ティータイムと私
メイドが新しく飲み物とお菓子を用意してくれたので、仕方なくティータイムをする事となった。
「ところで、さっき私が贈った花が見当たらないが…まさか、捨てたのか?」
不躾に人の部屋を見渡し、あの無駄に大きくて匂いの強い花が見当たらない事が不満なのか、膨れっ面をする皇太子に私はゆっくりと首を振る。
「安心してください。あの花なら、メイドに頼んでお姉様の部屋に運ばせましたから」
「は!?何故だ!?」
ガチャンと音を立て、持っていたティーカップをソーサーに置き立ち上がる皇太子に、皆が怪訝な表情を浮かべた。
「元々あれはお姉様に贈る花だったじゃないですか。私は部屋に花なんて飾りませんし、殿下が捨てるなって言うから、親切にも気を利かせてあげたんです。お姉様にもちゃんと殿下からの贈り物だと伝えてもらってるのでご安心ください」
「そ、そうか…だが、余計なお世話だ。次からはそんな無駄な事はするな」
「はぁ…」
余計なお世話と言うなら、もう恋愛相談もしてこないでほしい。無駄なのはこの時間だって一緒だ。
「お二人共、早く帰ってくれません?」
「ま、待て!もう一度ミファナの元に行ってくる。もう一度訪ねる理由は何がいいと思う?」
「殿下!もういい加減ミファナの事は諦めてください!彼女に求婚するのは僕です!」
「なんだと!?」
醜く言い争う2人を、オヤツを食べながら鑑賞する私と兄。彼等はまるで道化師だ。何も知らない彼等が不憫でならない。
「茶番だな」
「…そうですね」
兄も姉の秘密を知っているからか、なんともいえない顔をして2人を見ていた。
「お嬢様」
「なぁに?」
物凄く言いにくそうな顔をして、メイドが皇太子達をチラ見した後、私の耳元に顔を寄せ小声で伝えて来た内容に、私の頬は引き攣った。
「追い返し…いえ、お姉様の部屋に案内して。私は今から急用で出掛けるから、あの2人も纏めてお姉様の部屋に放り込んでおいて」
「だ、大丈夫でしょうか?」
「さぁ…私には関係ないから…」
メイドとヒソヒソ話す私を兄は不思議そうに見てくるが、今は構っていられない。
「じゃあ、私急用が出来たんで出掛けます。殿下達はお姉様の部屋にさっさと行っちゃってください。お兄様も、呼んでしまってごめんなさい。それじゃあ、私はこれにて失礼」
無礼を承知で、私は殿下達を残して部屋から飛び出した。面倒事に巻き込まれたくはない。姉が今日家に帰って来てくれていて本当に助かった。
そのまま全てを投げ出し、私は一人街に繰り出してのんびり買い物を楽しんだ。




