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青天の霹靂と私

「反抗期ならもう既に始まっているじゃないか。ミィナはいつも私たちに反抗的だろ」


 皇太子の言葉に、ノールとアーチェルドが頷く。そんな3人を見て、私は心外過ぎて溜め息が出た。


「それは反抗ではなく愛嬌です。そんな事もわからないなんて、紳士失格なんじゃないですか?私はいつだって親しみを込めて皆さんに接しているんです。だから早く帰ってください」

「そういうところが反抗的だって言ってるんだろ!親しみなんてちっとも感じた事ないぞ!お前のそれは雑なだけだ!」

「はぁ、そうですか。一方的に婚約破棄して来た分際で、よくそこまで言えますね。世間一般的に考えて、私ってかなり寛大な方だと思いますが。皆さんはどうか、今までの行いを振り返ってください。そしてもう一度同じ事を言ってみてください。殴る準備をしておきますから」

「なんだと!?僕らを紳士失格だと言うが、お前も淑女失格じゃないか!!淑女は暴力なんて振るわないだろ!」

「アーチェルド様はお姉様しか見てないから知らないんでしょうが、淑女って扇子を武器に暴力振るってきますから。言葉の暴力も酷いですし、考えを改めてください」

「なんだと!?」


 私も昔は淑女とは大和撫子みたいな人だと思っていた。でも実際は、淑女と呼ばれる貴族令嬢たちは野生のライオンだった。お上品に笑いながら扇子で人の頬を叩いてくるし、大勢で言葉の暴力を浴びせてくる。幼少期からそんな淑女と接したせいで、私も随分と強かに育った。まぁ全部私の元婚約者たちのせいだから、私が皆を雑に扱うのは仕方ないと思う。


「…もしかして、彼女たちはまだ君に酷い事をしてるの?」

「彼女たち?」


 誰の事かわからず首を傾げると、ノールは暫く考え込んだ後口を開いた。


「うーん…名前を挙げると切りがないけど、レベリー伯爵令嬢とアンベス侯爵令嬢は僕と君が婚約していた時、君に酷い事沢山してたでしょ」

「そうでしたっけ…?名前は覚えていないので誰の事かはわかりませんが…でも私、そんな話した事ありましたか?」

「ううん、君は何も言ってくれなかったよ。ただ小耳に挟んだだけ」

「そうですか」


 ノールと婚約していた時、嫌がらせをしてくる令嬢は沢山いた。ノールだけじゃなく、私がアンガー家の養女になってから、兄目当てで近寄って来た令嬢たちや、他の婚約者狙いの令嬢たちに様々な嫌がらせを受けて来た。そのせいで、姉や母以外の女性を信用出来なくなった時期もあった。まぁ今ではしっかりやり返しているけど。百倍返しくらいで。


「今は別に…影でグチグチ言われる程度で、大した事はされていませんよ。皆さんが我が家に来なくなれば、その陰口も無くなるんですけどね」

「僕から令嬢たちに注意しておくよ。ごめんね」

「家に来ないでくれたら、そんな手間かけなくていいんですよ」

「大した手間じゃないから大丈夫」

「遠回し過ぎました?もう家に来ないでくださいって言っているんですけど」

「ジェルミー、君も周りの令嬢には注意するようにね」

「…はい、わかりました」


 私の言葉を無視するノールを睨む。私はいったい、いつまで彼等の恋愛相談に乗らなきゃいけないんだ。いや、ポジィティブに考えたら友達が家に遊びに来ているだけで、恋愛相談はそのついでという考えも出来る。………そうだ。この世界では女同士の友情は存在しない。逆に男女の友情は成立する気がする。これは青天の霹靂だ。今までそんな事考えた事もなかった。


「別に、注意しなくてもいいですよ。…私たち、友達じゃないですか」

「は?」


 なんか皆鳩が豆鉄砲食ったような顔をしているが、私は構わず大きく頷いた。


「ただの元婚約者なら家に来られるのはウザったいだけですが、友達なら遊びに来てくれたって考えられます。お互い友達いないんですし、男女の友情を育んでいきましょう」


 にっこり微笑み1人納得していると、アーチェルドが思いっ切り首を横に振った。


「い、嫌だ!!お前みたいな友達はいらない!そもそも僕にはちゃんと友達いるから!いないのはお前だけだろ!!」

「そうだ、失礼な事を言うな。私も友人はそれなりにいるぞ」

「僕もいるよ。寧ろどうして僕たちに友達がいないと思ったの?」


 予想外の言葉に、今度は私が鳩が豆鉄砲食ったような顔をする。嘘でしょ?皆に友達がいるなんて聞いた事ない。いや、兄とは友人関係だったっけ。つまり、今も昔もボッチは私だけって事?せっかくポジィティブになったのに、一気にネガティブになりそうだ。

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