」

「頂戴します」

「武器セット? バズーカとか、ジャベリンの」

「置き配で頼んでしまって」

「初詣、やめておこうかな」


 かわいくて物静かで一騎当千のうっかりさん。

 静水さんは、人類代表の一人に、俺を選んだ。

 理由は謎に包まれたままだ。


「まぁ、いいや。静水さんと一緒にいられるし」

「ぁ……はい」


 桃色の唇でモゾモゾ、みるみる頬が紅潮した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ