ドレスと私
「友達がいるなら、いつもここに来るのやめてくださいよ」
「ミファナの話はミィナにしか出来ないだろ」
「いえ、お兄様にも出来るじゃないですか。寧ろ私よりお兄様の方が適任でしょう。血の繋がった姉弟だし、二十年以上一緒に生活しているんですから」
「ルーディスにミファナの相談をするなんて御免だ。例え血の繋がった弟でも、男にミファナの事を語られたくはないからな」
「面倒くさい男ですね…」
それを言うなら、元好きな人に恋愛相談されてる私はどうなるんだ。そろそろ胃に穴が開きそうなんだけど。
「そんなに聖女について悩むなら、僕の姉に相談したらどうでしょうか?姉は色々詳しいので、きっとお力になれますよ」
「結構だ。行き遅れた女性に相談するような事はない」
「そうですか。残念です」
失礼な事を言う皇太子に対して、ジェルミーは気にする様子もなく微笑みかける。
「そう言えば、来月は皇太子殿下のお誕生日でしたね。ミィニャ嬢は皇太子殿下の誕生日パーティーに参加するの?」
「あ、はい!ジェルミー様も参加されますよね?」
「うん。ミィニャ嬢が参加するなら僕も参加するよ」
「じゃ、じゃあ、一緒に…」
「そうだ!!」
私の決死のお誘いを遮り、何故か兄は皇太子に詰め寄っていた。
「フィリエ殿下!!どうして貴方がミィのドレスを用意するんですか!!それは俺の役目なんですよ!!」
「別に構わないだろ。ミィナには許可を取っているんだし」
「巫山戯ないでください!!ドレスなら姉上の物を用意すればいいでしょう!ミィはもう貴方の婚約者ではないんですから、勝手な事をしないでください!!」
「も、勿論、ミファナのドレスも用意している。そのついでにミィナのドレスも用意しただけだ」
「余計なお世話ですので、そのドレスはどうぞ廃棄してください!」
「なんだと!?あのドレスを作るのに私がどれだけ時間をかけたと思ってるんだ!!お前こそ巫山戯るなよ!?」
取っ組み合いの喧嘩をしだした2人を見つめながら、溜め息を吐く。
「ドレスなんてどうでもいいんで、喧嘩しないでくださいよ」
「どうでもよくない!せっかくミィがドレスを着るんだから、俺とお揃いのデザインのドレスを着てほしいんだ!!」
「私の誕生を祝う日なんだぞ!?私が贈るドレスを着るのが当然だろ!」
兄と皇太子の剣幕に怯み、ジェルミーの腕にしがみつく。ドレスなんて私は欠片も興味がないから、こんなに熱弁されても困る。
「皆さんはドレスを着ないから好き勝手言えるんでしょうが、ドレスを着る身になって考えてください。痛くてキツイコルセットをして、重くて動きにくいドレスを着て、ダンスまで踊るんですよ。コルセットのせいでろくに飲み食いも出来ないし。ドレスの美しさより、早く解放されたい気持ちが大き過ぎて、その日着てたドレスが何色だったかも覚えていられませんよ」
前世でロンT短パンが標準装備だった私からしたら、ドレスを着るのはただの拷問だ。
「だ、大丈夫だ。今回用意したドレスはコルセットは必要ないし、軽い素材で作っている。ミィナもきっと気に入るぞ」
「そうなんですね。お気遣いありがとうございます。お兄様、今回は皇太子殿下が用意してくださったドレスを着ようと思います。その代わり、お兄様の誕生日にはお兄様とお揃いのデザインのドレスを着ますから」
「……わかった」
よし、一件落着だ。気を抜いた瞬間、欠伸が出そうになり慌てて口に力を入れる。最近はこの時間寝ているから眠気が酷い。この1週間、シュノアート帝国の皇女捜しで夜中にこっそり家を抜け出しているが、中々皇女を見つける事が出来ずにいる。城も神殿も隈無く捜しているが、それらしい人物は1人もいない。後はもう貴族家を一つ一つ虱潰しに調べるしかない。
私が皇女を捜す理由は一つ。あの貴族たちに間違いを突き付けてやる為だ。私を皇女だと言ってきた彼等の鼻を圧し折ってやりたいが為に、城にも神殿にも不法侵入を繰り返しているのだ。




